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お父さんは愛娘を見守る(桜木世流side)

可世がっ、可世がっ、可世がっ!

私の可世がっ!!

学校なんかにっ!!!


可世にはお父さんが居るから学校なんかに行かずとも自宅学習で充分なのに!こんなことなら、学校の理事長になどならずに義務教育を法律から廃止にすれば良かった。


娘と一緒に居る時間を邪魔する法律なんかいらないよ。

だけど可世が学校に行きたいみたいだから、仕方がない。仕方がないから妥協してあげた。

あんなに嬉しそうに笑って、学校を楽しみにしている娘の願いを私が断れる訳がない。


………………全ての学校を破壊したくなったけどね。


お父さんより、学校のが好きなどと娘が言っていたら間違いなく破壊したけど。


それに比べれば宝林学園の株を買い占め、何人かの理事を辞任させたのは些細な問題だよね。

可世が通う学校に私以外の理事長は必要ない。


宝林学園は元々、進学校でまぁまぁな学校だけど可世が通う学校としては不足だね。

主に安全面、教育面、設備面で。

セキュリティや警備員を設置したし、教育者も一流大卒と教授人、スポーツトレーナー、引退したスポーツ選手を用意した。


今までの宝林小等部にはなかった。最新式のパソコン教室、図書館並みの蔵書がある図書室、茶室、食堂、理事長室などを改築済み。ちなみに中、高、大学部も改築中である。可世が入学する頃に完成していればいい。


そんな可世も小学一年生になる。

宝林小等部は可世が入学する前に改革は終えた。










そして現在。日課である、可世の教室内での授業風景を理事長室から双眼鏡で眺める。


今日も私の天使は可愛い。


「世流。いくら身内でもストーカー行為は止めて下さい。気持ちが悪いです」

「可愛い娘に悪い虫がついたら大変だろ。巽は見るな。可世が汚される。社会的に抹殺されたいの?それとも物理的がいい?」

「慎んで御遠慮させて頂きます。相変わらず可鈴さんや娘さんの事となると心が狭いですね」


こいつは水無月巽(ミナヅキタツミ)。私の友人で、この宝林学園の校長だ。いや、校長にした。

以前いた校長は年月で校長になっただけの脂ぎった無能な親父であったので離職させ、代わりに有能な友人を校長にした。


巽は教育免許もあり、心理学研究の教授だ。校長職は集団心理学研究に活かされるし、何より巽は人を育てるのが好きだ。

私と違って、生徒達を平等に導く存在になるだろう。私は基本的に可世が良ければ他はどうでもいい。学園の環境状態を整えたのも全ては可世の為と言う名の自分の為。


そんな巽は私の可世を同じく見るが、その手には双眼鏡はない。なくても姿くらいは肉眼でも見れる。

私が双眼鏡で見るのは口の動きを見る為だ。

いわゆる読唇術である。


最初は監視カメラと盗聴機を、可世の教室に設置しようとしたが巽に笑顔で破壊された。


『プライバシーは守りましょうね?本当に気持ちが悪いですね』


こいつを校長にしたのは早まったか………。もっと扱いやすい奴にすれば良かったと、思ったが後の祭りだ。

それに無機質な映像よりやっぱり生のが良い。

声が聞こえないのが残念だが読唇術でだいたい分かるしね。けして巽に監視カメラや盗聴機を設置しようとした事を可世に告げ口すると、脅された訳ではない。可世はそんな些細な事でお父さんを嫌わないっ!


