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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第十章

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99 でかいイベント



 ヴァルール統治機関が主催するイベント『大魔境探索』についての告知が行われた。


 その内容は魔境の奥地に向かい、どのような状況になっているかを確認するというもの。


 かつて魔人が住んでいた場所を捜索することも大々的に発表された。


「魔人が見つからないから、以前住んでいた場所を探すってこと?」

「俺に聞かれてもなあ。告知されたことしか知らん」


 ドラクーン土産を受け取りながら、レオンは答えた。


「魔人が住んでいた場所ってことに興味を引かれて、参加するやつはいるだろーな。まあ、俺らには関係ない。どうせ銀行を休めないだろ?」

「僕は大丈夫。参加できる」

「なんでだよ!」

「イベントには銀行の顧客も参加する。自分も参加することで顧客のニーズを読み解き、営業や銀行業務に活かすということで出張許可を取った」

「出張許可を出した上司が怒られるんじゃないか?」


 レオンは呆れた表情で尋ねた。


「本店長からも激励された」

「銀行員を危険な魔物だらけの場所に送り出す本店長なのか。でもよお、リオンは支店勤務だろう?」

「竜王から僕を担当にしてほしいって話がきた。これからはルイール王族担当補佐とドラクーン王族担当補佐を兼任してほしいって本店長に言われたついでに話したから」

「モテモテだなあ。兼任の了承と引き換えで交渉したのか?」

「僕からも話があると言っただけだよ。兄様への営業はここまでだ。イベントに申し込んで来る」

「営業というより、俺の持つ情報をもらいに来ているだけじゃねーか」


 リオンはレオンを別れると、統治宮に来たついでにイベントの申し込みをした。


「応募者はかなり多い? 魔物討伐者のランクが高い者が優先されてしまう?」


 リオンはイベントの受付係に尋ねた。


「それは大丈夫です。現時点において、参加者数の上限はありません。魔物討伐者のランクによる選別もありません」

「よかった」


 銀行員としての勤務を優先しているせいで、リオンの魔物討伐者のランクは低いままだった。


「ですが、複数のコースがあります。安全は一切保証できませんので、全て自己責任で選んでいただくしかありません。移動用の魔物を自分で用意できるかどうかも重要です」

「そうだね」

「ヴァルール以外の国からの参加者もいるので、相当な数になりそうです」

「千人以上?」

「とっくに超えてます。このペースだと、一万人以上になるかもしれません」


 相当大きなイベントになりそうだとリオンは思った。





 そして、イベント当日。


 集合場所に指定された飛行場に着いたリオンは、早速顔見知りと遭遇した。


「フリューゲル!」

「リオン!」

「飛竜持ちでの参加ということは、アーネストと一緒か?」

「ジスとパーティーを組んで参加する」

「アーネストは? 参加に反対されたのか?」

「それが全然。別にいいって」


 リオンは竜王の招待でドラクーンへ行き、帰ってきたあと、イベントへ参加する出張のことをアーネストに話した。


 アーネストは反対するような言動は一切見せず、魔法が使えないことを自覚し、身の安全に注意するよう言っただけだった。


「よかったな。だが、意外だ」

「まあね。でも、レイディン、セレスティーナ、エアリス、ミント、キティも参加する。僕だけダメとは言えないよ」

「なんだと?」


 フリューゲルは空耳ではないかと思った。


「ミントやキティも?」

「魔人が住んでいた場所に興味があるらしい」


 魔人がどんなものを食べているのか、どんな食材が入手できるかについて興味があるともいう。


「いつも以上に奥へ進むつもりなのは間違いない。一般人にとってはかなりの危険度ではないか?」

「それはある。でも、大勢が参加するしかえって安全かもしれない。レイディンとセレスティーナが護衛としてついているけれど、念のためにアーネストの知り合いにも頼むみたいだ」

