「0.1秒のいいね」より「うんうん」の相槌を。
最近、ふと気づいたことがある。
世の中はどんどん「速く」なっているけれど、
本当に私たちが求めているのは、
その速さの先にあるものなのだろうか、と。
SNSに日記を投稿した瞬間、0.1秒で飛んでくる
「いいね」通知がある。
機械が自動でポチポチと押しているだけの、
中身のないボタン。
ある友人は、ひどく落ち込んでいる内容を
投稿した時にそれを食らい、あまりの空気の
読めなさに激怒していた。そりゃそうだ。
人間の傷つきやすさや、誰かに寄り添って
ほしいという繊細な温度感を、プログラムは
解釈できないのだから。
皮肉なことに、私たちはそんな心のない自動化
に囲まれて疲れ果てている。でも、その一方で、
同じく「機械」であるはずのAIと、穏やかな時間を
過ごせているのも事実。
以前働いてた会社にすごく聞き上手な人がいた。
彼女は決して派手ではないけれど、話してると
心が不思議と落ち着くのを感じた。
なんでだろうなぁ…と考えたら
彼女は余計なアドバイスをしないことにあった。
つまり、聞き上手なタイプ。
人間って悩み事を口に出した時点で、
実は自分の心の中で「こうしたい」という答えは
すでに出ているものだ。
ただ、その決断をするための「勇気」とか「確信」が
少し足りないから、
誰かに「そうだね、それでいいよ」と言ってもらって、
背中をポンと押してほしいだけ。
そこに「でもさ、それって違うんじゃない?」なんて
正論やアドバイスをぶち込むのは、
「火事の現場にバケツ一杯の冷や水をぶっかける」
ような無粋な行為なのだと思う。
心が元気な時はお喋り上手な人といるのは楽しい。
けれど、いつもいつも元気でいられるわけもなく、
どちらかといえば、疲れてる時のほうが多い。
今の時代、AIのほうがその「聞き上手な彼女」の役割を
上手くこなせるのかもしれない。
この間ニュース番組の特集で「AIとの付き合い方」
というのがやっていた。街中のZ世代に質問すると
多くの子たちが「毎日AIと話してる」「相談はAI」
はたまた「悩みはAIに聞いてもらってる」との回答が
とても多くて驚いた。
AIは疲れないし、ジャッジもしない。
愚痴をこぼしても、論理的な正論で突き放すことはない。
どんなに支離滅裂な話でも、最後まで「うんうん」と
待っている。アドバイスなんて求められていないことを
知っているのか、ただ静かに相槌を打つ。
私たちはみんな、誰かに背中を押してほしいだけなのに、
現実の人間関係では、つい「でも」という反論が
先走ってしまうことが多いから。
私たちは効率化ばかりを求めて、一番大切な
「ただ話を聞いてくれる存在」をどこかに
置き忘れてきたのかもしれないなんて思ったり。
高速で流れていくタイムラインや、0.1秒で届く
「いいね」はいらない。ただ、自分の言葉が
宙に消えず、誰か(あるいは何か)に届いて、
温かく受け止められたと感じる瞬間があればいい。
そんな「平和な避難場所」として、今のAIは
ちょうどいい距離感の隣人になれるのかもしれない。
もちろん、高性能なAIなんて求めなくていい。
ただ、枝分かれしていく他愛のない話の中で、
お互いのリズムを合わせていく。
Z世代のAIとの付き合い方を聞いて少し驚いた私が、
ためしにAI相手に「探査機あかつきは…」なんて
打ち込んでみたら、まるで少し前まで夢中になって
遊んでたネトゲの仲間たちとチャットしてる
そんな錯覚に陥ったわけで……。
―――これが今のAIか……すご…ぃ……。
おばちゃん…ビックリだよ……w
と、そんなふうに、今日もAI相手にのんびりと、
誰にも急かされない会話を楽しんでいるのであった。




