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ネクストステップ  作者: ひまわり
第一章
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第五話 止まったまま

 きちんと自分の意見を持ち、簡単には人に流されないような人間になりたかった。小さい頃から夕実の方がしっかりしていて、僕が兄なのに支えられてきたことが何よりも悔しかった。

 だからこそ、僕は勉強をして自分の考えを持とうと決めて頑張ってきた。おかげで、それなりの大学には行けるようになったが、未だに性格は改善されず、夕実からも嫌われてしまった。

 夕実は優柔不断で決断力のない人が大嫌いなのは昔から知っていた。だから今まで僕のことを我慢して気にかけてくれていたことには感謝してもしきれない。

「どうしたらいいんだろう……」

 自分を変えないといけないと思っているのだが、具体的に何をどうすればいいか全く思い浮かばない。何かしないといけないと思っているのに、何をしていいのか全然分からない。

 考えてるうちに段々腹が立ってきた。今すぐ暴れ回りたい気分なってきたが、なんとか理性で抑えつけ、クールダウンのために考えることを一旦やめた。

 机にイスにベッドに天井……といった感じで部屋の中をくるっと一周見回すと、物体一つ一つと、この空間がいつもより一回りもふた回りも大きく感じられた。まるで自分だけが小さくなってしまい、何か得体の知れないものに飲み込まれていっていきそうな感覚に陥った。自分の部屋なのに自分の部屋じゃない感じがする。

 このままじっとしていると気が狂って自我が崩壊してしまう気がしたので、部屋の中からドアを開けて外に出て、階段を下りて一階にあるリビングに行った。

 部屋の電気を点けて、冷蔵庫の中から冷水筒を取り出し、中に入っているお茶をコップに注ぎ、そのコップに入っているお茶を一気飲みした後、立ったまま考え事をした。

 しばらく経った後、冷蔵庫に冷水筒をなおし、そのまま自分の部屋に戻ってベッドに寝転がり、掛け布団の中に体を全部入れると、いつの間にか寝ていた。

 翌日、学校に行く途中で樹と出会った。何気ない話をしただけだったが、朝の憂鬱な気分が紛れた。

「じゃあな」

 樹と手を振って別れて、自分の講義を受けに行った。授業はいつもと変わらないのに、時々、頭がぼーっとすることがあった。

 寝不足かと思い、昼休みに昼ごはんをコンビニで買ってから、次の教室に移動し、椅子に座って食事を済ませた後、少し昼寝をして、午後からの授業に備えていた。

「先生、あの……」

 先生という言葉が聞こえ、伏せていた顔を上げて目を覚ますと、もう教室の中に人が集まっていた。

 午前の時と違って、頭が冴えていて、講義の内容がすんなりと入ってきて、集中することができた。

「今日の講義はここまでとします」

 学校の講義が終わったので、家に帰ろうとしているところに、誰かが後ろから話しかけてきた。

「ねぇ、優希ここ分かんないから教えて〜」

 振り向くと美咲が友達を連れて、僕のところに来ていた。友達と一緒なんだったら、その人に教えてもらえばいいのにと思いつつ、どこが解らないか訊いた。

「どこが分かんないの?」

「ここ」

 美咲が指を指したところを見てみると、僕の受けている講義の内容にないところだった。とりあえず参考書を見せてもらい、ノートに書いてあるものを総合して考えた後、自分が解る範疇で答えた。

「これはこういう事を言ってるんじゃないかな」

「ほほぅ」

 ノートを美咲と一緒に見ながら教えると、理解しているかは分からないが、納得しながら聞いてるような反応を見せていた。その時、友達がどんな風に思っているのか気になり、右を向いてみたら、美咲から少し距離が離れたところに居て、じっと待っていた。

「友達待たせちゃってるけど、いいの?」

 素直に待ってくれているあたり、思いやりのある優しい人なんだなと思った。そんな人をいつまでも待たせるのは申し訳なく感じ、美咲に言った。

 すると、美咲がその友達を僕のところに呼んだ。

桜花(おうか)、こっちに来なさいよ」

 その呼びかけに少し戸惑いながらも、小走りしながら僕と美咲のところに来た。

「どうも……」

 桜花さんは消え入りそうな声で、恥ずかしそうにお辞儀をしながら僕に挨拶をしてくれていた。見た感じ僕と同じように引っ込み思案で臆病な感じのする人だったので、人のことを言えるような立場ではないのだが、少し心配になった。

「どうも」

 僕も似たような、ぎこちない反応で返してしまい、会話が全く続かず、嫌な沈黙の時間がしばらくできてしまった。

「どっちも堅い」

 痺れを切らしたのか、美咲が僕と桜花さんの背中を平手でおもいっきり叩き、気まずい雰囲気がガラッと変わった。空気が変わったのはいいのだが、もう少し手加減というものを覚えてほしい。おそらく服の上からは分からないが、背中には手の形がくっきりと赤く残っているんじゃないかと思えるくらいヒリヒリして痛かった。

「いくらなんでも緊張しすぎだよ」

 美咲が僕と桜花さんの顔を交互に見た後に、わざとやっているような大きなため息を吐いた。呆れられているんだろうが、これでも自分なりに頑張ったほうではある。

「今日は三人で帰るから」

 なんでそうなったのか分からないが、美咲なりに考えがあるんだろう。でも、僕は桜花さんと何を話したらいいか分からないから、雰囲気の悪いまま帰ることになるのでは、という不安でいっぱいだった。

 だが、その予想に反して帰宅時間は楽しいひと時になった。美咲が率先して僕たち二人に話しかけてくれたり、桜花さんや僕の昔話をしてくれたおかげで気まずい雰囲気になることなく、笑い合いながら帰ることができた。でも、僕が男子だと言って、桜花さんが驚いたような表情をしていたのはショックだった。

「じゃあ、私たちはこっちだから」

 僕は桜花さんと美咲と別れ、今日の三人で楽しくしゃべったことを思い出しながら、家に帰った。

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