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時の手紙  作者: 苺恋乳
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プレゼントと手紙

今日は私の息子が20歳になる日。そして、その息子にずっと隠していた事を打ち明ける日。20歳になるまでは何が何でも隠し通そうと思っていた。特に理由はないが受け止め切れるかが不安だったのだ。


「誕生日おめでとう星伸(せいや)

私は誕生日プレゼントに少し高めの腕時計を買った。本当は有名ブランドのをあげられたら良かったのかもしれない。だが、ブランドとかそういうものは良くわからないので自分が星伸に似合うと思ったものを買ったのだ。

「おぉ!まじで!?めっちゃ嬉しい!」

早速時計を腕につけて様々な方向から眺めている。こんなにも喜んでくれるのはとても嬉しい。


「じゃあ、お母さんからもプレゼントあげちゃう!」

星伸の母。つまり私の妻の彩羽(あやね)がとても嬉しそうにしながらそう言った。星伸も嬉しそうだ。

「お母さんからはこれっ!」

そう言って差し出したのは小さな赤い箱だった。星伸は何が入っているのだろうと不思議そうに、でも嬉しそうに箱を開けた。


そこに入っていたのはなにかモチーフが付いているわけではなく指につけるリングのようなものがついたネックレスだった。


「ネックレス?」

「そ、ネックレス。その指輪の裏、よく見てみて」

彩羽がそう言い星伸が何があるのだろうと恐る恐る指輪の裏側を見る。私も隣から覗き込む。


するとそこには星伸の生まれた年と誕生日が刻まれていた。そして、その横には《K・A・S》と書いてあった。

「ねえ、お母さん。この英語何?」

「あぁ、これね、健翔、彩羽、星伸だよ!少し気持ち悪かったかな?」

気持ち悪かったかな と聞いておきながら少しも悪びれる様子などない。ちなみに健翔(けんと)とは自分の名前だ。葛西健翔(かさいけんと)


「ねぇねぇ、星兄だけずるい!花姫(はなび)もなんか欲しい!」

力哉の二つ下の妹の花姫が頬を膨らませながらこちらに来る。

「お前はまだ16歳だろ?あと4年経ったら買ってやるから。あんまり高いものは無理だけどな」

花姫はきっとあのブランドのバッグが欲しい!とかあのお店の服が欲しいとか一度言い出すと止まらなくなる気がする。


「お父さん、花姫がワガママ言うと思ってるでしょ?!花姫そんな事言わないからね!」

「そ、そんなこと思ってないぞ……」

思っていた事を言われ思わず声が上擦る。

「花姫はね、いつも誕生日の時とかはワガママ言ってるけど20歳になったら星兄と同じような指輪が欲しい!ちゃんと名前入れてね?」

まさか花姫がこんなことを言う日が来るとは…。とは言いつつもワガママを言う時もあるがちゃんと周りを見ていて気を使えるいい子ではあるのだ。


「それでね、星伸。あともう一つ渡すものがあるんだ」

急に声のトーンを落として話し始める彩羽。今までのワイワイとした雰囲気はどこかへ行ってしまった。

「これは、花姫にも関係がある事だからちゃんと聞いてね」


そう言って彩羽は少し黄ばみかかった一通の封筒に入った手紙を星伸に渡した。封筒には可愛い丸文字で“星伸へ”と書かれていた。彩羽の文字でも無ければ私の文字でもない。

「これ、誰からの手紙?」

見覚えのない文字に星伸はきょとんとしている。


「読んだらわかるよ。花姫も星伸と一緒に読んでね」

「う、うん」

星伸は先程の指輪の箱と同じように恐る恐る封筒を開け手紙を出す。


――


星伸へ


星伸がこれを読んでいるということはきっともう20歳ですね。元気ですか?もしかしたら妹や弟と一緒に読んでるのかな?


きっと健翔と彩羽ちゃんの事だから突然何の説明もなしに渡して星伸はきっと何がなんだか分からないよね。とりあえずまずは私が誰かって事だよね。

私の名前は池沢千愛(いけざわちあ)。この手紙を書いてる時は葛西千愛かな。


星伸は小さい時から彩羽ちゃんがお母さんだと思って生きてきたと思います。だけど、星伸を産んだのは私。育ててくれたのは彩羽ちゃん。


私は星伸を産む前。いや、健翔と出会って少しした頃、病気になりました。

初めは治るって言われてたんだけどうまく行かなくて、私死んじゃうんだって思ってた時に出来たのが星伸。名前の意味は星のように輝いて伸び伸びと育って欲しいから。頑張って考えたんだよ。


私は星伸が大きくなるのを見られない。大人になるのを見られない。沢山教えてあげたいことも、伝えたいこともあるけど、面と向かって私の声では伝えられない。だからこうやって手紙にして伝えます。


これからはたくさん大変な事が沢山あると思う。今までもあったかもしれないけどそれ以上に。

だからこそ、焦らずに落ち着いて、自分を見失わないようにしてください。ちゃんと自分の意見を通してね。


もしいれば妹さんか弟さんへ


星伸はあなたにとっていいお兄ちゃんになっていますか?もしなっていなかったらごめんなさい。私の遺伝子を多く入れすぎちゃったかも・・・。

でも、もし、いいお兄ちゃんだったらこれからも仲良くしてね。私もあなたのお母さんになりたかったな。


葛西 千愛

拙い文章ではありますが、生暖かい目で見守ってくださったら嬉しいです。

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