B
高校生になった。
僕と彼女は同じ学校へ進学した。地元では有名な進学校だった。
彼女は獣医を目指しているだけあって、成績もよかった。
彼女のペットの犬が死んだ一件以来、僕たちの中は良くなった。
一緒に図書館で勉強することもあり、彼女につられて僕の成績も良くなった。
「――くんは、将来何になりたいの? 」
休日、図書館で一緒に勉強していると、彼女は僕に問いかけた。
「将来のことはまだよくわからないや。まぁ、今は勉強して、何にでもなれるようにしようと思ってるよ」
「ふーん……。やりたいこと、見つかると良いね。」
「うん」
「――くんなら、きっとなんでもできるよ! 最近は私より成績いいし……」
「たまたまさ」
そうは言ったものの、それは当たり前のことだった。
彼女は獣医になるため、生物部で様々な生き物の飼育をしている。
一方俺は帰宅部で、ゲームやオタク趣味はしているものの、自由に使える時間が多く、その分勉強もできる。
「ねぇ、たまには図書館以外の所も行かない? 息抜きに」
突然彼女はそう言った。
僕たちはキリのいいところで勉強を切り上げ、街へ向かった。
それから、ペットショップで動物を見たり、前のドーナツ屋でおしゃべりをした。
もう日も暮れて、別れ際、
「今日は楽しかったよ。また遊ぼうね。」
「もちろん。」
「バイバイ。」
笑顔で手を振る彼女が、愛おしくて、でも、なにも言えなかった。
また遊ぶ日は、来なかった。
彼女は帰り道で、カローラに轢かれ、強く頭部に衝撃を受けた。
その影響で、脳を損傷し、意識はなく、生命維持の装置で辛うじて心臓を動かしているという状態だった。
もって一週間だった。
僕は徹夜で、脳死から蘇生させる方法を調べた。
学校にも行かなかったし、ご飯も食べなかった。
でも、そんな方法が見つかるわけもない。
単なる高校生が必死になって数日調べたところで、医者の知識には及ばない。
その医者に出来ないことは、自分にだってできない。
僕は3日程で、医学の方法で彼女を治すことを諦め、どこにいるかもわからない神に祈った。悪魔にも祈った。
神社からお寺から教会から、近場で行ける所はすべて行った。
彼女と、もう一度遊びたかった。
そして、言えなかったことを、言いたかった。
彼女が意識をなくしてから6日目、僕は霊力があるという滝へ行った。
街からは離れていて、辺りは森に囲まれていた。
霊力だか魔力だか、知らないが、とにかく必死だった。
なんでもいいから彼女を治してほしかった。
滝壺に向かって祈り続けた。
朝に行って日が暮れるまで祈って、家に帰った。
その夜だった。
女神が現れたのは。