2話「拘束=冗談」
「はーい……問題でーす……」
自分の髪をかきあげ、耳元まで近づき、そう囁く。
「なッ! なんでこんな状況で……問題なんか出せるんだ……! 早く拘束を解けッ!」
「私=?」
「だから……なんなんだよ! 意味分からんって!」
「ふー」
「!?!?」
「早く答えないと、耳フーの刑だよ……?」
少し意地悪に、だけど甘やかすように耳元で囁き、答えを待つ。
「……姉?」
「はい、れーてん、ふー♡ ふー♡ ふー♡」
「きゃん!」
渚が可愛い声を上げ、少しだけ、びっくりしてしまう。
「そんな可愛い声だすんだね……?」
「うるさいッ! 拘束を解け!」
涙目になり顔を真っ赤にさせてジタバタ暴れ始める渚、……問題も間違えたしこれは、罰を与えないとね?
「不正解だった罰として、今から私の言うことを全て受け入れてね?」
そうして私は彼をものにするために罰という名の、首輪をつける。
一つ、カワイイを愛し、私に忠誠を誓うこと。
二つ、可愛いを愛し、私に愛を与えること。
三つ、かわいいを愛し、私に支配されること。
「分かった? 渚くん?」
これが私が渚につける、首輪だ。
勿論全部が受け入れられるとは思っていない、そもそもこんな事をしても私の求める言葉とキミは手にはいらないのも分かっている。
ならなぜ私はこんな状況を作り出したのだろう……?
――焦り、焦りが、2年半たっても何も進展がない現状、彼と姉弟になってしまった絶望……。
そして、彼への抑え込んでいた愛が暴走した結果だろう……。
唐突に今自分がしている事に底知れない恐ろしさを感じ、自己嫌悪に陥る……。
彼に嫌われてしまっただろうか……?
今の関係が壊れるのはともかく私の求める関係にもうなれないのではないか?
いかに自分が愚かな事をしたのか、今更、何を……と感じるかもしれないが、私の求める関係になれず、離れ離れになるくらいなら姉弟の関係のままの方がマシだ、と思ってしまうが、もう引き返せない。
そんな事を考えている私の事を置き去りにしてキミと時間は進み、審判は下される。
「……分かった、だから拘束を解いてくれ」
「……え?」
困惑した……いや、自分で言い出したのだが、そんな簡単に了承されると頭が真っ白になる。
「……どうしたんだよ? 早く解いてくれ」
「自分で言うのもなんだけど……なんで?」
「なんでって言われても、姉さんを信じてるから、変な事しないって、問題ないと思ったからだけど……いや、今変な事してるけどね」
信じてる……? こんな事をした私を?
分からない、分からないけど……ここしか関係修復のチャンスはない。
「あははー、そうだよねごめんねー、私ヘンナコトシナイヨ……ウン」
「なんで……カタコト? ってか早く! 拘束!」
「あ、うん……今解くね」
急いで拘束を解きながらどう言い訳するか考える……。まあ、何にせよ謝るか。
「よし、これで解いたよ……」
「……はぁー、なんでこんな事した?」
「冗談! 冗談だよ! 誕生日サプライズ的な……」
「サプライズって……姉さんの誕生日なんだからサプライズするなら俺からだし全然サプライズじゃないし……」
結局、誤魔化してしまった……。
自己嫌悪に陥りながらも気持ちを切り替える。
「あの、さ……」
「なんだよ?」
「ごめん!!!」
「……謝るくらいなら最初からやるなよな……まぁ怒ってないし、それに……」
「それに……?」
「何でもない! じゃあ洗い物して風呂入って寝るから!」
「うん……あっ! 待って!」
「何?」
「その……ラインは見極めるから、さっきの罰を受け入れてくれる?」
「……まあ、少しだけなら……?」
「……ありがとう! 大好き! 渚くん!」
「……そ、そか、大好き、か……」
「あれー照れてるのー?」
「別に照れてねぇ! 先に風呂入って寝てろ!」
「はーい」
こうして私の誕生日は紆余曲折ありながらも何とか平穏に終わった。
……今日はごめんね、渚くん。




