30, 戻った平穏?
「クロエ、大好き♡」
アイリッシュのそのつぶやきにクロエは本日何度目かの『腰の力が抜けそう』を体験しそうになる。
(無理無理無理!アイリッシュはこんなに甘々なことを言う人でしたっけ?あれ?私なにをしたんだろう。)
「クロエのキョトンとしたお顔かわいい♡」
(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ?!)
あの思い返すと色々怖かったピクニックから1週間。
ガラザザ様が、
『新しい迷宮に遊びに行ってくる!僕がここにいるの場違い感がすごい!悪気が無いのはわかる。でも、しばらく帰らん!どうぞごゆっくり〜。』
と、この家を飛び出してから5日。
クロエはアイリッシュの甘い、でも容赦の無い猛攻?に赤面し続けていた。いや、赤面ならまだ生ぬるいだろう。アイリッシュの甘さに頭が真っ白になって立ち尽くして、それを体調が悪いのかもと心配したアイリッシュが私を抱きかかえてベットに連れて行ってくれて、それにまたキャパオーバーになって、現実では叫べないから頭の中で叫びまくるを繰り返していた。甘すぎる、アイリッシュが。
「クロエ?なにを考えているの?他の男のことじゃないでしょうねぇ?」
あなた以外の男の人とは?!というか、今世でアイリッシュ以外の男の人と交流することなんてガラザザ様か、仕事以外に無かったし、思い浮かぶ男の人なんてアイリッシュ以外に居ない⋯⋯。
「あの、そろそろ離してもらっても⋯。」
「イ〜ヤ♡」
ちなみに今私はアイリッシュに後ろから抱きしめられている状態だ。ほら、小さい子がお気に入りのぬいぐるみを抱きしめているアレです。あの日から遊びに来た時のアイリッシュのスキンシップの回数が絶対に増えているし、その間ずっと好き、愛してるとつぶやかれたら意識もしてしまうって。あぁ、私って図太いな。仮にもこの前までアイリッシュを警戒していたくせに。流されてさ、意識してさ、本当に最低だ。
「早くアタシに惚れてね、クロエ♡」
「⋯⋯⋯。」
前世、今世と恋愛なんてしなかった私にこれは難易度が高すぎる。こんなのを毎日されて意識しない人がいるの?え、私がチョロいだけ?世間はみんなこうなの?もしかしてこれが普通なの?
「本当に可愛いわねぇ。」
「ありがと、ございます⋯⋯。」
どうしていいのかわからないクロエは取り敢えず褒められたら『ありがとう』と、ちゃんと返事することを心に決めた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。