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短編作品集

遠くて近い

作者: きら☆麿
掲載日:2026/04/18

 昼休みが始まって、まだそんなに経っていない。


 ノートを広げたまま、シャーペンを握った手が止まる。


 三問目で、完全に詰まった。


 さっきから、同じところを行ったり来たりしている。


 小さく息をつく。


 ふと、横を見る。


 隣の席。


 今日も、囲まれてる。


「それでさ、ほんとありえなくて——」


 笑い声が近い。


 楽しそうだな、と思う。


 ああいう空気に、自然にいられるのはすごい。


 俺には無理だ。


 すぐに視線をノートへ戻す。


 たぶん、気づかれてもいない。


 それでいい。


 ——どうせ、話す理由もない。


 カリカリと、また書き始める。


 答えは出ないまま、時間だけが減っていく。


 そのとき、周りの音が少し減った気がした。


 気のせいかと思いながら、手を動かす。


 ふと、指先が軽くなった。


「あ」


 消しゴムが、机から落ちる。


 小さな音。


 拾おうとした瞬間、横から手が伸びた。


 差し出される。


「……はい」


 顔を上げる。


 目が合う。


 少しだけ、驚いた。


「ありがと」


 それだけ言う。


「それ、今日の宿題だよね?」


 予想していなかった言葉に、一瞬だけ止まる。


「うん」


 短く返す。


 それで、終わる。


 続けようと思えば、何か言えたのかもしれない。


 でも、何も出てこなかった。


 また、ノートに視線を戻す。


 さっきと同じはずなのに、少しだけ落ち着かない。


 ペンを動かしながら、さっきのことを考える。


 ——今の、なんだったんだろうな。


 ただ消しゴムを拾ってもらっただけだ。


 それ以上でも、それ以下でもない。


 なのに、少しだけ残る。


 何か言おうとして、やめた。


 そのとき、


「ただいまー」


 声と一緒に、周りの音が戻ってくる。


 さっきまでの静けさが消える。


 ふと横を見ると、もういつもの光景に戻っていた。


 笑っている。


 やっぱり、ああいう場所にいるやつなんだと思う。


 視線を戻す。


 三問目は、まだ解けないままだった。


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