22, 過保護と保護者
「クロエ、遊びに来たわ!」
アイリッシュはいつものように家に入り、人影に声をかけた。
「君、どちら様?」
「⋯⋯!」
予想していた声とは違う、男の声に思わずアイリッシュは振り返る。そこには男がいた。
ほっそりとした体格で、背が高く、どこか妖艶なオーラを漂わせている。くすんだ黄色の長い髪。砂漠の方の民族なのだろうか、日に焼けたのとは違う色合いの褐色の肌。
ワインレッドの紐を結んだピアス。
服装はフリル付きの可愛いエプロン。エプロン?
「あ、アイリッシュ。おはようございます。どうされました?」
彼の後ろから包丁を持ったクロエが現れる。
「クロエ。誰この子。恋人かい?」
「ち、違いますよ。ほら、私を気にかけてくれてる人です。」
「あぁ。この人がアイリッシュ君か。僕はガラザザ。クロエのし、友人だ。」
☆☆☆
朝食の準備をしていたらアイリッシュが来た。
ガラザザ様にはアイリッシュのことは伝えてあるのでどうにかなるだろう。だが⋯。
「アイリッシュ、なぜ私をわざわざここに座らせるんです?」
「正当防衛よ!」
私はアイリッシュの膝に座らされていた。
防衛と言うが、私の戦力を期待されても前世の師匠に勝てないのだが。
「アイリッシュ。改めて紹介しますね。彼はガラザザ様、師匠の友人です。」
「大魔女様の?」
「ガラザザです。よろしくね。ちなみに僕も魔女だ。」
「⋯、なぜ今更ここにいらっしゃるか聞いても良いかしら?」
「いいよ。彼女の遺言でずっとこの家を探していたけど見つけられたのが昨日ってだけ。クロエを頼まれたからね。友人の最期の願いはちゃんと聞くものだ。」
「でも、一番辛いときに彼女は独りだったわ。」
アイリッシュ、怒ってる?
いつもようなさっぱりとした雰囲気が消え、聞いたことの無い低い声に、クロエは横に見えるアイリッシュの頭を見つめた。
「そもそも、大魔女様が生きていた頃に一度もこの家に来たことが無いのでしょ?本当に友人なの?」
アイリッシュはガラザザを睨む。そんなアイリッシュを見てガラザザは笑みを深めた。
「過保護な友人が居てくれてよかったねクロエ。保護者として嬉しいよ。さぁ、一旦外に出ようか、アイリッシュ君。2人で話してみたい。」
「奇遇ね。アタシもよ。」
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