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1記憶喪失と幼馴染

僕はいつものように暮らす。


記憶が無いというのに。

この言葉から始まる日記を書き始めてしばらく経った。高校入学前の春、記憶の整理のために医者にやったほうがいいと言われて、始めたが今のところは思い出せない。

でも続けるしかない。いや、違う。最近は積極的に書いていきたいとさえ思っている。

多分理由は、「僕の思っていることはここにある!」と安心したいとか、この「いつも」を壊したくない、みたいなもんだととりあえず思っている。

まぁこれだって、そっちのほうがかっこいいとか、ただ思いついたから言ってるだけだと思うけど。

人の思いなんてコロコロ変わる。

ただ記憶してないだけで。

だからとりあえずなのだ。うんうん。

と、創造思考で自己暗示する。

これは僕を象徴するような能力だ。

逃げたいとき。立ち向かいたいとき。騙したいとき。いつだってこうやって自分を守っている。


4月25日 

題名【不思議】 ハンバーグ 豆腐の味噌汁

チェスってチェスだから、知恵吸うってことか? 変か てか、スマホでやっててわかったけど、チェスはやっぱり後手のほうが勝率がいいらしい。

まぁ、僕に限ってのことみたいだけど

早くランク上げたいな。

ピースが思想の根底にある僕にとっては、上に行きたいなんてイレギュラーなことなんだけどな。


5月26日

【ー時間目】ラーメン

化学でやった昇華の実験おもろかった

煙とかやっぱいい


5月27日

題名【どうかしろよ学校】

理科室の人体模型このボロ校舎にしては立派なの、

なんでだよ

他にかねつかえや


5月28日

題名【もどかしい】

帰り道、赤信号でめちゃ止まった

止のマークもいっぱい見た

  

5月29日

題名】 【   

ああああああああああ

つきた。完全につきた。

最近、楽しいとかそんなんばっかだし。

てか、放課後に教室で書くルーティンなんでだよ。

ああああああああああ

これいつものじゃなくね。決めたことじゃなくね?


5月30日

題名【ムスカリ】 昼パスタ 夜鍋キムチ

ミステリーとしてはまあまあ

ゾンビ出るとこは映像も込で良

犯人があの刑事だったの違いだった

明日は【悟ってる子】を見ようと思う

ふだん見ないラブストーリーだけど

たしか、ポスターが良かったんだよな

監督も有名だったし

だから…


そのとき背後に気配を感じた。それもゾッとする。

振り向くとその犯人はやはりいた。顔を日記にグーンと寄せそれからこっちをニヤリと見て

「そのまま続けて。ねぇ、ふふ」

最悪なところを見られた。

「ほら、『だから…』なに?」

整った顔なのに眉と口角が異常に上がっている。

「ち、違うって、そうじゃないって」

浮気がバレたときのような反応をしてしまった。

「おっと…私は何も言ってないですぜ、お兄さん。

ただそこに書いてある映画に凄く聞き覚えがあったもんで」

顔 言葉 振る舞い方 全てで馬鹿にしている幼馴染だったらしいやつがそこにはいた。

「フハハハハハ、あからさまに顔赤らめちゃってそういうところは記憶がなくなっても変わらないねー」

こいつは、身利側朝顔みりがわあさがお 幼馴染で記憶がなくなってからも色々と気にかけてくれる唯一の人間。そしてこいつはあの…

「なんて、冗談だよ。超赤面記憶喪失高校男児さん♪でも、嬉しいなー。やっぱり記憶はなくても気にしてくれるんだ。私の映画」

放課後の誰もいない教室、俺は絶賛売出中の女優と話していた。

「だから、違うって。身利側こそ今日は仕事ないのかよ。最近学校あんまり来てなかっただろ。」「チョーひっさびさのフリー」声を上げて目をキラキラさせている。「ほんとに大変なんだな。」急いで話を変えようとする。

「うん。でも、凄く楽しい。今やっと映画に出れるようになってきたんだから。ジャンジャン働かないと。」その前向きで真っ直ぐな目が突き刺さる。こいつはかけ離れた者になっていくんだろう。「というか、さっきの返しひどくない?普通来るんじゃないんですか?幼馴染の大役映画。」彼女はぷぅとした顔で、椅子に座る俺の顔を覗き込んだ。「まあ、俺記憶なくしてるので…」

「うわー出た出た。そういう見事なクズっぷりは、変わらないくせにね。苦し紛れな喪失アピール。」

「アピールじゃなくてほんとにしてんだよ」

「あーすうですたね。ご立派に日記つけちゃって。一人称も、『僕は…』なんて変えちゃって。それっぽいかよ!てか、もう一回みせろよ」

俺ががっちり両手で握りしめていた日記に手を伸ばしてきた。一時は取られたもののまた取り返し、立ち上がって抵抗する。「無理無理。

一人称だってあるだろうが、、学校では俺で、家では僕みたいな。ほら、お前だって俺のこと、大場留来って本名だけどあだ名でルークって呼ぶだろ」それでも手を伸ばしてきた。

