10、救出
城内へ潜入する、シュウ達3人
クペランテ王を救うことは出来るのか?
俺は、4mの塀の上にジャンプし、城内に降りた。
門の小木戸には、見張りがいたが、後ろから近づき眠ってもらった。
殺していないよ、気絶させただけだ。
いずれは、人を殺さないといけない場面が来そうだが、覚悟がまだ足りてないな。
今は、まだ、その時じゃないしな。
木戸を開けて、2人を招き入れる、ルトとセレティスは、森で待機だ。
どうもこの街は、妖精の気配が全くしないらしい。
人族の街でも、妖精は居るらしいが、この街には居ないとのこと。
今日は星もでていないし、街の中は、真っ暗だ。
動き回るのには、好都合だな。
誰一人として外に居るものはいないし、店とかもやってない。
普通、飲み屋とかやってるだろ、こっちはちがうのかな。
姫さんに聞いたけど、地方の村でも、夜は飲み屋とかやってるらしいから、
この状況が異常かもな。
まあ、兵隊が戦いに出て行ったとしたら、いわゆる戦時状態かもしれないから、
ありかなとは思うけど。
フォルティによると、王様は多分王宮の中に幽閉されているらしい、
それ以外の兵は、王宮の横にある牢獄に収監されているのではということだ。
俺と姫さんは、王宮の中へ、フォルティは、牢獄へ、ここで、二手に分かれることにした。王宮へどうやって入るかって?
姫さん、担いで、外壁をよじ登っていくよ。
出っ張りがあるから、何とかなりそうだ、
フォルティは、さすがに無理、男担ぐ趣味ないしね。
王宮は、4階建てになっていた。
さすがに、正面の門には、灯りが灯してあり、衛兵が2人たっている。
3階のバルコニー部分から侵入するとするか。
「姫さん、気が進まないと思うけど、俺が背負って上るよ、いいかな」
と尋ねると、
姫さんは、申し訳なさそうな顔で、
「シュウさん、やっぱり私、一緒に上りましょうか、それに重いし、、」
最後の方は良く聞こえなかったけど、
「大丈夫だよ、その方が早く行けるし、見つかるとまずい、ほら、つかまって」
俺は、姫さんを背負うと、身軽に、壁を登っていった。
まだ、大丈夫だな。身体は思うように動くし、姫さん背負っても、大丈夫。
でも、姫さん、軽いな。
あっという間に、バルチャーム姫を背負ったシュウは、3階のバルコニーに到着した。
姫さんを降ろして、俺が先に立ち、窓から中を覗いてみる。
「中は、ソファーと机、応接室みたいな感じだな」
「そうですね、多分、来客用の部屋かもしれません」
「まあ、俺たちは招かれない客だけどな」
そう言いながら、俺は、窓を開けようとしたが、鍵がかかっていた。
「ん、どうするかな。音を立てるとマズイ」
そうだ、
俺は、人差し指で、鍵の周りのガラスを、7か所貫いた。
心の中では、あたたたたた・・と言いながら。
おっさん、赤○も好きだったけど、北○の拳も好きだった。
穴のあいたところに指を入れて、ガラスを引っ張ると、ちょうど良い穴があいた。
窓のカギを開けて、俺と姫は、室内に入った。
外の廊下の様子を伺っていると、
後ろで、姫さんが、急にうずくまり、苦悶の表情を浮かべた。
「姫さん、どうした」
「シュウさん、ここは妖精の悲しみが満ち溢れています」
「それとエルフの悲しみも、あと、クペランテ王の気配を感じます」
「妖精の悲しみか、俺には分からないが、ルトとセレティス、連れてこなかったのは正解だったかな」
「姫さん、大丈夫か いつまでもここに居るわけにはいかない」
「はい、大丈夫です。落ち着きました」
そうは言っても、まだ、顔は青いままなんだよな。
とはいえ、ここに、ずっといるわけにはいかないからな。
「姫さん、クペランテ王はどこに居るか分かるかい」
「詳しくは分かりませんが、多分、地下の方に気配は感じます」
地下室とかあるのかな? とにかく行ってみるか。
俺は、その部屋を出ると、姫さんを連れて、1階まで降りた。
姫さんが気配を辿っていくと、鉄の扉で、俺でも分かるな、なんか、禍々しい雰囲気がしている。
姫さん、扉の前で、青い顔で立ったままだ。
「姫さん、俺が入るから、ここで待ってなよ」
と言うと、
意を決したように、
「いえ、私も付いていきます。そうしないといけないんです」
「わかった、けど、無理すんなよ」
鉄扉、何故か鍵は掛かっていなかった。
中に入ると、燭台に灯は付けられており、前室があり、その先に、木の扉があった。
鍵は、やはり掛かっていない。
扉を開けると、そこは、地面が石のタイルが張られており、壁も石が組み込まれている、
20畳位の石造りの部屋だった、その先には、また、扉があり、奥に続いているようだ。
丁度、その部屋の真ん中辺りに、その人は居た。
両手を、左右から鎖で継がれ、服もほとんど破れ、体中に傷を負っていた。
