第二話 夕実の日常
きっかけは何だか覚えていないが、私は兄のことが嫌いだ。雑談はおろか会話すらしたくない。なぜ嫌いなのか理由を挙げればキリがないが、男として頼りがいがないというのが一番だ。
私は優柔不断な人が男女問わず好きではなく、答えを曖昧にしたりするような人は、あまり関わりたくない。
よく優柔不断な人は優しく、周りの事を考えすぎるから決められない、もしくは決めるのが遅くなると言う人が居るが、そんなものは甘えでしかない。自分の意思を定めることが苦手なのを、良いように解釈してしまうのはいかがなものかと思う。
「おーい」
何にしても開き直るのは良くないだろう。自分の悪い所と良い所を分析して改善していこうと考えることが成長していく上で重要だろう。私自身も今の自分を客観視できているかと問われれば、疑問に思うところもあるが、少なくとも自分に向き合おうとはしていると私自身は思っている。
「また始まっちゃったよ」
「こうなるとアレしかないね」
向上心のない奴はバカだと聞いたことがあるが、まさにその通りだとおも……
「夕実ちゃんは、お兄ちゃんのことが……」
「好きじゃないからね」
思わず大きな声で反応してしまったが、休み時間ということもあって周りが騒がしかったので、夏海と和希にしか聞こえていなかったようだ。
「本当は兄さんのことが嫌いだって自分に言い聞かせてるんじゃないの」
「それは絶対にない」
あんなナヨっとしてる奴に好きになる要素なんか一つも無いが、強いて長所を挙げるとすれば、家事と勉強が少しできるところだろう。
兄を変えることができるなら、今すぐ金井さんにしたい。きちんと周りを見て臨機応変に行動できるのいうのは、私にとって羨ましいし、尊敬できるところだ。
「家族なんだから仲良くしたらいいのに」
そんなことを言われたって仲良くしたいとも思わないし、無理に会話したってストレスが溜まっていくだけなので、良いことがない。
それに原因は私にあるわけじゃないから、こっちから歩み寄るのは絶対に嫌だ。
「あんな優しい人いないよ」
「優しいように見えるだけ」
見た目も中身も女っぽい兄がいたからこそ、私がしっかりしないといけないと思えたので、そういう自覚を持たせてくれたのは良かったと思っている。だから八方美人で優柔不断な意思の弱い誰かのようにはならないように気をつけつつ、相手の話にも耳を傾けることが出来るようになるのが目標の人物像である。
考え事をしてる間に休み時間が終わり、授業が始まったが、先生の話は頭の中を通り抜けていったので、前半部分の内容は全く覚えていない。
放課後、夏海は部活に行き、私は和希に勉強を教えてもらいながら家に帰っていた。
家に着くと、つかの間の休憩でリビングのテレビをつけてソファに座ると、兄が数十分経った後に帰ってきた。部屋に入ってきて何かをすると、すぐに二階に上がっていったようだった。
何時間か経って、ソファで寝ていたことに気づき、その後、数分経ったときにお母さんが帰ってきたので、雑談をしていた。
内容は最近の学校でのこととか今日の晩御飯の話で、楽しく会話していたのだが、お母さんが兄を呼んだので、静かにリビングを出て自分の部屋に戻った。
今日やった授業を復習していると、夕食の時間になったので、リビングに降りて家族と一緒に食べたので、すごく賑やかで楽しいひと時を過ごすことができた。
お風呂に入った後、自分の部屋に戻って考え事をしていた。話しかけられてたのに聞こえなくて無視しちゃったこととか、いきなり大きな声を出したから驚ろかしてしまったのではないかとか、考えても仕方ないことを寝る前に考えてしまう。直したいところの一つではあるのだが、なかなか直らない。それをどうすれば直せるだろうと考えようとすればするほど、余計なことが思い浮かんでくる。
結局、一時間くらい考え込んでしまい、寝るのが遅くなってしまった。




