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灰被りの道化師は踊る  作者: 江戸前餡子
第ニ章・黒灰の魔女編
22/37

第21詠唱 終わりの始まり

「ここは......夢の中?気を失っても来れるのか」


 すると上から少女は笑顔で「おきた?」と優しく言う


「ここはなんか落ち着くね」


 起き上がると少女はリリィの隣にちょこんと座る


「で?じぶんのことについてなにかわかった?」

「少しはね」

「ふーん」

「でも、記憶を取り戻すのが怖くなってきた」 

「なんで?」

「私の記憶を取り戻す目的はママと一緒に住む事だったから、もし奴らの言う通り本当にママに道具として使われてるだけだったらと思うと、ね」


 「ってあなたに言っても分からないか」と言うと不思議と目頭が熱くなりツーと涙が一筋頬を流れる。


「わたしだったら、そんなことしんじないけどね」

「そうなんだ」

「そうだよ、だってウソなんていくらでもいえるもん」

「証拠の写真を見せられても?」

「しゃしんはなにもかたらない、わたしはそれじゃあしんじないかな」


「ちょっとまってね」と言うと立ち上がり本棚から一冊のフォトファイルを取り出すリリィの前に座るとファイルを開いて女性が写っている一枚の写真を見せる。


「このひと、わたしのおかあさんなんだ」 

「うそでしょ」 

「せいかい、なんでわかったの?」

「今の話の流れからして何となくだけどウソかなって」

「そういうこと、めにうつったものやきいたことはすべてほんとうとはかぎらない」


 「貴方は強いね」と涙を袖でぬぐ


「で、これからどうするの?」

「とりあえずヴァッサ・ギャバンに向かう」

「ならもってるほんをよむことだね」

「そういえば貴方黒灰こくはいの魔女だよね、ならあの本の鍵を解く魔法を知ってるんじゃないの?」

「ざんねんながらしらないなぁ、あのほんのかぎはじょういのまじょしかしらないからね」

「あの人もそんな事言ってたっけ」

「あのほんがおねえちゃんをみちびいてくれるとおもうよ」

「そうなんだ」


 合図の様に壁紙をおおうように埋めつくす壁掛け写真が黒いタイルに変わり地面に落ちていくと「時間か」とリリィは言う。


「とりあえずヴァッサ・ギャバンに行って金の指輪を持ってる黒灰の魔女を探してみる」

「いってらっしゃい、わたしはここでまってるよ」


 そう言うと床から無数の人形の腕が伸びてきてリリィの体に絡みつくと、底なし沼の様になった床の中へ引きずり込まれてやがて消える。


「止まっていた歯車が再び回り始めた、しかし私と会うのも時間の問題かなぁ」


♢ ◆ ♢ ◆ ♢ ◆


「ルルー?」

「あ、起きた?」


 ルルーが牢獄の壁に貼り付けられている自分の手枷と足枷を外しているのに気が付く。


「よし!外れた」

「ルルーの方も外れたよ」


 ルルーはリリィを隠す様に着ているローブの中に入れ抱っこする。


「この声はドミニカ?」

「そうだよ、リリィちゃんも元気そうで良かった」

「そういえば私の右目ってどうなってるの?視界が半分暗くて見えない」

「今リリィちゃんの目は角膜から内側が再生されずに赤い瞳が白く濁ってる状態になってるんだよ、だから一応眼帯を着けといた」

「なるほどう......」

「まぁ無事リリィを確保できたし外にでよう」


 ドミニカは頷いてスタスタと速足で歩き始める。


「誰もいなの?ルルーとドミニカの魔力以外何も感じない」

「きっと皆害虫駆除の任務で忙しいんだろ、しかし良くわかるな」


 ドミニカの言う通り今いる建物内は誰も居なくて、外に出ると地上には誰もいないが上を見るとせわしなくビュンビュンと機動隊が行き来していた。


「ばれないように基地の端を通って行こう」


 ルルーは頷くと先導せんどうするドミニカの後ろをついて行った。難なく駐屯地から出た三人はドミニカとルルーの荷物が置いてある場所に着く。


