63, 信じさせて
「カーター、ごめんなさい。」
「あぁ~もうっ、泣かないで。本来ならアタシが赦しを乞う立場なのに。」
「なんでっ、私散々酷いこと」
「でも、アタシがアナタを殺してしまったことも事実よ。」
アイリッシュは泣きじゃくる私の手を握って言葉を続けた。
「理由なんてものはね、所詮言い訳にすぎないの。だから、殺されたと怒り、身の危険を心配して原因から遠ざかろうとするのは当然のことよ。」
「そうじゃなくてっ」
魔道具を生み出したのは私。
それを人々に与えたのも私。
勝手な信頼や常識の物差しに当てはめて、それを妄信して、結果、大事だった人を傷つけて、そんな人が打ち明けてくれようとしたのを止めさせて、そのせいでまた、彼が殺されかけてしまって。
全部私のせいなんだ。何も知らず被害者ぶって、優しい彼を拒絶して、なのにまたアイリッシュの優しさに甘えている。そんな自分に嫌気が差す。
「信じられなかった。ずっと、ずっと、行動で示してくれていたのに。信じ続けられなかった。あのときも、今も。」
「⋯。」
「そんな自分に酔ってた訳じゃないけど、でも、結果はそうで。」
「そうね。クロエが謝っているのは、信じられなかったことなのね。」
「⋯、ごめんなざい」
アイリッシュはまた何かを考えるように黙り込んだ。
あぁ、アイリッシュに嫌われちゃうのかな。嫌だな。そんなことを考えながら、クロエはその顔を見つめた。
「⋯⋯なら、これからは信じ続けてくれないかしら。」
「⋯え?」
「信じてもらえるように、アタシにもう一度チャンスをちょうだい。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。