傷は、切り傷だったり、何か先の尖ったもので叩いた後だったり、やけどの跡も
あった。つまり、拷問されたのだ。
バルチャームは、その人を見ると、一言、
「父上」
と言い、すぐに駆け寄った。
「え、クペランテ王?」
シュウも直ぐに駆け寄り、鎖を外し、王を降ろした。
幸い、酷い怪我を負ってはいたが、意識がないだけで、命に別状は無いように見えた。
「姫さん、回復魔法か何か使えないか」
俺が尋ねると、
「私は使えますが、ここでは、妖精が全く居ないので、使えないのです」
と、沈んだ声で返事をした。
持っていた気付け薬を嗅がせると、クペランテ王は、目を覚ました。
「ううぅ お前はバル、何故ここに」
「バルよ、ここに居てはいけない、直ぐに逃げるのだ、ここはエルフにとってとても危ない場所だ」
咳き込みながらクペランテ王は喋った
「父上、そんなに喋ってはいけません、お身体に触ります」
「その横のものは、人族か?」
「はい、シュウさんっていいます。この人が居なければ、ここまで来れませんでした」
バルは、手短に、今までの事を、父・クペランテに説明した。
クペランテ王は、シュウの手を握りながら、
「シュウ殿、無理を承知でお願いします。この娘は、弟のフラタリスに会わなければなりません、どうか、お願いしたい、それが貴方の願いを叶えることとなるでしょう」
「それは、どういうことか知りたいが、今は、時間がない、なんとか貴方を連れてここを出ようぜ」
俺がそう言うと、
クペランテ王は、首を振ると、
「私の命の灯りは、もう永くない」
「え、何を言ってるのお父さん、大丈夫よ、外の森に行けば、ルトが居るし」
クペランテ王は、娘の言葉を、手で遮りながら、
「娘よ、お前には教えていなかったが、私のスキル(…)は混合なのだ」
「今なら間に合う、混合すれば全ての事が分かるであろう、また、私は、お前の中で、生きていけるのだ、すまんな、親としては、何もしてやれなかった」
「更に、エルフ国のすべてをお前に背負わせてしまうことになる」
「お父さん、、、」
バルは涙を流しながら、父・クペランテに抱き着いた。
クペランテも涙を流していた。
俺は、何とも出来ない自分が悔しかった。
クペランテ王とバルチャームは、お互いの右手を合わせた。
眩い光が発生した後、そこには、バルチャーム姫だけが居た。
「姫さん・・」
俺は、なんと声を掛けて良いか分からなかった。
姫は、
「シュウさん、父は私の中にいます。心配しないで」
すっと立ち上がると、
「ここに永く居てはだめです、直ぐにでましょう」
「分かった、それじゃ、フォルティと合流しよう、他のエルフも救わないと」
俺が言うと、
姫は、悲しそうな顔で、
「他のエルフは、もう誰も居ません」
「急ぎましょう」
俺と、姫、いや、もう王女になるのかな、バルチャームの2人は、
上手く、外へ逃れたと思っていた。
外に出ると、フォルティが待っていた、
「姫、こちらは誰も居ませんでした。クペランテ王は?」
「詳しいことは、後で話します。」
「今は、エルフ国へ戻るのが重要、急ぎます」
俺たち3人は、城外へ出ようとした。
その時、青い服を纏った兵士たち、数十人が、周りを取り囲んだ。
その先頭に立つ男、中肉中背・メデオ、第2部隊の隊長である。
「せっかくエルフ国から来られたのだ、ゆっくり(…)していけば、如何かな」
メディオのその一言で、
周りの兵士たちは、全員、剣を抜いた。
ち、姫だけなら、抱えて、飛べるが、フォルティは無理だ。
俺がそう考えていると、
フォルティは、一言、
「シュウ殿ならいけるでしょう、後の事は頼みます」
そういうと、フォルティは2本の剣を抜いた。
え、お前、恰好良すぎないかいと思っていたが、
実際、この状況はマズイ。
姫が、俺に、
「後はフォルティに任せます、シュウさんお願いします」
唇をかみ締めながら、俺に言った。
俺は、フォルティに、
「死ぬなよ」と声を掛けると、姫を抱えて、城外へジャンプした。
「マルーン殿、どうなさいますか?」
メディオがそう言うと、
暗闇の中から、宰相マルーンが現れ、
「外の事は頬っておけ、リーン(…)が居る、手筈通りだよ」
「それより、人間と妖精の混合種 フォルティの方が面白い、どのようになるのか、楽しみではある」
「何故、それを知っている?」
フォルティは、顔に苦悶の表情を浮かべて尋ねた。
マルーンは、
「さて、それは、この者に勝てば教えて存じようかの」
そう言い、手招きすると、その暗闇から出てきたのは、
「貴方は、アミシャス副国王?」
フォルティは、乾いた声でつぶやいた。
先週より、病床に臥せっていました。
年末、年始の無理な勤務が堪えたようです。
少しづつですが、更新はして行きたいと思います。
読んで下さり、有難うございました。