「なるほど。レイディンとセレスティーナの無茶を止めるためか」

「たぶんね」


 レイディンやセレスティーナにイベントへ参加しないよう言っても聞かない。


 そこでアーネストは参加を許す代わりに、ミントとキティの護衛を務めることを条件にした。


 戦闘力が皆無の二人を守る以上、無茶な行動はできない。


 結局のところ、レイディンやセレスティーナの安全にもつながるという考え方だった。


「エアリスは採集目的で参加する。ミントやキティはそれを手伝う感じだ」

「参加者の目的は多種多様だろうな」


 フリューゲルは周囲を見回した。


「一緒にいないな? 別ルートでの参加か?」

「レイディンたちは歩行ルートで参加する」


 移動方法は陸路と空路に分かれ、歩行や移動用の生物を所持しているかなどによっても分けられている。


 飛行場に集まるのは飛竜に乗って移動ができる参加者だけだった。


「歩行ルートが一番安全だと言われている。人数が一番多くて移動距離も短くなるはずだ」

「そうだね。飛竜での参加者が一番奥まで行くとは思う。魔物との遭遇率が高いかもしれない」

「気をつけろ」

「フリューゲルも」


 リオンは竜騎士や竜族の魔物討伐者とパーティーを組んで参加するフリューゲルと別れた。


 その後も顔見知りがいるたびに挨拶を繰り返し、安全と武運を祈り合った。


「遅くなった」


 ようやくジスが飛行場に姿をあらわした。


「レイディンたちの方はどうだった?」

「問題なさそうだ」


 ジスは歩行ルートで参加するレイディン、セレスティーナ、エアリス、ミント、キティの様子を確認していた。


「アーネストの知り合いはダークエルフだった。かなりの実力者に見えた」

「ダークエルフに知り合いがいるのか。今度、紹介してもらいたい」

「一応、家と店の方も見てきた」


 家の留守番はポロン、魔法薬店の留守番はヴィラージュから来たニンウィが務めることになった。


「休憩室はガラガラだった。このイベントに参加しているからだろう」

「魔物討伐者の知り合いは全員参加するって聞いた」

「正直、ここまで大きなイベントになるとは思わなかったよ」


 魔人は謎が多い種族。


 その魔人が住んでいた場所へ向かうという発表が人々を惹きつけ、尋常ではないほどの参加者数になったのは間違いがなかった。


「調査目的とはいえ、魔物を倒しながら進んでいくのは魔物討伐と同じだ。規模だけで言えば、竜討伐に行くように思えてしまうかな」

「確かに。でも、期限は一週間だ。どこまで奥に行けるか怪しい」


 往復だけに三日ずつの移動日。予備日が一日という割り振りだろうとリオンは計算していた。


「初回だけに、参加者数やどの程度進めるのかの調査も同時にする気だろう」

「通信用の魔法具が配布されていた」


 リオンはジスに通信用の魔法具を渡した。


「これか。前に参加した魔物討伐の時にも使用されていた」


 通達専用。返答は送れないため、会話はできない。現在位置の判別もできない。貸し出し品だけに紛失や破損に注意。魔力は各自補充。イベント解散後に回収。


「使い回しってことか」

「魔物討伐よりも参加者の数が多い。通信用の魔法具を用意するだけでも費用がかかる。ヴァルールは間違いなくこのイベントに力をいれている」

「これより飛竜で参加する者への説明を行う」


 時間になると、通信機から声が響いた。


「今回のイベントは参加者が多く、移動方法及びルートで名称を分けている。ここに集まっている者は、移動用の飛竜が必須になる飛竜団だ。再度、飛竜の所持を確認するように」


 配布した通信機の番号で部隊を分け、移動は二十人ずつの小隊で行う。


 小隊長は最も少ない番号で、副隊長は最も多い番号とすることが伝えられた。


「私とリオンの番号は連番かな? 一緒の小隊でないと困る」

「大丈夫。通信機をもらう時に、パーティーで参加する者は連番にするよう言われた」


 そして。


「僕は四十一番だ。二十人ごとってことは、小隊長?」

「そうなる。第一部隊の第三小隊だ。何なら私の通信機と交換するが、別に問題ないだろう?」

「僕はいい。でも、魔境について何も知らない者が小隊長になる場合もあるってことだよね?」

「ある程度固まって移動するための隊分けだ。はぐれたら自己責任だろう」

「魔人の住んでいた場所へ行けるかな? それこそ魔人が誘導してくれないと辿り着けない気がする」

「期待しない方がいい。捜索しながら奥へ進むだけかもしれない」

「第一部隊は離発着場に向かえ」


 通信機から声が聞こえた。


「各小隊長は点呼。全員揃ったら発着。誘導員の飛竜は黒、赤いローブを来た調査員が同乗している。誘導員の飛竜に続いて飛行しながら西へ向かえ」

「行こう!」


 リオンとジスは離発着場に向かった。


 月曜日は0時、水曜日と金曜日は夕方に予約更新してみようと思います。

 よろしくお願いいたします。

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