20, 遺言が結んだ縁
「僕はここの森に住んでいた魔女に遺言をもらったんだ。」
「遺言、ですか?」
「あぁ。会わなくなって久しい悪友にもらった言伝が遺言だと気付いた時には、彼女は亡くなっていたがね。」
ガラザザの乾いた笑い声が辺りに木霊した。
「彼女、挨拶もなしになんて言ったと思う?」
「⋯。」
「弟子を頼む。だってよ?居場所も知らせずに何を頼むだよって思ったけど良かったよ。クロエがここに居てくれて。」
お師匠様と師匠が旧友だということに驚いたが、まさか師匠がそんなことを人に頼んでいたとは思わなかった。
「⋯、人と関わりすぎたく無かったので、街に行く気は無かったです。」
「そりゃあそうだ。でも、最近の子は大きな街が好きだって聞くし、弟子がもういない可能性のほうが大きいと思ってたんだよね。本当に良かった。クロエがここに居てくれて。」
「何回言うんですか?」
「それくらい感動しているんだよ。」
ガラザザはそう言うとまじまじと私を見下ろした。
「どうされました?」
「いや。改めて考えるとふしぎだなぁと。死んだ弟子の生まれ変わりが友人の弟子になってたなんてなぁと。」
「私は魔女になる運命なのでしょう。」
「ハハ、その運命を決めた存在に感謝だね。」
「今となってはそうですね。」
もし私が一般人だったら、師匠と会えなかったし、経緯はあまり純粋に喜べないが、お師匠様とも再会できなかった。
そして、アイリッシュにあんなに構ってもらえることもなかったし、お互いに話しかけることもなかっただろう。
そんなところまで考えて、夕方の光景を思い出した。
「お師匠様、気持ちの一部を消し去る、まではいかなくても封印できる魔法知りませんか?」
「こんな和やかな会話からどうしてそんなに物騒な魔法の話に飛躍したんだい?」
「いえ⋯。話すことではないので。」
「そう。話したくなったら言ってね?」
「えぇ。絶対無いでしょうけど。」
「あらら?まぁ、良いか。クロエ、1つ約束しよう。」
「?急にどうされましたお師匠様。」
「それ。」
ガラザザはピッとクロエを指さした。
「僕の弟子のクローナは死んだんだ。君は記憶を持っていても今世では僕と君は初対面。師匠は先代の森の魔女だろう?どうか僕のことはガラザザと呼んでくれ。」
「確かに。今世では私はおししょ、ガラザザ様には何も教わっていません。クローナは死にましたし私も呼称を改めるべきでしたね。」
「じゃあ、改めてよろしくね。クロエ。」
「はい。ガラザザ様」
2人は握手をした。そうしてクロエに初の魔女友?ができた。
それが少し奇妙な2人の再会だった。
☆☆☆おまけ☆☆☆
「やっぱり違和感がすごいです。慣れるまで呼びかた間違えたらすみませんおし、じゃなくてガラザザ様」
「言っといてあれだけど自分もうっかり間違えそうだよクローナ。」
「「あっ。」」
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