今日も私の娘は天使だ。


そんな可世は宝林学園に入学してから一向に友達が出来ないと、落ち込んでいた。

嫌われていると、勘違いしているようだが実は逆だ。

可世はかなり好かれ過ぎている。


そもそも可世は可愛いし、性格も穏やかで、勉強も運動もそつなくこなすし、可愛いし、可愛いし、可愛いし、ともかくも嫌われる要素は欠片もない。

可世を嫌う奴なんて人類の敵だ。

滅びればいい。否、滅ぼす。

可世を傷付ける者は存在価値さえない。


可世は可鈴に似て、己の魅力を知らな過ぎる。

二人とも自己評価が低い。

自分の事を平凡で何処にでも居る、ただの凡人だと思っているがそれは間違いだ。


可鈴も可世も人を無闇に近付けさせない独特な雰囲気を持っている。

けして悪い意味ではない。

清らかな空気と言えばいいだろうか。

可世の居る教室は、可世が居るだけで厳かな聖堂になる。

静かに凛とした佇まいで本を読む姿は、何処か隔絶されていて、触れてわならぬ清浄なる空間。おいそれと足を踏み入れるのは赦されない。そこを踏み荒らす者は赦さない。赦せない。絶対の禁域。


そう、その独特な雰囲気故に、敬遠なクリスチャンが敬愛する神のように、可世はクラスメート達から崇められる存在になっていた。


踏み込めない絶対領域。


それでも、そう理解していても、声を掛けれずとも、視線だけでもと目を向けてしまう。

チラチラと見る者、恍惚と見る者など様々。

その視線に気付いた可世が気を悪くする事なく、瞬きを一つすると、目線の合った子に微笑む。

慈愛に満ちた笑みに、視線が合った子は恥ずかしさと嬉しさの余りに、顔を赤らめ顔を背けた。その周囲に居た子達も余波をくらい恍惚としている。


可世を神聖化しているクラスメート達が可世の友達に成れるわけなかった。そんな畏れ多い事など出来るわけなかった。


そんな可世のクラスは現在ホームルームの時間らしい。

そう言えば、巽が今日は各クラスの委員長を選出するよう職員会議で指示したと、報告されてたな。


担任の口の動きを詠むと案の定、クラス委員長に可世を推薦していた。


「あの担任クビね」

「ふざけないで下さい。私が世流の個人的な私情で辞任させる訳ないでしょう。あの方は人選に間違っていませんよ。貴方の娘は理事長の娘ではなく、優秀な生徒ですからね。選ばれるのは必然ですよ」


そんな事、巽に言われなくとも解る。解るが私が納得するわけないだろ?

可世がクラス委員長になんかになって、私と可世の時間が減ったら、どうする気だい?

責任でも取ってくれるの?


「あの担任の見る目はあるけど、可世は駄目だよ。許さない」

「そんなことでは娘さんに嫌われますよ……………嫌われてしまえ」

「可世が私を嫌うはずない」

「………………で、どうなりました?」


その無言は呆れか。

私が可世に嫌われるわけないだろ。

言いたい事は山程あるが今は可世だ。

仕方がないから読唇術が出来ない巽の代わりに私が実況中継してやる。


まぁ、可世がクラス委員長に成るのに反対意見など出るはずがない。

クラスメートは少しでも可世と接点をつくりたいと、躍起になっているし、只でさえグループ学習時はクラスメートが可世獲得強奪戦死闘になっている。

可世がクラス委員長になれば、グループ学習だけでなく、他でも一緒に居られる機会が増える。

その機会を逃すわけない。


「………………辞退したようだね……………藤堂ね。可世は藤堂とやらを推薦したけど、何なの彼奴?可世と親しいの?可世をちゃん付けで呼びやがって………あの生徒も退学に……」

「するわけないでしょう。しかし、藤堂とは………娘さんは担任より見る目がありますね」


巽は感心したように頷いている。

こいつが目をつけていたとは、藤堂とやらは何かしらの才があるのだろう。

そんな才を見抜いた、私の娘は優秀だ。


藤堂雅樹(トウドウマサキ)。今の彼は成績や運動も並みですが努力を怠らない真面目な生徒ですから、芽さえ出れば実を結ぶのも早いでしょう。世流が天才なら彼は秀才に成れる存在です。私達、教育者が求める人材でもあります。天才は社会不適合者ですし、教育の場には必要ありません。彼がクラス委員長に成るのなら、芽は必ず出ます。将来有望な生徒の一人ですね。そのまだ見えぬ種に水をあげるとは…………娘さんは実に素晴らしい」

