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シンデレラVS 大和撫子擬き

クッキーは二度と作らない。


あれから父とマダム御用達の高級スーパーで高級ホテル緒形(オガタ)シェフ監修パンケーキミックスを買った。


ホットケーキとパンケーキ何が違うのさ。

どうせ、アレでしょ。

スパッツとレギンスみたいなもんでしょう。

若い子向けに読み方変えただけだろ?


ついでに明治創業老舗和菓子店のアンコにジャージ牛濃厚ホイップクリームも購入した。


そう、私は生どら擬きを作ったわけです。


そして作り終えた私は気付いた。

ラッピング材料買ってないことに…………

スーパー行ったついでに買えば良かったのに何故に気付かなかったんだ、私。


そして何かと地球環境(エコ)の為と理由付けして、風呂敷包みの重箱を持って学校に登校するJK 。

一応、学校って持ち込み菓子って禁止だから隠蔽工作した結果だが今思えばナイス判断だった。

最初は皿にラップしただけだったしな。


しか~し。何故か重箱に視線を感じる。

もう、マジで恥ずかしい。

カフェテラスもある進学校に重箱ってないよね。風呂敷で見えなくても形は重箱だもんな。何で紙袋にしなかった。重箱=風呂敷包みの和のイメージが先行してましたよ。中身も生どら擬きで和だしな。


ちなみに重箱は外は黒の金粉漆塗り、中は朱の漆塗り。風呂敷が桜柄。そして中身は生どら擬き。

うん、なんか生どら擬きが高級和菓子に見えるマジック。


もう視線が痛く感じるので、手に持っていた重箱を胸に抱え、隠す様に早足で下を向きながら教室へ向かった。


「おはよう」


「おはようございます」

「おは」


挨拶しながら教室に入るとクラス全員が席に座り視線をよこすのに、相変わらず馨子さんと紗智ちゃんしか返答がありません。


菓子やらねぇーぞ、ゴラァア!!


つーか全員早いわ!

学生なら遅刻ぐらいしろや、ホームルーム開始時刻40分前になんて学校くんなよ。

私は父の出勤時間に合わせて来るから早いんだよ。私はギリギリまで惰眠を貪りたいんだが、私が学校行かないと父が出勤しないからな。


「………皆、早いね」


そんな本音を言えない小心者の私です。


「今日は特に、皆さん早かったみたいですね」

「ん、欲望に忠実」


えっ、今日って抜き打ちテストでもある日ですか?

そんなにテスト大事なの?

ってゆうか私はそれを知らないんだが、そこまで私を勉強で追い落としたいの?

重箱抱えて学校中の生徒の視線を集めた私にこの仕打ちはないと思います。


「それより、お菓子」

「そうですね。そのようなことよりお菓子ですね」


お二人さん。そこの笑顔が美しいお二人さん。その比重も可笑しいからね。

抜き打ちテストより菓子のが大事なのもどうかと思います。

でもその笑顔に逆らいたいとは微塵も思いません。

朝からありがたや~ありがたや~


「では、どうぞ召し上がれ。朝から重いかもしれないけど、小さめに作ったから一個くらいなら平気かな?」


机の上に風呂敷包み解き、重箱の蓋を開けた。


「甘いのが苦手ならこっちのレアチーズケーキをどうぞ」


一段、二段目に生どら焼き擬き、三段、四段目レアチーズ。


「凄い」

「美味しそうです」


「私としてはレアチーズケーキがお薦めかな。何しろ私の失敗したクッキーを土台にしてお父さんが作ったから」


そうです。

あの生焼けジャリボソひび割れクッキーはさらに砕かれレアチーズケーキの土台になりました。

捨てなかった事に父の愛を感じましたが、父の手によってシンデレラストーリなクッキーになった事が解せん。


高級材料を残念クッキーにした継母か義姉役な私。

残念クッキーを絶品レアチーズケーキにした魔法使い役な父。


シンデレラクッキー改めレアチーズケーキより私が不憫だと思う。

ちなみにクッキーを砕いたのは私だ。父は最後まで抵抗し食しようとした。

あれ?私まんま悪役だな。


「失敗ですか?」

「失敗?」


「うん、失敗。どら焼きみたいに上手くいかなくて」


「どら焼き、高難度」

「そうですね。皮も餡も難しいと思いますが」


「そんなことないと思うけど?クッキーより目分量判るし簡単だったよ」


だってパンケーキミックスに卵と牛乳入れてフライパンで焼いただけだし、餡もアンコにホイップクリーム入れて混ぜただけだ。


そして私がお薦めしたにもかかわらず、どら焼き擬きから先に手に取る二人。その後レアチーズケーキもパクリ。


「美味しい」

「美味しいです」


「良かった」


「私はレアチーズケーキよりどら焼きのが美味しかったです。勿論レアチーズケーキも大変美味しいのですが……何でしょう?懐かしい、心暖まる味に感じました」

「ん、私も」


それはオバチャンだけがなせる技です。

高級食材にパテシエ並みの腕を持つ父の上品なレアチーズケーキにはないもの。

高級パンケーキミックスや老舗アンコ、ジャージ牛ホイップクリームを駆使してもオバチャンの素朴な味わいは損なわれない。


だって目分量だから。


そこからはクラス全員に配布しました。

何故か泣きながら食していた生徒が居たけど山葵は入れてませんよ。


嘘です。

入れました。

やべっ!ロシアンどら焼きのつもりで一個だけ当たりを入れたけど、入れ過ぎた。

ウケ狙いのはずが、まさかの号泣。


すまん。すまん。


その涙はどら焼きと共にお茶で流しておくれ。

そして私は恨むな。恨むなら己の運にお願いします。


こうして手作りお菓子は無事?に終了した。




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