会員No.104(隣席の信者side)
うちの学校はかなり有名なんだぁ。勿論進学校としてもだけど、それだけじゃないんだよね。
だって進学校ならレベルは落ちるけど他にもあるし、設備面だって此処程ではないけど他校でも十分だし、教育だって確かに教師陣は凄いけど教科書は文部省で決められたやつだし、制服だって確かに可愛いけど人の好みによるしね。
それでも毎年外部生が受験するのよ。
ちなみに私はエスカレーター式だけどね。ラッキー♪
宝林学園が知名度高くて倍率が高いのは色々理由があるけどやっぱり一番は天使様が居るからだと思うんだ。
私は天使様の小等部時から知ってるんだからね!凄いでしょ?しかもクラスも一緒の時もあったんだよ!
もう初めて天使様を見た時は言葉にならなかったよ。てっゆーか、これ夢?えっ、現実?どっちでもいい!ありがとうございます!!!って感じだったなぁ。
もう仲良くなりたいとか、話し掛けたいとかの次元じゃないんだよ。もう存在自体が別物なんだから!なんて言ったらいいんだろう?うーん……触ちゃ駄目な美術品?何か違うなぁ。もっと、こう命なみに大事で触れたいけど触れなくて、なくてはならないってな感じで………あっ!空気!!しかも木漏れ日のある森林!清浄で暖かくて何処かほっとするけど壮大で、でも空気だから持ち帰れなくて、その場で感じることしか出来ない。うん、我ながらいい表現!
「ってな感じなのよ、西城君よ。それで?どうして編入したての君が天使様の御守りを持ってるのかな~?」
「うん、君に聞いたのが間違ってたよ。前置きが長すぎるよ。あと家の妹のが天使だから」
「黙れ、シスコンが!西城君の妹がプリチーなのは認めるが天使様のが天使様なの!!あんたも天使様を一目見れば私の言っていることの正しさが分かるわよ。あと妹さんの写真をおくれ」
「見せるがやらないよ」
「ケチッ!んで?それどうしたのよ?」
隣の席の西城君が編入した時からずっと首に紐がぶら下がっていたから私はスマホか電子カードかと思っていたが、出てきたのはどちらでもなくパスケースに入っていたのは御守り。しかも天使様のだよ!
なんでよ!?「これって誰か知ってる?」ってなんなのよ!?知らないはずがないでしょっ!つーか隠して!速攻隠して!!
お前、こんな所でそれを無防備に出すなよ!生徒全員が奪い合い神棚に供えられるぞ!
「妹がさ、僕の為に、僕の為に妹がさ…………」
そんなに二度言うほど強調しなくてもいいから早く本題を喋れや!そして隠せっ!!
……………………………(13~15部参照)
あらまぁ、妹ちゃん健気。そして天使様慈悲深い。そして美空お前は一体何人にストーカーしてるんだ?
そして西城君よ、話は判ったから奪われる前に隠せ!神棚に供えられる前にはよう隠せ!そして妹ちゃんの健気な心意気をかって黙っている私にお前は感謝して妹ちゃんの写メを進呈しろ!
「それでこの桜木可世さんにお礼を言いたいのと本当に貰っていいのか聞きたいんだけど、君の言う天使様の持ち物で間違いないの?名前の漢字が珍しいけど同姓同名の間違いの可能性m」
「間違いないわ」
「即答だね。根拠は?」
はぁ?間違う訳ないないじゃない。
私は鞄に付けている御守りをよく見えるように西城君の机に鞄ごとドンッと置いた。
「これ、天使様と同じ神社の御守り」
「神社名は同じだけど、それとは種類が違うよ」
ええ!ええっ!!そうですとも!!!
私のは紫に菊ぽいっ花と神社名と御守りの文字が刺繍されているだけよ。
神社だから色んな形と色の御守りがあるわよ。
「……のよ」
「何?聞こえなかった」
「ないのよ!種類?あるわよ!神社なんだから御守りだって種類豊富よ!だけど天使様のと同じ御守りは売ってないのよ!売ってる訳ないわよ。よく見てよ」
天使様の御守りは光沢ある白絹に金糸と銀糸で模様が刺繍され、更にグラデーションされた桜の刺繍と仄かに香るお香の匂い。何より達筆に書かれた文字は天使様のお名前でしかない。
あ、勿論、周りに見えないように隠しながら力説しております。
「どう見たって特注よ。一点物よ」
そこの神主と巫女さんが総出で作った物よ。
天使様の訪れに御供えした品なのよ。
私達只人の手に入る物ではないのよ。
私の力説に納得したのかしないのか不明のままホームルームが始まってしまった。
あ~あ~。
やりやがったよ!あのストーカー。
あのシスコンにあれはないだろうよ。何が正解だよ!お前、かなり間違ってるよ!