「私が社会不適合者なのは認めるが、藤堂より可世のが秀才だ」

「そうですが、娘さんにはクラス委員長の器は小さすぎましたね。現に藤堂君は指名され、周りの者も賛成している様子ですし」


可世のクラスの生徒達が拍手しているのが見える。

クラス委員長に藤堂が収まった様だ。

可世が推薦したのが大きい。

可世が黒を白と言えば白なのだ。


可世がクラス委員長にならなくて良かったが、可世ほどクラス委員長成れる存在は居ないのに、藤堂がクラス委員長に成るのが気に食わない。


「娘さんには人を育てる能力がありますね。貴方と違って良かったです。さすがは可鈴さんの娘さんですね。世流に似なくて良かったと、今ほど思った事はありません」

「お前なんかが可世を評価するな。可世が可愛くて優秀なのは解っている。知らぬは本人だけだがな。そこも可鈴に似ていて可愛い。ああ、マジで学校なんか行かせたくない。ほら、あの虫めっ!可世に推薦されたからっていい気になりやがってっ」


潰してやる!


「彼奴、藤堂か?来年から可世のクラスから外せ。退学にはしないから、それぐらいはしろ。可世に男はまだ早い。一生いらない。必要ない」

「はぁ、分かりました。私も優秀な生徒をみすみす潰させませんよ。娘さんが不憫ですね」

「私が居るのに不憫なわけあるか」

「貴方が居るから不憫なんですよ。そんなんで娘さんに彼氏が出来たらどうするつもりです?」

「潰す」

「…………………はぁ。貴方は変わりませんね。天才の癖にそれを活かさない。全て出来るから興味がない。だけど好意を寄せる相手にはその才を存分に奮う。憎らしいくらいですよ」

