金髪ツインテールの天才美少女幼馴染みに毎日振り回されてます。でも好きなので問題ありません。
気に入らない幼なじみが、今日もちょっとだけ好きになる
『ひらめき探偵エリカは毎日が新鮮』のスピンオフシリーズ。 オムニバス形式で、エリカと直央たちの日常を描いています。
※本編を見なくても、単体で楽しめるようになっています。
私、伊吹茉莉花は、隣の席で堂々と寝てるこいつが気に入らない。
三条真司。小学校からの腐れ縁で、いわゆる幼なじみってやつ。
昔から一緒にいすぎて、顔を合わせれば口喧嘩。
成長して私が女の子、こいつが男の子になっても、その関係はまったく変わらない。
いまだに平気で男友達みたいなノリで接してくるくせに、
こっちの胸は見るし、スカートの中を覗こうとするし――しっかりエロい目で見てくる。
そして今は授業中なのに、アホ面で爆睡中。
……なにもかもが、気に入らない。
「ほーら、ここテストに出るぞ。ちゃんと書いとけよー」
榊原先生、通称“いっちー”が黒板を指さす。
それでも真司は起きる気配すらない。
どうせまた、テスト前に泣きついてくるのが目に浮かぶ。
……そういうとこも、本当に気に入らない。
真司以外のクラス全員が、黙々とノートを取っている。
静かな教室に響くのは、隣から聞こえる寝息だけ。
……にしても、お腹、すいたな。
油断した瞬間だった。
グルルルルル~~~
女の子が授業中に出すにはあまりにも破壊力のある音が、私のお腹から鳴り響いた。
教室中がクスクスと笑いに包まれる。
ガサツとはいえ、私だって女の子だ。恥ずかしくて、思わず俯く。
きっと耳まで真っ赤になってる。
音をだしたのが、私だってのがバレたくないって気持ちが、余計に赤みを加速させる。
ちらっと横目で隣のバカを見ると――起きてた。
さっきまで寝てたはずの真司が、じっとこっちを見ている。
……見るなバカ。そういうとこが気に入らないのよ。
そう思っていたら、突然。
「すまん、腹減ってたから腹なっちまった」
は? なに言ってんのこいつ。
「おーい、真司。授業中だぞ。わざわざ腹減りアピールすんな」
「わりぃわりぃ、いっちー」
「誰が“いっちー”だ。まったく、お前もエリカも……学校では榊原先生だろ? 直央を見習え」
「ちょっと、いっちー! なんで私に飛び火してくるの!?」
「いや、エリカ。そこは“いっちー”じゃなくて“榊原先生”って言おう?」
榊原先生と幼馴染みたちの、そんなやり取りに、教室中がどっと笑いに包まれる。
……私も、つられて笑ってしまった。
授業が終わって、私たち幼なじみ4人はいつもの場所で昼ごはんを食べようと歩き出す。
そのとき、真司が小声で耳打ちしてきた。
「なあ、茉莉花」
「……なによ」
「やっぱお前も“女子”なんだな。腹鳴ったくらいで恥ずかしがって」
ばっと顔を上げると、
真司はニヤニヤしながらこっちを見ていた。
……ムカつく。
私はカッと頬を熱くしながら、真司の腹に肘鉄をくらわせた。
「ぐおっ!? な、なにすんだよ、このやろう!!」
「うるさいバカ!!」
――また、いつもの口喧嘩。でもそのあと、私は小さな声でつぶやいた。
「……ありがと」
不意をつかれたのか、真司は少し驚いたような顔をして、
それから、いつもの調子でにっと笑った。
「おう!」
ほんと、そういうとこも気に入らない。
デリカシーないし、サイテーだし。
……でもそんな真司を「異性として」好きな自分が、いちばん気に入らない。
作品を読んでいただき、ありがとうございます✨
もしこの物語や登場人物たちに少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ本編もご覧ください!
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