31, 占い
「クロエ、アタシの運を占ってほしいのよ〜」
ある日アイリッシュが家の中に入るなりそう言った。
「珍しいですね。アイリッシュが占いなんて。」
「占いに頼りたい気分なのよねぇ。」
「本当に何があったんです?」
アイリッシュは昔から占いなどは一切信じないタイプだ。そんな彼が占いを頼るとは一体?
「朝からお気に入りのコップの持ち手が折れちゃって、気分を変えるために掃除をしようと思って家の前に出たらスライムの死体が落ちてるし、箒は昨日までちゃんと使えたのになぜか穂先が抜けすぎて使えなくなってたし(多分スライムが喰った)、裏庭で育ててた野菜が盗まれたのよ。」
「それは⋯、色々災難でしたね。」
「本当よ。」
「では、占いの準備をするので少し待っていてください。」
しかし、家の前にスライム、街の規模は小さいとはいえ外と中を区切る壁があるし、しっかりした憲兵も居た。それを魔物がすり抜けられるの?仮にそれをすり抜けて中に入ってこれたとしても、何故アイリッシュの家の前で死んでいた?街の住民が殺したとしても放置はしないだろう。
「あ、あった。久しぶりに使うな。」
クロエは占いに使う道具を作業部屋へ取りに行った。私は占いでは主にカードを使用する。たまに占い目当てで訪ねてくる人達は、水晶を使わないのかと聞いてくるが、そういう水晶などは本職の占い師が使ったほうが良いと思う。水晶などの鉱石は魔力を吸い上げるものがあるから、魔女の私には向かない。それに、そのせいで占いを失敗したら大変だし。何より、占いなどの世界の流れを読むのは精霊などの人智を超えたものに尋ねるものだと私は考えているからだ。
「お待たせしました。」
「ごめんなさいね、本当に。」
アイリッシュがいつものように寄ってこないのは私が仕事をするからだろうか。そういう線引きをしてくれるのは大変ありがたい。
「では、まず、あなたが占いたいのは未来に何か縁起の悪い出来事が起こったらどうすれば良いか、でよろしいでしょうか。」
「ええ。」
「わかりました。」
クロエはカードをくりながらアイリッシュに占いの説明をした。
「まずはあなたの現状を占っていきます。アイリッシュには、カードを複数枚選んでもらいます。その結果を私が読み、次の占いに進みますね。」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今日の2話目のお話は午後になるかもしれません。