21, 夜空
ガラザザはしばらく家に泊まることになった。2人は家まで歩いて帰る。2人は共通の知人のことで会話に花を咲かせた。
「ここが君の家か。立派だね。」
「ありがとうございます、ガラザザ様。きっと師匠も喜びます。」
「いいや、彼女は僕に褒められたなんて知ったら悪魔でも見たような顔をするさ。」
「そうなんですか?」
「弟子の前でどんな素振りをしていたか知らないが、僕の知る彼女はそんな人だよ。」
クロエは家の中の空き部屋の1つにガラザザを案内した。
「部屋の中の物は自由に使ってください。」
「ありがとうクロエ。」
「では、今晩はもう遅いので。お休みなさい。」
「お休み。」
一狩りした時の汗を流すためにクロエは一旦庭に出た。
空を見上げれば三日月が眩しく輝いていて、思わずほうっとため息をつく。
師匠が亡くなった日も、今日みたいな三日月が出ていた。
☆☆☆
『師匠、師匠、死なないで、師匠。』
『クロエ、泣かないの。せっかくの可愛いお顔が台無しよ?』
2度目の人生をクロエが穏やかに過ごせたのは間違いなく彼女のおかげだった。私なんかを可愛がって、本当の親のように惜しみない愛を注いでくれた。
『私はまだ、あなたに恩を返せていない。』
『充分返してもらっているよ。』
『それでも⋯』
『クロエ、自分を大切にしなさい。幸せになることを諦めないで。』
『師匠。』
クロエの瞳から次々と溢れ出す涙を師匠は愛おしそうにそっと拭う。クロエはその手を握りしめた。
『あなたを、⋯に、⋯⋯が⋯』
『師匠、やだ、ししょ』
『⋯⋯⋯』
『師匠?』
『⋯⋯⋯』
『⋯、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
その日、初めて大切な人を見送った。私はわけも分からず泣いて、泣いて、泣き続けた。
翌朝、師匠のベットのそばで倒れていた私を最初に見つけてくれたのもアイリッシュだった。
☆☆☆
挫けそうなときにいつもそばに居てくれたのはアイリッシュだった。
やっぱり、早く自立しないといけない。
アイリッシュに迷惑をかけられない。
彼から時間を奪ってはいけない。
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