15, お土産
とある日、クロエはいつものように森に入り、魔獣を間引いて家に帰った。
「あ。」
「あら〜、クロエ、帰ってきたのね♡」
玄関の前にいたのは、この数日会っていなかったアイリッシュだった。
「いつからそこに?」
「いま来たところよ。」
「そうですか⋯、どうぞ中へ。」
扉を開き、アイリッシュに中に入ってもらう。本当に今来たのかは分からないが、外は夏に入りかけているから少し暑い。家の中で涼んでもらおう。
「仕事で王都に行ってきたの。」
「そうなんですね。」
アイリッシュは机にお土産をどんどん置いていく。さすが王都といったところか、この辺の地域では手に入れにくい食材や見たことのないものもあった。
アイリッシュは働き始めて王都に行くようになってからは行く度に丁寧にお土産を買ってきてくれる。本当に何でここまでしてくれるのだろう。
「これは最近王都にできた針子さんが刺繍したものを売っているお店で買ったものよ。お花のデザイン可愛いでしょ♪」
それはマトリカリアが刺繍された綺麗なハンカチだった。使われている布も私が好きな素材。大切に使わせてもらおう。
「これはリンゴに似ているけど味はブドウな不思議なフルーツで食虫花から採集できるらしくて⋯」
ちょっと待って、どこの食べ物だそれは。地味に興味ある。
「こっちは迷宮のお宝らしくて友人に譲ってもらったんだけど、目がキョロキョロ動く本人の自画像らしいわ。不気味だけど売れないし壊せないんだって。」
「え?」
「気持ち悪いけど持っておくと地味にいいことが起こりやすくなるらしいからあげるわ。」
「⋯。」
本当にこれは何なんだろう。というか誰!?
「なぜ⋯、私に?」
「アナタ迷宮のお宝よくもらっているじゃない。(配達している回数多めだから)迷宮品が好きなのだと思って。」
「あれは、鑑定依頼などを引き受けたから届くだけで、好きというわけでは⋯。」
「あら、そうなの?じゃあこれは持って帰りましょう。」
「へ?」
「これは最後まであげるか悩んだから。いらないならあげたくないし。」
アイリッシュもさすがに迷ったのか。
「で、最後にこれ。」
アイリッシュは白い箱を指さした。
「今日は王都で流行中のスイーツを持ってきてみたわ!アナタにも分けてあげる♡だから、一緒にお茶会をしましょう♡」
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