「リリィ、立てる?」

「痛みは感じないし大丈夫だと思う」


 ルルーは「なら良かった」と言い抱いていたリリィを地面に卸す


「とりあえず服を着よう」


 ドミニカは、所々肌が赤くただれて顔を出している灰色の肌を見てリリィに捕獲される前に来ていた服やコートを渡す。


「ケガしてる所は痛くないか?」

「大丈夫、でもなんで二人は私なんかを助けに来たの?」

「コレはアイラさんの任務でねリリィに渡すものを渡して地上に逃がすのが目的なんだ」

「なるほどう、ある場所に行きたいんだけど一緒に来てもらう事はできないの?」

(今はまともに戦えない、回復するまで同行してもらった方がもしもの時安全だろう)


 リリィはそう思いお願いをしたがドミニカは首を横に振る。


「ゴメンね私もそうしたいけどできないんだ、今魔導機動隊内の関係が複雑になってきてね、ルルーは使い魔だからついて行けるけど私は直ぐに戻らなきゃいけないんだ」


 「そうなんだ」と少し残念そうな顔をする。


「まぁ地上までは一緒だから安心しな」


 リリィに私物を全て渡す


「じゃあ行くか、地上に行くエレベーターまであともう少しだ」


 三人がお互いの荷物を持ち小道から大通りに出たその時だった。健二が物陰から姿を現す。


「右目痛そうだな」


 目と鼻の先に確かに居る健二の姿に、リリィは思わず目を見開き「なんでパパがこんな所に」と驚いたように言う。


「自分の子供が居なくなったんだ、助けに来るのが親ってもんでしょ?」


 リリィが近づこうとした時である、何か違和感を感じたルルーは横に手を伸ばしリリィを止めた。


「嫌な予感がする」

「え?そんなはず......だって」


 リリィが嘘でしょと言わんばかりに健二の方を見ると、健二は口角をあげて怪しく笑う。


「何を言うんだか僕は危ない事は嫌いでね、何にもしないよ」


 「ただ、その子を元の場所に返すだけだ」と言い指を鳴らすと足元から上へ姿が変わって行く。


「マ......マ」


 長く綺麗な白い髪に虹色の瞳、健二の家の地下室にあった家族写真で見た事のある姿がそこにあった。


「ママ?私はお前のママなんかじゃない」

「ママじゃないって、本当に私はママにとってただの道具だったの?」

「道具?使えない物は道具とは言わない、ガラクタと言うんだよ」

「ウソだ......嘘だ嘘だ嘘だ!ママはそんなこと言わない」


 ルイズの言っていた事は嘘だと信じていたが、真実だと分かった瞬間リリィは頭が真っ白になり目の前の現実に混乱する。


「まだ驚くのは早い」


 天高く腕をあげると、アシュリーの真上から金色に光る六芒星ろくぼうせいの魔法陣が現れた。


「「ウソでしょ......」」


 丸い魔法陣が扉の様に開いて出てきた金の鎧ドレスをまとい羽の生えたリリィの面影を感じる少し大人びた白髪の少女に、ルルーとドミニカは固唾をのむ。


リリィはその人物の顔を見た瞬間ある一部の記憶が一瞬フラッシュバックした。


「まさかお前」

「私はフォルコメンワルキューレ、リリィ・バトラーです」


 リリィの方を見るとニコリと笑い「以後お見知りおきを」と一礼する。


♢ ◆ ♢ ◆ ♢ ◆


― 臆病の森付近


 結衣を連れて来るように言われた第二地区魔導機動隊の三個小隊は、臆病の森付近

の荒野上空を飛行していた。


「リーダー!緊急救助用携帯機器からモールス信号をキャッチしました!オーバー」


 長方形の箱の様な通信機械を背負った女性はトランシーバーで伝える。


「こちらリーダー、緊急救助用携帯機器は数年前に使われなくなった携帯機器だ、送りを主と内容を教えろ、オーバー」


 リーダーの言う通りで数年前から携帯用機器はトランシーバーだけになったため撤去されたのだ、そんな古い機械と通信が繋がったのはコスト削減の為同じ素材が使われていたからだろう。


