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C

僕はその夜も、ご飯を残し、お風呂にも入らず、自室に籠り、彼女のためになにか出来ないかと、インターネットでかたっぱしから情報を調べ、買いあさった宗教や黒魔術、悪魔召喚を読んでは試し、真夜中になって気を失うように眠った。


気がつくと、そこは今日の日中に行った滝だった。

辺りは森に囲まれ、滝の音以外は聴こえない。

僕は一瞬でこれが夢か、意識の世界か、とにかくこの世でないことを理解した。

しばらくその風景を眺めていると、滝壺の上にどこからともなく人影が現れた。

最初はおぼろげだったが、徐々にその形は定まって行き、白い装束を着て、金髪で、緑の髪飾りをした、長身の女性の姿になった。

顔立ちは整っているが、どこの国の人とも違うような、ありふれているようで二人と居ないような、とにかく不思議な姿だった。

「あなたはいったい……?」

「私は運命の女神、あなたの願いを叶えに来ました」

「僕の願いを……彼女を助けてくれるんですか? 」

「はい、まぁ、正確に言えば、私はそのお手伝いをするだけです」

「どういうことですか? 」

俺は詳細を尋ねる。

彼女が助かるならなんでもいい。

「私には運命を変えることはできません。彼女が死ぬのは運命によって決まっていた」

「そんな……」

「しかし方法はあります。あなたに約束された未来、つまり運命の力を、彼女に分け与えるのです」

なるほど。そういうことか。原理は全くわからないが、筋は通っているように聞こえる。

「ただし、あなたの未来は、絶望に包まれた、真っ暗なものになるでしょう。いまのままであれば、あなたは、苦難に遭いながらも、それを乗り越え、幸せな暮らしを、そして、満足のいく生を、送ることができるでしょう。それほど、あなたの運命は強いものです。」

幸せな暮らし? 満足のいく生? 僕はもうそんなものに興味はない。

なんなら、それを彼女に与えて今すぐ死んだって構わない。

どうせ将来やりたいこともないんだ。

でも、彼女にはあった。

僕なんかが生きるよりも、彼女が生きた方が、いいんだ。

「女神様……私にはすべてを投げ打ってでも、彼女を救う覚悟があります。彼女が助けられるなら、どんな目にあったっていい。」

「本当にいいのですね? 」

「はい。彼女を……ユキを助けてあげて下さい! 」

僕は心の底から叫んだ。

「では、あなたのすべてを頂きます……」

女神が右手を天にかざすと、不意に体の力が抜けた。僕の体から、湧きでた光の粒子が、女神の手に集まって行く。

体力を奪われているようなもんじゃない。魂ごと吸われていくようだ。

目を開けてその光景を見ているので精いっぱいだった。しかしそれももう限界だ。

薄れゆく意識の中で、女神は笑っているように見えた。


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