もう西城君が出ていく前から空気が悪かったけど、出ていった後は余計に悪い。
もう、あっちでガヤガヤこっちでガヤガヤな状態で楽しい校外学習の話なんぞポイよ、ポイ。
それもこれも美空が悪い。
そして何故に私に絡む!?
「姫歌と友達じゃないのになんでライバルポジになるの!?可笑しいでしょっ!友情endなんて姫歌は望んでないのに!!!」
可笑しいのはお前だよ。
ライバルってお前の成績と私の成績じゃ雲泥の差があるぞ?私はこれでも学年次席です。
友情endって私とですか?こちらからもお断りだ。
「最初だから要とまぁまぁ仲がいいだけなんだから!勘違いしないことね!!」
えっ、そっち!?そっちのライバル!?
「別に西城君のこと恋愛的に好きじゃないんだけど、そっちこそ勘違いしないでよ」
「じゃあ何で隣の席なのよ!」
名前順の席だからだよ。
それにしても西城君の隣に座れば強制的に恋のライバルに成るのかよ。席替えで両隣が男子になったら西城君がそれはそれで可哀想だぞ。
「だいたい要は違う学校に通ってるはずなのに姫歌の為にここに編入してきたんだよ。それなのになんでライバルキャラが居るの?可笑しいじゃない」
お前じゃなく妹ちゃんの為だよ。
ああ、五月蝿い。
チャイムもなったし先生には悪いけどグダグダのホームルームなんて早く終わりにすればいいのにね。
「お前等何騒いどんじゃぁぁぁああああ!!!!!」
あれま。
教室のドアを勢いよく開けて中に入って来た生徒の怒鳴り声で教室内に静寂が訪れた。これにはさすがの美空も静かになって結構だ。良くやった!
「天使様のお通りだぞっ!!!なのにっ!なのにっ!!!」
ええっ!!嘘っ!?そんなっ!!!どうしよう!?天使様に煩いクラスなんて思われた!?ただでさえ美空のせいで天使様との関われない様にされてるのに、さらに嫌われた!?
美空せいなのに怒る気力さえなく、もう美空なんてどうでもいい。泣ける。
美空以外の生徒+先生もどんよりと暗雲を背負ったかのようになっている。
もう駄目だ。死のう。生きていけない。
「はぁ?天使?んなの居るわけないじゃない。それに今は斎先生の授業中なんだよ静かにしてよね。もうっ」
今さらいい子ぶったって、お前が私に絡んで難癖つけてたのは全員が知ってるし、そもそも一番の原因はお前だよ。
その先生も今にも死にそうだよ。
「お前が諸悪の根源か、どうせドアを閉めなかったのもお前だろ」
はい、当たりです。
バッチリメイクと満遍なく香水を振り掛けていたであろう美空はホームルームが始まるチャイムと共に教室へ滑り込みました。
化粧直しが必要がない顔のくせにね。
「そうやって姫歌を悪者にするんだ………全部、全部、姫歌のせい………なんで、なんで?姫歌ばっかり……ひっく、ふぇ……もう……いいもん……」
泣き真似しながら美空は教室からドアを開けっ放しで出て行った。出て行く前に先生と藤堂、叶の顔をチラチラチラッと見ていたが三人が三人共天使様ショックから抜け出せずにスルーだ。かく言う私もまだショックから抜け出せない。
「はぁ。アレのせいなのは分かるけど天使様がこの学園に通ってる事を忘れるなよ。天使様が不快そうにこの教室を見てたぞ」
終わった。
ああ、私がドアが開いてるか確認していれば……。
西城君よ、何故、前の方のドアから出て行った。どうせなら後ろから出て行ってくれていたら良かったのに。
その後、西城君が天使会に加入し、妹ちゃんの羊着ぐるみ写真(満面笑み)を見せて貰って癒されました。ついでにこっちが絶望で生い先真っ暗だった時に天使様と話していた西城君には私からボディーブローをプレゼントしといた。