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覇王と天使の来店(店員side)

その日、一本の電話から店の慌ただしさは始まった。


『今からそっちに行くから、娘の服を用意しといて』


電話に出たオーナーが居もしない存在に向かって電話越しに頭を下げながら了承する姿がひどく印象的であったが、それさえも忘れてしまうくらい通話後の店内は怒涛の波に飲み込まれた。


「その服はこっちに!ああ、それはサイズが違う!ハンガーにはそれと、ラックにはこれで…そうよ!昨日入荷したのも持って来て!」

「革、シルバー、いいえ、今年はパールロングネックレスが流行り………統一性を出すには……」

「バックは3wayタイプとショルダータイプと肩掛けタイプにプチバックも」

「靴も並べて!勿論ラックの下にもよ!」

「ああ、帽子は小物と一緒に出して!アクセサリーと揃えて!」


closeにされた店内はまさに戦場。

これから訪れる客は一体何者か?と戦々恐々しながらも手や口を動かす。


オーナーが最初に指示したのは16歳の女性が校外学習に行くのに相応しい服装の用意。

店内は全ての服が少女の為の服へと入れ替えられた。


「スタッフは裏方に待機させました」

「ご苦労様です。貴女にはお嬢様のお相手をお願いします」

「あの、お客様は一体………」


お客様はお客様。そこに線引きはなかった。

なのにこの特別対応。

私はチーフとして納得出来なかった。大切なお客様を差別して対応する事が。


「お客様であり、そうではないのですよ。これから訪れる方々は」

「え?」

「うちで扱っているブランドのデザイナー達の投資者です。普段はオーダーで既製品をわざわざ購入されないのですが……理由は定かではありませんが今日は展示会だと思って下さい」

「……………」


絶句した。

投資者なのは勿論だがオーダーですって?

あの偏屈で一癖どころか二癖以上あるデザイナー達がオーダーで作る?ない、ないわ。

だって世界的モデルだろうが王室だろうが平気で作成依頼を断る連中よ。パトロンだからって作る訳ない。平気でパトロンを切るわよ。

なのにオーダーメイド?なのに既製品を買いに来るの?何故なの?


混乱気味な疑問もお客様を一目見て納得したわ。


男性のお客様はモデルで王室でもないけど何この覇王様は?モデルが裸足で逃げるくらいの美形でありながら王座に相応しい雰囲気が醸し出している。

しかも覇王様が着ている服はあの、服が人を選ぶと言われているデザイナーの物で間違いないわ。

ああ、覇王様の為の服だったのね。それは万人に着こなせないはずよ。


そしてもう一人。


私、死んでないのに生まれて初めて天使に会いました。











覇王様はオーナーを従者のように使う姿をしり目に私は天使の奴隷になる所存で対応致します。

服を薦めるなんて出来ません。

だって全部似合う。なんなら私が奴隷代表で貢ぎます。


そんな天使が手に取ったのは今年の流行色のマカロン!しかも上級者向けのタートルネックニット。


見たい!ぜひとも着て見せて欲しい!

少女特有の柔らかなほっそりとした華奢な二の腕を是非とも拝みたい。


「お嬢様、そちらをご試着なさいますか?」

「いえ、あっ!」


ああ、生二の腕が戻されてしまったわ。

次に手に取ったのは美シルエットに熱い支持が集まる人気の定番スキニーデニム。

いい、いいわ!ヒップから足首まで体のラインが鮮明に見えるって、ああ~戻されてしまった。


「あっ、これ!」


そ、それは程よいホールド感とキックバック性の高い、世界的支持を受けているハイブリット構造のストレッチデニムを使用した着心地、シルエットともにピカイチのミディ丈のデニムガウチョパンツ。

私としては是非ともスキニーを穿いて欲しいが、もう宝箱を発見し鈴が鳴る様な声をあげて喜ぶ顔にノックアウト。

もうマジにそれあげます。


なんて考えてたら覇王様から威圧が襲い掛かり冷静になった。

あぶ、危なかった。


「そちらでしたらお色がブラック、インディゴ、ブルー、ホワイトがありますが」

「インディゴにします」


何色でもお似合いなるのに真っ先にデニムの流行色を選ぶなんてさすが天使。

妬ましい視線を隠しもしない裏方スタッフ達からインディゴのデニムガウチョパンツを出して貰い、天使にお渡しする。


「あそこのマネキンが着ている上着あるかな?」


今季に人気が復活しそうなギンガムチェック柄ニット。

やったぁぁあ!!!

私のセレクトコーデが選ばれたわ!!


「こちらになります。お色はどうなさいますか?」

「そのままで大丈夫です」


このニットにガウチョかぁ~

私がコーディネートしたのはタイトスカートだったけどこちらのがしっくりくる。

まだまだ勉強が必要ね。


「ありがとうございます」


お買い上げの礼ではなく、服の可能性を教授してくれた事に対してお礼を。


「ああ、此方は当店からのサービスになります」


当店ではローライズパンツを穿いても下着が見えないよう数は少ないですがローライズパンツ専用の下着も取り扱っております。

お嬢様が購入されたパンツには必要ありませんが、この下着はランジェリーショップにも劣りません。イタリア直輸入品ですのでデザインもとても素敵な品です。

お嬢様が表示を気にされていましたから、きっと肌が弱いのかもしれません。だからこそ、このシルク100%の下着をお試しして欲しい。


ちなみに私も愛用しています。

天使とお揃いです。

背徳てkっ!!!グハッ!!!は、は、覇王様から殺気がぁっ………………………………。




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