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第一章序 十八年の終止符

十八年の終止符




俺の名前は萩川流樹斗!…え?読み方が分からない?

読み方は―ハギカワルキト、だ!


日本のとある都市の高校に通う、ごく普通の高校生!


受験真っ只中の元気な十八歳!

しかし、成績は悪く、変態で彼女ナシでDTのフルコンボだ!性格もクソッタレ(クラスの女子に言われた言葉)であり、俺に唯一残されたのは圧倒的顔面だけ!入学した頃は女子が囲んできたが、今となっては懐かしい思い出と化している!


―小学校で黄金時代を過ごし、中学でも天才少年として名を馳せていた俺だが、高校に入ってから堕落した生活を送るようになってしまった。


中学までは成績優秀、品行方正ばっちりで運動神経抜群の『神童』と呼ばれ、一家の希望とも言われていたのだが、


いつの間にか全てが崩れ去り、変態界隈の『神童』と化してしまったのだ!

性に関しては特級レベル、他に関してはFランクぐらいの学力。

顔も特級レベルであるが、性格が終わっているのでこれもFランクだ。


成績不良、性なる神童、彼女ナシに加えてDT、約束は破るクズ男!

これはもう、フルコンボというよりオーパーフェクトだ。

そんな悲しきモンスターと化した俺だが、今は現在進行形で死にかけている!


「やめぇ…て…」


薄暗い路地裏で二人の男が対面している。一人は壁に寄りかかり、力なくへたり込んでいる者。もう一人はナイフという凶器であり、狂気を持つ者。

ルキトは、前者の方だ。


―学校からの帰り道に、事件は起きた。

ルキトが歩道を歩いていると、急に路地裏に押し込まれたのだ。嫌な予感がし、奥まで逃げてみれば、そこには行き止まりの狭い四角形の空間があった。

灰色のコンクリートで囲まれた、薄暗い空間だ。そこに、黒いパーカーの男が詰め寄ってきたのだ。

そして、腹を一発やられた。


「お前さぁ…俺の彼女になんで手を出したんだ?」


怒りに声を震わせながら、その男は憎悪を込めて言う。

しかし、その声は混乱状態のルキトには届いていない。ルキトには、聞く耳を自ら奪ったのだ。


「なんか言えよ!!」


ルキトの顔面を足で砕く。歯が飛び散り、鼻血を垂れ流す。

―痛い…痛い…痛い…痛い……。

涙が溢れてきて、擦りむけた頬を刺激する。それよりも、腹が。腹がマズい。

ごぼごぼと口端から血が滲んでくる。

これ、本気で死ぬかもしれない。


「おい…何無視してんだ?聞こえなかったか?」


憎悪に染めた声が、ルキトに唾を飛ばす。混乱で何も理解できていないルキトの胸倉を掴み、涙を溢していることも、血を吐いていることも無視してだ。

ただそこにあるのは、慈悲のない憎しみの目だった。


「もう一度言う……。なんで、俺の彼女に手を出した」


軽蔑の眼差しを向けて、そう言う。ルキトの耳にもしっかり刻まれるように心の奥から放たれた声は、ルキトの鼓膜をじっくりと揺らした。


―意味がわからない。俺は人の彼女に手を出したことなんて一度もない。最近あったことといえば、川で溺れていた人を助けていたぐらいだ。


こんなクソみたいな俺でも、人との愛は大切にするタイプだと思う。

決して、人の彼女を襲う真似はしない。


首を横に、小刻みに振る。

声を出そうと思ったが、それ以前の問題と化していた。


―首を絞められている。


「あ…げ…?」

「殺す……。殺してやる……。俺の彼女を…怪我させやがって……っ!!」


それは、紛れもない愛する人への深すぎる愛の心だった。愛する人を怪我させる者は許さず、愛する人を傷つける者を憎悪する。

深淵よりも深い、狂気の愛だ。


首を締め付ける手が、さらに強くなる。

息ができない。温もりを感じない。苦しみしか、わからない。

何が痛いのか、わからない。冷たい、冷たい、冷たい。

その冷たい手が、ルキトを殺さんと握りしめる。


「死ね…死ね死ね死ねっ!俺の彼女を襲う…クソ野郎がぁぁぁ!」


折れる折れる折れる折れる苦しい苦しい苦しい苦しい…………。

……あぁ、寒い…。


瞬間、何かが折れる音がし、視界が一瞬で消え失せた。


―萩川流樹斗が、最後に聞いた音だった。


第一章序 終

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