表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/22

第12話 『焼きそばパンと、昼休みの約束』



昼休み。

会社の屋上は、思いのほか静かだった。

空は青く、ビルの間を風が抜けていく。


自販機のコーヒー片手に、誠はいつものベンチに腰を下ろした。

ポケットには、購買で買った焼きそばパン。

「たまにはこういうのも悪くないか」と思いながら、包みを開ける。


その瞬間――


「……あ、同じのだ。」


振り返ると、有森ゆかりが立っていた。

彼女の手にも、まったく同じ焼きそばパン。

少し気まずそうに笑いながら、彼女は隣に腰を下ろした。


「偶然ですね。」

「いや、もしかして人気商品なのかも。」

「いえ、私、炭水化物×炭水化物が好きなんです。」


彼女がそう言って笑うと、

誠もつられて笑ってしまった。

それは、久しぶりに“昼の笑い”を感じた瞬間だった。


しばらくの沈黙のあと、ゆかりが小さく呟いた。

「……この間の雨の日、ありがとうございました。」

「いえ、こちらこそ。あのコーヒー、久しぶりにいい時間でした。」


「また……いつか、一緒にどうですか? 今度は、ちゃんと淹れたやつを。」


誠は少しだけ考えてから、

「いいですね。じゃあ、約束しましょう。――昼休みの続き、今度は夕方に。」


二人の間に、風が通り抜けた。

焼きそばパンのソースの香りが、どこか甘く漂っていた。





> 雨の日の記憶が、晴れた昼に少しずつ溶けていく。

焼きそばパンのソースの香りと、ひとつの約束。


――“ゆる飯”がつなぐ、人と人との距離。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