キーンコーンカーンコーン

「5時です。校内にいる生徒は速やかに帰宅しましょう。」帰りを知らせる放送がなった。「くっ、タイミングが良かったな。」悔しいそうな顔で彼女はそう言って、バックを持った。「どっちみち見させるか!」それから、俺もバックの中に日記を入れ、外に出た。

「なんかすっごい、久しぶりじゃない?一緒に帰るの。」家が近いので必然的に帰る方向が一緒だった。通常ならここでお前と一緒に帰ってるのがバレたら、クラスのみんなに羨ましがられるからやめてくれなんて言って、走って帰るだろう。でも俺にはそれができなかった。「ねー?聞いてる?」坂を上がった右側の白い線上。交差点での信号機の影。公園でボールあそびをしている子どもたちの輪の中。至る所にそいつが見えた。例えるなら、黒いズボンと黒いパーカーを着て、顔が見えないくらい深くフードしている160cmの人。と言ってもシルエットだけが明確な。服自体は闇のようだが、しっかりとフードをしている人みたいなことはわかる。「どうかした?下向いて。てか、今の話聞いてた?」冷や汗が止まらない。

「だからね、今回の映画はただのラブストーリーじゃなくて…おいーおい?」ハッとした。緊急事態から、この声が戻してくれる。周り一面闇だらけになって怖くなっても彼女の声が救急車のサイレンみたいに現実を知らせてくれる。このとき確実に隣のやつが救いだった。「おーいー、ルーク。ルークさん?大場留来さんー?」

「あそこで…ベンチに座ってるおじいさんの横って誰も座ってないよね?」俺は告白することにした。足を止めて、ベンチの方を指さした。

「う、うん。え…怖っ、なんか見えてんの?」

「全身黒い、フード被ってる人型の。」実際の言語化に戸惑って、何が不確定なものか、わからなくなっていた。「それがベンチに座ってるってこと?」彼女は戸惑っているようだった。

「いや、そこら中に、そこの公園だけでも10以上、目線を何処かにやると必ずいる。足元にも。瞼の裏にも。」少し悩やみ、少し近づいてきた。

「なるほと。じゃあ、つまり…ぷぅ、ハハハハ」女優らしからなぬ、口をめいいっぱい上げてだい爆笑されている。ニンマリとした顔が近づいてくる。そうだった…

「なんですかー。それ、今更の中二病ですかー」

こいつは少し悩んだふりをして近づいて来たのだ。

「いや、ちがくて」

「まぁまぁわかりますぜ、ダンナ。 

俺の目がー、みたいなことですもんね。わかりますぜ。わかりますぜ。」バカにしている、これ以上ないほどにバカにしている。そうだった。こういうやつだった。

「ちがうって、、」

「うーんまず、まずね矛盾してるんすよ。160センチくらいとか言っといて、瞼の裏とか言っちゃってますからね。」変なモノマネを取り入れながらバカにしてくる。 

「こちとら俳優ですよ。演技すんならもっとうまくやんないと。いつも言ってたじゃん?あ、覚えてないか。」不謹慎にも記憶喪失をバカにしてくる。行くとこまで行ってしまった。

もうこのまま逃げ出そうと思った。足は幸い俺の方が速い。そう考えていたとき…「うわぁ!…」どこからともなく現れ、どこにでもいるそいつが近づいくる。「うわぁ…あ、」声も出せない。横で彼女はが何か言ってるが、脳のインプット機能破綻している。

遂にそいつは眼の前に立った。黒ずくめの少年?

「そいつって…」

そいつはズボンの右ポケットに手を伸ばした。そうすると溶けるように弾けるように消えていった。 

「次はポケットがどうかしたんですか?まさか、異空間につながってる…みたいなぁw」彼女はそう言うと俺の右ポケットに手を入れた。「あー私の手がー。なんて、あれ?」中には一枚のくしゃくしゃになっている白紙があった。 

       『殺人者へ』

それは赤く汚く子供のような字で大きく書かれていた。

「うわぁ…手の込んだ事しますねぇ…」

「違う。俺こんなの知らないし」

「またまた…」

「マジだって!」

「はぁ…じゃあ探偵のとこ行っちゃいますか!」

「はぁ?そんな知り合いいたのか?」

「んーーいたんです。いたんデスヨ!」

誰のマネだよ。このときは気づいていなかったが、いや、、気づいていたから、可笑しかった。誰かによって仕込まれたような、そんな兆しがしていたから。

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