36, 亡者の目覚め
「エド!」
「あ、兄貴!」
「下がれ、そんなんじゃこんなの消せるわけないだろうが。」
「はぁ?!」
店から飛び出て逆に弟を店の中に投げ飛ばす。弟がナイスインしたのを見届けアイリッシュは前を向いた。
ぁ⋯、口調があの頃に引っ張られてしまった。荒い口調は使いたくないのにな。
「邪さんこちらぁ〜。俺を狙えよ?」
癖は仕方ない。直せないものだ。
前方に邪猫が3匹。他にはこの辺りは居なさそうだ。
「久しぶりだからできるか分かんねぇが⋯。」
剣を包むように慎重に魔力を纏わせれば、簡易の殺邪剣?が出来上がる。
「取り敢えず死ね。」
襲いかかって来るのを躱し、横腹に剣を突き刺す。そのまま剣を振って邪猫を引き裂き、血飛沫のような穢れを浴びながらアイリッシュは次の邪猫へと走った。
今ので邪猫はアイリッシュを敵だと認識したのだろうか。目の色を変えてこちらへと走ってきた。
1匹、また1匹と倒せばその場には黒い水たまりができる。
「エド、ここは頼むわ。じいちゃんの剣はまだあったはずよ。」
先程から街のあちらこちらで悲鳴が聞こえることから、この現象は街中で起こっていると思って間違いない。今、この街で邪を殺せるのは自分くらいだ。間引くだけ間引かねば。
「あぁもう。クローナが居なくて良かった。さっきの口調、聞かれてたら絶対バレるもの。何で剣を持つと口調が変わっちゃうのかしら。」
彼は雑に頭を掻いた。そしてまた走り始める。
ずっと昔から愛して止まない一人の女性を思い出しながら。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今日は無事に2話投稿できました!!