「……………」

「…………貴方にとって私は何なのでしょうね」

「……………」

「仕事があるのでこれで失礼します。理事長も仕事をして下さい」


巽は私の返答も待たずに退出した。


「……………友人だよ」


だから私の言葉は巽には伝わらない。


巽が私の才を羨ましくも妬ましくも思っている事は知っている。

それでいて私を尊敬していることも。

巽が可鈴を女として好きだったことも。

好きなものも嫌いなものも。


友人だから知っている。


だが巽は私を未だなに『友人でありたい』と思っている。

馬鹿な奴だと思う。

私の世界は可鈴と可世だが、その世界に踏み入れる鍵を持ったのが巽だ。

だが鍵は使われない。

私が扉を開ければ容易いのは承知だ。

私が巽に『お前は友人だ』と言えば良いだけだ。

だけど、せっかくの鍵をやるほど私が認めたのだ。

どうせなら開けておいで。









そして季節は春から夏へ。

私は炎天下の中、屋上から双眼鏡でプールを見ていた。


「どうしてブルマを廃止したのにスクール水着が健在なんだ。体育の授業から水泳をなくせばいいものを。日本の義務教育の方針はこれだから……」

「そんなことより仕事をして下さい。理事長室に居ないと思ったら…………何て格好しているんですか。警察に通報されますよ」


背後を見ずとも分かる。私にこんな毒舌を吐くのは巽しかいないからね。

よく私が屋上に居ると解った。それでこそ友人だ。言わないが。

しかし警察に通報するなど異なこと。

私は可世を影から護るべく、警護にあたっているだけだ。


そう私は今、全身黒ずくめのグラサン装備のスナイパーの格好をしていた。

双眼鏡と改造モデルガンを構え、いつでも敵を葬れるようにしてある。

さすがに外国とは違い長銃は持てなかったが、私が改造したこのモデルガンなら即死は無理でも重症くらいには出来る優れ物だ。

巽には才能の無駄遣いと、言われるがそんなことない。可世を全身全霊で護る私の才能に無駄などあるはずない。


「可世の水着姿に興奮する変態は、全て私が撃ち仕留める」

「貴方が変態ですよ。小学1年生の水着姿に血迷い過ぎです」

「そんなことはない。可世を見ろ。いや、見るな。汚される。想像し……いや、駄目だ。そんな破廉恥な想像など許さない。私の可世が、可世が」

「……………変態」


紺の白ラインのスクール水着を着こなし、人魚のように華麗に泳ぎ、水に濡れた肢体は雫を散らしキラキラと輝く。

こんな姿を他者に見せるなど、まして想像させるなどあってはならない。

可世の水着姿は私だけのものだったのに。


「あの体育教師クビ……」

「にはさせません。水泳授業は水難被害防止に対する必須科目です…………このやり取り、いい加減に止めませんか?正直不快です。そして世流は気持ちが悪いです」


なら付きまとうな。

私の仕事など可世の二の次だ。

可世より大事なものはこの世に存在しない。


「それより、あの男は何だ?可世と水泳勝負などしやがって。可世に格好良いところを見せたいだけだろ」

「私に聞く前に貴方なら全生徒の名前や経歴ぐらい覚えられるでしょう。娘さんのクラスメートぐらい覚えてあげて下さい」


可世以外に興味はない。

名前など覚えるわけないだろ。

ここからでは見えないと言うから、可世を見ないことを条件に巽に双眼鏡を渡した。私には改造モデルガン内臓型スコープがあるから問題ない。

いくら巽でも武器は渡せない。

可世を護るのは私だ。


「ああ、叶玲二(カノウレイジ)ですか。いわゆるスポーツ少年ですね。身体能力が飛び抜けて良い生徒です。学業は余り宜しくありませんが、運動面はかなりのものです。将来はスポーツ選手になるのが望ましく、個人戦向きなタイプですね。集団戦でも活躍はするでしょうが………彼以上または同等の身体能力がなければチーム戦にはならないでしょうね。ちなみに藤堂君ならチーム戦の大将として相応しい器です」

「個人戦ね。可世よりは速かったが泳ぎが雑過ぎる。あんなのがスポーツ選手になれるか?」

「まだ子供ですからね。発展途上ですよ…………ですが、貴方の娘さんとの勝負で叶君は何か見つけたようですよ。教師が二人の勝負を許したわけです。娘さんの泳ぎ方は良い手本ですから生徒達の勉強になったでしょう」


巽が言ったように、勝負前にはなかった決意や輝きが瞳にはある。

ただ単に可世に誉められて喜んでいるだけではない。

それも大きく作用しているのは否めないが。


「…………………可世が、可世が、可世が、あんな奴を誉めている。お父さんのが泳ぎは上手いし、速いのに…………叶とやらも来年から可世と別クラス行きにしろ。出来ないなら退学に」

「しません。貴方は娘さんに関わる若い芽をむしり採るような事をしないで下さい。娘さんのように誉めて才能を伸ばす事ぐらいして下さい」

「可世の周りに除草剤を撒くのも私の使命だよ」

「…………訂正します。何もされなくて結構です」


次の年以降、藤堂、叶は可世と同じクラスになることはなかった。

だが巽の予測通り二人は才能を開花させた。


藤堂は今やクラス委員長ではなく生徒会長へ。

首席で宝林高等部に入学した。

また体育でのチーム戦ではコマンドとして役立ち、チーム戦では敵なしだったが部活には入らなかった。

中学時代の生徒会は藤堂を中心に、改革され生徒にとって過ごしやすい学園となった。

そして改革の一部に『天使会』の発足。

概要は桜木可世に関する条約である不文律。

『桜木可世に何人たりとも害を与えない』

これは可世を除く、全校生徒により可決された。

宝林中等部は『天使会』に全校生徒が加入した。その余波は宝林学園全体に広がりつつあったが、知らぬは本人のみ。

ちなみに会長は理事長で実父の桜木世流。副会長には何故か校長の水無月巽。幹部に生徒数名。

藤堂は『天使会』発案者であり幹部であった。


叶は水泳選手としてJr.全国競泳大会個人戦優勝を果たし世界への挑戦権を獲得し、Jr.世界競泳大会へ出場。個人戦では優勝。中でもバタフライ個人種目では世界新記録を出し優勝した。

だが数ある競泳強豪高推薦が来たにも関わらず宝林学園高等部へと入学した。

そして叶も『天使会』幹部の一人でもある。


こうして新たな高校生活の幕があがった。




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