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一枚の紙切れ

 目が覚めた俺は横たわっていた身体の上半身だけを起こし、自分が屋外で寝ていたことに気づく。

 

 自分の周りを見渡す。ここはどこなのだろう? 目覚めたはいいが意識が朦朧とする。ここは森の中なのだろうか、先が見えないほどの薄暗い雰囲気を漂わせている木々に囲まれている。

 

 ……あれ? 俺、何をしていたのだろう? 何も思い出せない。

 

 俺は地面から立ち上がり、学生服についた土の汚れを払落す。


 どれくらい寝ていたのだろうか、それすらもわからない。


 そこで強い風がその場に流れ、周りの木々が何もわからない自分をあざけり笑うようにザワザワザワ、と揺れていた。


 なにこれ怖い。


 とりあえず、この状況をなんとか整理してみよう。


 んー、制服を着ていたってことは学校には行ってたんだよなぁ? 学校に行って、授業を受けて、それで昼休みに友人と会話しながらご飯食べて、それで……。わからない。記憶が曖昧すぎて混乱中。


 まず、ここは本当にどこなのだろうか、見覚えのない木々をもう一度見渡す。日本……なのか? 日は昇っているようだが周りの木々のせいで薄暗い。


 自分がなぜここにいる理由もわからない。誘拐された覚えもないし、自分がここまで来て寝ころんだ覚えもない。


 いつも手首に嵌めている腕時計もないし、制服の上着にしまってあった電車の定期入れがない。……え、定期入れがない……だと? この前継続させたばかりだぞ!? と焦りながら自分の周辺に定期入れがあるかどうかを探す。


 ない、ない、定期がない!?


 探した結果、定期入れはどこにもなかった。しばらく定期がないことにしばらく呆然とする。そんなとき『窃盗』という単語が頭の中で思い浮かぶ。盗まれたのか? いや、定期を盗んで何になる? あ、そういえば鞄もない。……何もない。


 自分の持っている物すべて盗まれて、俺をこの森に放置した? いや、なんで俺をこんなところに放置したのだろう? そもそも誘拐された覚えもないのになぜこんな状況に陥っているんだ……。

 

 この状況を把握しきれなかった俺は、ため息を吐きながらその場にへたり込む。


 へたり込むとクシャっと腰の下から音がした。何かがある感触が腰から伝わってくる。


「ん、なんだこれ?」


 手でそれを掴み取るとくしゃくしゃに丸められた紙だった。定期入れを死ぬほど探している際にはなかったのだが、風によって飛ばされてきたのだろうか? 


 この状況のせいで何もやる気が起きない俺は無意識にくしゃくしゃに丸められた紙を広げてみる。


 紙は少し色あせており、何も書かれていない。


 はあ、とまたため息を吐き、紙をそこらへ投げ捨てるためにまた丸めようとしたその時――――、何も書かれていなかった紙に文字が書かれてあった。


 え、口から一言発しながら、いきなりのことで思考が停止する。


 あれ、なにも書かれてなかったよな? てか今、何が起きた?


 何も書かれていなかった紙に文字が書かれてあった。矛盾だ、と思いながらその紙書かれた文字を改めて確認する。


『この世界を救え』


 理解できない。


 何が理解できないって、いきなりなにも書かれていなかった紙に文字が書かれたあったこともそうだが、その書かれていた内容も当てはまる。


 この世界を救え? え、なにこれ意味がわからない。救うって何を? 日本の不景気とかか? とこの訳のわからない現象に頭を悩まされている途端、紙に書かれていた文字が変わった――――


『まず逃げろ』


 ありえない現象に少し呆然する。呆然しながらもなんとか紙に書かれたことの意味を理解しようとする。


 ……逃げろ? どういうこ――――その時、一つの恐ろしい雄叫びが森全体に、自分の耳に響き渡った。 


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