これから頑張ります
教室がガヤガヤ賑わっております。
なんか編入生が来るらしいですよ、奥さん。
まさに出会いイベントですね。
先生に教室で名前を呼ばれ入ってくる編入生。
ざわついていた教室が一瞬で静まり、先生が書くチョークの音だけ異様に際立ち、黒板に名前が記入されてから自己紹介が始まった。
編入生が顔をあげクラスを見渡すと………クラス内の一人の女子と互いに視線がぶつかる。
お互いに視線を外すことなく惹き付けられ合う二人。
先生に席につくよう促され、ようやくハッとして現実に戻る。
何かを予感させる一瞬の邂逅。
私達、僕達の恋はここから始まった。
甘酸っぺー!!!ベタだ!だがそれがイイッ!!!!
なーんて編入生が入って来ると聞いて妄想してしまった私です。
乙女ゲームの世界なら普通あるだろ!
期待した私の妄想を返しやがれ!
教室が賑わっているのはテストが返って来たからですよ。
テスト勉強?
そんなのするわけねーじゃん。
学生は遊ぶのが本文です。
青春を謳歌するのが務めです。
そこっ、父としか遊んでないとか言わないっ!これからだ、これからなんだよっ!
自宅学習?予習復習のことですか?
何それ美味しいの?
勉強はテスト前日か当日にやるのが主流でしょうが。
あ、そういえばこのテストだけど編入予定生も受けたんだってさー。
入学して初めてのテストだから中学受験問題と高等部で習った問題が少し出たんだんだよ。
だから編入生にとっては超難関。宝林外部受験も難関らしいけど、さらに上をいくらしいです。
えがったー。エスカレーターで。
小、中等部からの持ち上がり組はやっぱ楽すっね。
ではでは返ってきたテストですが………
うん、まぁまぁ。可もなく不可もなく、私的には良くやった!
全教科の平均が70点以上だったよ。
さすが雑学系番組を網羅してるだけあるよ、私。
ありがとう!日本のバラエティー番組!これからも視聴率向上に貢献します。
おかげで国語、理科、社会、英語だけは70点以上だったよ。
だけど只今返された数学の点数なんてギリ60点。
数学はテレビで見ないからな~仕方がないわ。
でもかなりの快挙でない?
0点がないんだぜ!
しかも30点を素通りして半分超えたんだぜ!
テスト点数後半組だぞ!私は!←(ドヤ顔)
「可世さんはどうでしたか?私は英語の問題を3問ほどケアレスミスしてしまいました」
おお、相変わらずお美しい!今度巫女服着てくれないかな。私なけなしの金を全額御布施で納めるから、着てくれないかn……………えっ、空耳ですか馨子さん。貴女が先ほど何と…………
「私は、社会2問、理科2問、間違えた。可世は?」
紗智ちゃんも相変わらずカワユイのぉう。小さい手で一生懸命に肩もみしてくれたら、オバチャンが小遣いやろu…………って!!んんうっ!?
「え?」
えっ!?ええぇっ!!!な、な、な、何を言っているんだい、ちみ達は!?
先ほど何と言ったかね?オバチャンとんと、耳が遠くなって良く聞こえんかったよ。
「あ、失礼しました………愚問でした。可世さんに誤答などありませんのに……私としたことが………」
「んっ、可世、全教科、百点」
えっ!?
違う!!違うから!!
そんなに情けないような顔しないで馨子さん!
情けないのは私だから!
紗智ちゃんも馨子さんを肯定して自信満々に私が満点なのが当たり前のように言わないで!
私、百点、一つも、ない。
どっ、どうする!?
ここは正直に自爆する!?
それとも嘘をつくか………
いや、ここは日本人代表として曖昧にするのが一番か?
つーか二人とも間違いそれだけしかないの?
えっマジで!?
これで正直に言ったら失望される!
でも友達に嘘をつくのは~!!!
やっぱり、なぁなぁにするか。
でもなぁー!!
………………………………………………(葛藤)
うん、言う。言います!
女は度胸!
私は、私はっ、美少女達には誠実でありたい!!
はーっはっはっはぁ!!見るがいい!!!
これが私の成績だ!
「ごめんなさい……その、期待されるほどの成績じゃないの……」
はい、威勢は内心だけです。
恐々とテストを二人に先ほど返された数学のテストを差し出して見せたら……………驚愕した。
うん。そうだよね。
期待に応えられず、すいません。
私は二人の成績結果に驚愕だけどな!
でっ、何故か、何故かっ、怒りの形相になった。
鬼も裸足で逃げるレベルです。
馨子さんが笑顔で目元をピクピクさせるだけで怖い。
その笑顔が怖いです。
そして普段、無表情な紗智ちゃんが爽やかに笑った顔は寒い。
爽やかなのに悪寒がする。
二人が鬼女になるほどの点数ですか。
そ、そんなにヤバイ点ですか。
勉強しなかった私が悪かった。
だからその顔はやめてくれー!