「送り主は第四地区のアリス・アダミッチさんです!内容は、バグっているせいか全く読めませんオーバー」

「怪しいな、そもそもアリス・アダミッチは第四地区に居るぞ?通信が送られてる座標を頼むオーバー」


 女性は通信機器の横に着いてる小型レーダーを手に取るとアンテナを伸ばして探す


「キャッチしました!座標はXに120、Yに10000、Zに50です、オーバー」

「近いな、山賊ってわけでもなさそうだ、良し!もしかしたらアシュリーと関係してるかもしれない、01小隊はそこに迎え!私たちと2、3小隊は結衣を追う、オーバー」

「了解!気を付けてくださいね、アウト」


 01小隊は地面へ直地するとレーダーを持った女性が先導し歩く


「ひどい臭い、しかも随分と古びた小屋だな人が住めるとは思えん」

「周りに動物の死骸が......本当にこんな所に居るんですかね」


 草も木もなく、屋根や壁が所々はがれた小屋の近くには茶色く濁った湖があり、足元を見ると地面が見えなくなるほどの動物の死骸や骨が転がっていた。


「レーダーのキミは後ろに下がりなドアは私が開く、皆はサインを出すまで家の影で隠れてろ」


 不気味なほどやけに周りが静かで隠れている皆は額から汗を流すが、小隊リーダーは魔武の戦斧いくさおのを出すと深呼吸する。


「大丈夫だ私、わたしならできる......」


 バックバックと飛び出しそうなほど心拍する心臓を落ち着かせ、指でカウントダウンをしてGOサインをすると取っ手のない板切れのドアを勢いよく蹴り破り中に入る


「武器を捨てて床に伏せろ!」


 家の中は薄暗く大量の濁った水が入った瓶が床にゴロゴロ転がっていて、目を凝らすと部屋の端の方に両足を無くした女性が倒れていた。


 リーダーは、女性の着ているボロボロのローブに付いていた階級のワッペンと色を確認すると持っている魔武を消す。


「もしかして貴方がモールス信号を送ったアリス・アダミッチさんですか?」

「やっと......やっと助けが来た」


 アリスはくぼんだ目から涙を滝の様に流して握っていた緊急救助用携帯機器を放す。


 かなり長い間救助を待っていたのか、着ている服はボロボロで腕は枝の様に細くなり顔もゲッソリと痩せこけていて、声を出すのもやっとの様で蚊のように小さくカスカスだった


「いったいいつ頃からココに?」

「10年前からです」

「なるほどう、とりあえず第二地区駐屯地に行きましょう事情はその後で」

「ダメ、です......直ぐに第四地区に行かなきゃ、アシュリーを止めなきゃ」

「アシュリーを?」

「私に、変装して......」


 力尽きたのかガクッとそこで倒れる。脈はあったから死んではなくリーダーは安堵あんどの息を着く。


「至急ルイズさんに連絡してアシュリーの居場所を教えろ!会議中だから丁度アシュリーと話してるだろう」

「今の会話を録音しときました!私が録音データと共に伝えときます!」


 その光景を荒野のはるか遠くから隠れて見ていた人物がいた。土色の迷彩布で全身を隠す人物は、ライフルのスコープを覗きながら銃口をアリスに向けて、片手でトランシーバー握りどこかに繋げる


「アリス・アダミッチが見つかられました、殺しますか?オーバー」

「いやもう少しで第2ハザードの準備ができるから殺さなくていいわ、オーバー」

「了解、では戻ります、オーバー」

「お疲れ様、雨雲が出る前にね早く帰って来なさいよ」



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