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第1話

水の音がする。

雨だろうか。

いや、直接体に水が当たっている感覚はない。

水の音は大きく、どこか高いところから落ちているような……。


俺は目を開き、体を起こす。

目の前には、大きな滝が流れ落ちていた。

足元は大小さまざまな石が転がっている。河原のようだ。

辺りを見渡すとそこは、都会の公園ではなく、木々が生い茂る森林のようだった。

全く見たことのない植物も生えている。

ここは遠くの国にワープしたのか、天国なのか。


困惑していると、滝壺から影が浮き上がる。

「目が覚めたのですね……」

真っ白なドレスを身にまとい、髪飾りをした、女性だった。

髪は綺麗な金髪で、肌は白く、端正な顔立ちで、どことなく輝いているように見える。

その声はどこかで聞いたことのあるような、懐かしい声だった。

「あなたは……? 」

「私は運命の女神。冬の公園で雨に打たれて、凍死寸前のあなたをこの世界に呼び出した……」

「なんのために……」

「あなたには、この世界に住む赤いドラゴンを倒して頂きたいのです。」

なにを言っているのだろう。

俺はただのホームレスだ。記憶はないが、戦ったこともないと思う。

「もっとふさわしい人間がいるだろ。俺はなんにもないホームレスだぞ。そのまま殺せばよかったんだ」

「あなたの生前の行いは、とても素晴らしいものでした。このまま殺すには惜しい。」

「生前? 俺はしがないホームレスだぞ? 」

「ふふっ。最近は、ね」

女神は子供っぽく微笑んだ。

最近は……?

俺はホームレス生活で記憶を失ったんじゃなかったのか?

「気になるようですね。ドラゴンを倒したら、すべてをお教えしましょう……」

「……わかった、乗ろう。しかし、戦闘の経験はないぞ? 」

「安心してください、私が鍛えます。」

こうして、俺の修行が始まった……。




修行は、簡単なものだった。

女神が滝の水から魔物を生成し、俺がそれを倒す。

それをひたすら繰り返していた。

武器は、川の近くで拾った丈夫な木の棒。そして河原の石。

最初はぷにぷにとした、ゼリー状の生物だった。体当たりしかしてこなかったのでそれをよけて、木の棒で叩きまくっていたら大人しくなった。

次は大きなネズミやコウモリ。

ネズミはすばやかったが、動きを読んで石で叩けば大人しくなった。

コウモリは近づいてきたところを木の棒で叩いて落とし、踏みつけて倒した。

そこまではよかった。

つぎに女神が生成したのは、棍棒を持った、80センチぐらいの大きさの鼻が大きくブツブツした肌の醜い小人だった。ゴブリンというらしい。

木の棒で殴っても、けろっとしている。

棍棒を足に食らい、痛みでうずくまったところを、何度も棍棒で殴打された。

そのまま気を失い、1日目の修行は終わった。


次の日に目を覚ます。

体のあちこちが痛い。

「目が覚めたようですね、では修行続きをしましょう」

「待ってくれ、こんな体じゃ戦えそうにない。第一、あんな異世界生物に木の棒で勝てるわけないだろ」

「体は滝の水を飲めば回復します。この水には特殊な魔力がある。餓えもしません。武器も生成しましょう。」

女神は水から両刃の直剣と楯、鎧を生成した。

鎧を装備し、盾と剣を手に持つ。意外と軽いな。これなら振れそうだ。

「それだけだと修練になりませんね」

「なんだって? 」

そう答えた瞬間、武器の重量が増した。持っているだけで精いっぱいで、鎧もずっしりと重く、動きづらい。

「こんなんで戦えっていうのか? 」

「はい」

女神はニッコリとほほ笑んだ。

「では、ゴブリンを生成しますね」

水から昨日と同じ棍棒を持った小人が現れ、襲いかかってくる。

重い盾で棍棒の一撃を防ぎ、すかさず剣を振ろうとするが、重さで動作が遅くなり、バックステップでかわされてしまう。

そんな事を続けていると、やっと相手の攻撃パターンが見えてきた。

棍棒を持って飛びかかってくる瞬間に、盾で受けるのではなく剣を突き出す。

突き出された剣はゴブリンの胸に刺さり、ゴブリンは水となって流れ落ちた。

一日戦っていたようだ。日が傾き、辺りは薄暗くなっていた。

「今日はもう終わりにしましょう。」

女神はそういい、俺は滝壺の水を飲んで眠りについた。


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