霧の部屋
なんか脱出とかデスゲームとか書きたくて書いてみた(*´ー`*)
――「シュー……」という乾いた音が、耳のすぐ横で鳴っている気がした。
その音が、アタシを現実に引き戻した。
目を開いた瞬間、胸がざわっと泡立つ。
真っ白な天井。
白い壁。
白すぎて、どこを見ても景色が平らで、深さが無い。
そして……むき出しの豆電球がぶら下がっていて、ゆっくり揺れている。
「……や、やだ……なにこれ……」
声が震えた。
自分の声なのに、聞いたことないほど弱かった。
ゆっくり上体を起こすと、ひざの上でフリフリが揺れる。
メイド服。
「はっ……? ちょ、待っ……嘘でしょ……?」
胸がドクンと跳ねた。
急に体が熱くなり、同時に背中の中心が冷たくなる。
全然知らない部屋。
知らない服。
知らない状況。
頭の奥で何かがざわざわして、呼吸が浅くなった。
(なんで……なんで……)
昨日の記憶を探ろうとするけど、指先が空をかくみたいに何も掴めない。
学校……帰り道……玄関のドア……そこから先、家族と……そこから真っ白だ。
「え……なにこれ、本当に……?」
喉がきゅっと締まった。
不安が一気に膨らみ、涙がこぼれそうになる。
強がりなアタシでも、これは無理。
これは怖すぎる。
そのとき――
シュー……シュー……
あの音が、部屋の奥から微かに聞こえる。
息を吸った瞬間、胸がひりっと痛んだ。
「っ……!」
吸うたびにじんわりと喉の奥が痺れる。
空気がおかしい。
こんなの、普通の部屋じゃない。
足が震えて、床が遠く感じた。
でも、テーブルに置かれた紙とワイングラスが気になって、よろよろと近づいた。
紙には淡々とした筆跡でこう書かれていた。
「この部屋には毒霧が散布されている。
目の前の飲み物はこの霧の毒そのものだ。
しかし飲み干せば、扉の鍵が空いて開く。
どうするべきか、君が選べ。」
読んだ瞬間、心臓が冷えた。
「……うそ……でしょ……? やだ……やだ……」
手が震え、紙の端を落としそうになった。
選べって何?
どっちも死ぬじゃん。
なんでアタシなの?
視界が揺れそうになって、慌てて目をぎゅっと閉じる。
「落ち着け……アタシ……落ち着けって……」
でも、言葉は震えっぱなしだった。
扉へ駆け寄ると、指先が汗で滑った。
「お願い……開いて……! 開いてよ……!」
ガチャガチャと取っ手を振る。
泣き声みたいな音が喉から漏れる。
開かない。
全然動かない。
扉の中央に『天の扉』という札。
「……アタシの名前……? ふざけんな……やだよ……なんで……」
今までの人生で感じたどの恐怖とも違った。
感情がバラバラになって、胸の奥がぐちゃぐちゃになる。
足が震えて立っているのもやっと。
それでも“何か”をしないと死ぬ。
分かってる。
だからアタシは、泣きそうな息をなんとか押しとどめて歩き出した。
しゃがむと、膝がガクガクしていた。
床の黒ずみを指で触る。
「……血……じゃないよね……?」
本当に、声がひっくり返るくらい震えていた。
指先の粉を見て、少しだけ息が止まる。
「……灰……? これ、絶対なんかあった跡でしょ……」
もう嫌だ、こんな部屋にいたくない。
でも出口がない。
絶望の気配が首に絡みついた。
不安定なテーブルの上に立つと、足が震えて何度も体勢を崩しそうになった。
「……怖……落ちる……」
電球に触れた瞬間、ピリッと衝撃。
「いやっ!」
悲鳴が勝手に出た。
涙が滲んで視界が歪む。
(触るだけでこれって……この部屋、普通じゃない……本当に殺すつもり……?)
全身が冷えた。
壁に貼られた紙を剥がすと穴。
空気が流れてくる。
怖い。
でも覗くしかない。
顔を近づける。
暗闇の向こうから、冷たい空気が頬に触れる。
「……っ……なに、これ……」
誰かが覗き返してきそうで、一瞬で全身が粟立った。
ガタッと離れる。
「……無理……やばい……」
震えが止まらない。
一瞬痺れで倒れるようにテーブルに寄りかかるように倒れる。
そこで気付く……テーブルの裏
赤い文字が目に飛び込んだ。
『鬼は外』
その瞬間、心臓がぎゅっと握られた。
「……誰が……これ書いたの……?」
書いたのは誰?
何を伝えようとして?
考えようとしたけど、怖くて頭がまとまらない。
意を決してワイングラスをみる。
手に取ると、液体がゆっくり揺れ、赤黒い光が不気味にきらめいた。
「……飲めば……解放されるの……?」
声が震える。
涙が落ちそうになる。
「やだよ……死にたくない……っ」
喉が熱くなって、泣きそうになった。
でも泣いたら本当に終わりだと思った。
だからアタシは自分の頬を軽く叩いた。
手が震えすぎて、叩く力もなかったけど。
「……考えろ……天音……」
“鬼は外”。
穴。
流れる空気。
つながる。
「……外に……出せってこと……?」
震える脚で穴へ近づき、ワイングラスを傾ける。
もう怖くて足が棒みたい。
赤い液体が穴に吸い込まれていくのを見て――
パチン。
金属音。
扉が……開いた?
「っ……!」
喜びより先に、安心で膝が崩れた。
吐きそうなくらい息が苦しい。
しかし全身に痺れが回る
床に倒れ、視界が揺れ――
「……たす、け……」
誰に向ける言葉なのかも分からないまま意識が落ちた。
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病院。
白い天井。
普通の白。
看護師の声で、アタシはゆっくり息を吸った。
「篠崎さんが目を覚ました!!」
「よかった……」
医者が安堵の表情を見せる。
でもアタシの心臓はまだ落ち着かない。
震えが胸の奥に残っている。
「……あの、部屋……こわ……」
声が出た瞬間、自分がまだ泣きそうなのに気づいた。
でも医者は静かに言う。
「あなたは飲食店のトイレで発見されました。詳しく話とですね…………」
聞く耳を持てなかった。
だって、あの恐怖は夢で済むレベルじゃない。
――アタシは確かに“そこ”にいた。
その確信だけが、冷たく胸に残っていた。
ピィーーーーー!
隣のベッドの機器が鳴り、看護師が走る。
アタシはまた目を閉じた。
眠るのが怖いのに、体が勝手に沈んでいく。
暗闇の淵で、アタシは思った。
――あの扉の向こう、誰かいたよね……?
その疑問だけを抱えたまま、再び眠りの底へ落ちた。
考察とかしてほしくてこんな感じに書いてみた(*´ー`*)




