追憶 その3
少しグロいかもしれないです。
『魔女を探せ!』
『殺せ!』
『捕まえろ!』
『どこだよクローナ、クッソ。』
(早く逃さないとクローナが死ぬ。それに気付いたのは流石よね。今更すぎて笑えないわ。)
『あの、カーター。』
『何だよ?!』
振り返った先に居たのは、昔クローナに助けられたあの女だった。最近は美女だと持て囃されて、常に男を侍らしているのに自分にも近づいてきて気持ち悪い。
『あなたのお母さんが倒れたって、病院に。』
『本当か、それ。』
『早く来て。』
自分はクローナと親、悩んだ末に親を取ってしまった。クローナはもう逃げている。そう信じることにして。
『母さん?母さん、何で』
『今よ。』
指定された部屋には、自らの血溜まりに倒れて亡くなっていた親が居て、説明を求めようとしたら後ろから男に拘束された。そして、その女に腕輪のようなものをつけられた。
『良かった。ちゃんとついた。ねえ、カーター、私に跪いて。』
『何をっ!?』
意思とは関係なく指示に従う体に、自分は戸惑った。
『どういうことだ。』
『自由に話して良いって言ったかしら?』
『⋯っ!⋯。』
言葉の自由も奪われて、とうとう反抗の手段が潰える。
『これからは私を褒め称えるか、私の質問に応えるかしか話しちゃ駄目よ。あと、自殺も自傷もしないでね。はぁ♡やっと私のモノになったわ、カーター。』
『⋯。』
『カーター、漆黒の魔女はどこ?』
『知らない。』
『嘘をつかないでよ。どこ?居そうな場所は?』
『⋯、い、家。』
言わないと決めたのに、口が勝手に動いてしまう。自分の体なのに、何一つとして自由が利かない。
『そう、じゃあその場所に案内して。』
体はやっぱり女の指示に従って、最初に回ろうとしていたところを1つずつ示していく。
『何で、あなたが、ウソよね、違うでしょ、カーター。』
『(クローナ、逃げて、逃げて。クローナ。)
その穢らわしい口で俺の名を呼ぶな。』
『ねぇ、漆黒の魔女、私はあなたを許さない。この国を滅ぼそうと画策して、みんなの心を操ったあなたを。カーターも、正義の気持ちを持っていたからあなたの強固な洗脳から解けたの。』
『洗脳?なにそれ、私、知らない。』
『(クローナ、早く逃げ)』
『カーター、苦しかったでしょう?怒りをぶつけて良いのよ。⋯、カーター、クローナを殺しなさい。』
『カーター、ねぇ、何で、何で!ずっと、信じていたのに。』
『(手が、勝手に、止まれ、止まれって、クロー)』
『私は、もう誰も信じない。』
泣きながらそう叫ぶ彼女を、俺の体が殺した。
彼女の首を、最愛の人の首を、自分の体が切り落とした。
転がった彼女の顔が、自分の方を向いて止まる。その瞳には、もう何も映っていない。あの夜見たクマはさらにひどくなっていた。
クローナの首を切り落とした感触が手に残っていて、それが余計に、これは事実だと言ってくるようで。
彼女の血が、カーターの手を、足を、ズボンを赤く染め上げる。
周りの人々の歓声が響き渡る中、カーターに許されたのはただ、涙を流すことだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。