美少女が、美少女なのに………………………だがそれもイイ!私は美少女に怒られるならMでもイイ!
……………やっぱり怖いから誰でもいいから助けて~
「桜木、ちょっといいか?」
天の助け!
先生、君は神かっ!
そしてスンマソン。
数学が一番点数が低かったよ。
これから頑張るから助けておくれ。
「御崎先生、これはどう言うことです?ご説明お願いします」
「採点ミス、教師失格、抗議する」
そんな、神に刃向かう、だとっ!?
60点が再採点で50点代になったらどうするんだ!
採点ミスがあっても私は言わない!
50と60には深い溝と高い壁があるんだよ。たかが1点で私の60は消させない!
「はぁ、落ち着け。伊集院、真中。二人が言いたいことは分かるが、これは桜木本人の問題だ。二人が口を挟むな」
なに!?
私がはぐらかそうとしているのがバレてるだと!
神は、神は私を見捨てるのか………貴方に慈悲の心はないのか!?
「桜木」
「……はい」
「一緒に数学教科準備室に来なさい。テストに関して聞きたいことがある。残りの生徒は返却したテストを各自自己採点、自習とする」
先生に数学の解答を配るよう馨子さんと紗智ちゃんが渡され、渋々受け取り配り始めた。
私だけ呼び出しですか。
私だけが罪人ですか。
私だけ数学の点数が悪かったのですか。
脳内BGM にドナドナが流れながら先生に教室から連れ出された私。
そして数学教科準備室にて私は先生に机の上に出された自分の数学テストを見せられております。
「どうして計算式を記入しなかったんだ?」
先生がトントンと指で叩くところ数ヶ所は空欄です。
いや、答えだけ書かれたテスト。
そのトントンやめてくれ。
プレッシャーを感じるから止めて下さい。お願いします。
だいたいそんなの聞くなよ。
そんなの答えも解らないのに計算式なんか解るわけねーよ。解らなかったじゃない分からなかったんだい!
「分からなかったからです」
答えが合っていたのは偶然だ。女の山勘だ。
空欄は空けるな!何でもいいから書け!埋めろ!と前世の担任が言っていたから実行したまでなのに、何故に責められんといけんばい!?
計算が記入されず答えが正解してたからカンニングしたと思われてるんだろうな。しかも数ヶ所だもんね。偶然にしては出来すぎてるよね。
でもね、私はカンニングしてないっ!
運だ。運が良かっただけなんだよ。
今月のラッキーナンバーなだけだよ。
証拠に占い雑誌を差し出すからさ。
「…………桜木、学校を変えてみないか?」
「っ…………」
「お前はうちでは……………が…………む。正直…………学校はお前には………ない」
先生の最初の一言がショック過ぎて後半良く聞き取れなかったがそこまで言うっ!?
転入を教師に薦められるほど私の成績ヤバイですか?
私オバチャンだけどいい子だよ。カンニングなんてしてないよ。
しかし悲しかな……転入するにも私みたいな馬鹿でも入れる学校ってないもよう。
私だけ、入学出来る学校がないの?
いつから日本の偏差値ってそこまで高水準なったんだ。
私だけなの!?
日本の馬鹿は私オンリーワン。
んなわけあるかぁー!!!
ああ、確かに馬鹿だよ!さっきまで赤点なしでドヤ顔してたのは私だよ!
でもさ教師なら応援してよ。労ってよ。ついでに見放さないで親身に勉強を教えてくれや。
私、絶対に転校しない。つーか出来ない。入れる学校がない。ここしかない。しかも今さら受験勉強するのは嫌だ。
先生が何を言ってもここに居てやる!もし留年しても三年は絶対に居座ってやるんだからな!
馨子さんと紗智ちゃんが卒業するまで居てやる!
その決意を胸に先生を説得する!
「先生……私はここで学びます。学ばせて下さい………ご迷惑をお掛けしますが御指導、お願いいたします」
深々と頭を下げてお頼み申す。
数学のわからんところは宜しくです。
私の留年、退学阻止にご助力下さい。
「…………それで、それでいいのか?」
苦渋の表情を浮かべる先生。
頭の出来が悪くてすいません。
だから見捨てんといて。
他に行くとこないのよ。
「はい、私はそれがいいです」
「…………………わかった」
いっよ、っしゃぁあああ!!!!
了承したね!
教師に二言はないよね!
「ありがとうございます」
もう満面の笑みでお礼言っちゃいます。
ちゃんとやる!これからはちゃんと勉強やるからっ!!ガリ勉並みに頑張る!予習復習もやるから!バラエティー番組は録画して休日にしか見ないから!
だから今回は見逃して下さい。