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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第九章

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94 ドラクーンへ



 リオンとフリューゲルが話し合った結果、アーネストの家に集まるメンバーでドラクーンに行くことが決定した。


 竜族は角がない者や他種族に対して冷たく厳しいため、リオンは角つきヘッドバンドをつけることを提案した。


 竜族かどうかはともかくとして、角さえあれば軽視されにくいということを前世のゲーム知識として知っていたからこその案で、その方法は大成功。


 軽視されないだけでなく、角がある珍しい一行として大注目された。


「別の意味ではやや困る」

「質問攻めだね」


 どこから来たのか、名前は、職業はなどとあれこれ質問する人々に囲まれ、用事があると言って断っても次々と声をかけられてしまう状態だった。


「意外と単純ですのね」


 セレスティーナはそう言いつつも、竜族にモテモテの状態に悪い気はしなかった。


「ミントは異性に興味はありませんの?」

「ご飯への興味の方が比べものにならないほど上です!」

「私は素材の方が気になって仕方がない」

「お菓子にゃ!」

「ミントもエアリスもキティも、いつも通りだね」


 レイディンが苦笑した。


「ブレないのは良いことですわ」

「あれが竜王城だ」


 崖の上にそびえ立つの城を見ながらフリューゲルが言った。


「全員を連れて行くわけにはいかない。リオンと護衛の一人だけにしてほしい」

「じゃあ」


 リオンは全員を見渡した。


「アーネストに同行してほしい」


 自分が指名されるとは思っていなかったアーネストは驚いた。


「私でいいのか? ジスかレイディンを選ぶと思った」

「アーネストがいい。僕の保護者だから」


 リオンはそう言うとジスに顔を向けた。


「ジスは自力でなんとかしそうな気がする。魔法も魔法具も豊富だろうから」


 ジスは不敵な笑みを浮かべた。


「悪くない案だね」

「えー、狡い!」


 レイディンが即座に文句をつけた。


「僕も行きたい! 魔法具を貸して!」

「王都内を歩き回るのも安全とは言えない。ミントは食材、エアリスは素材、キティはお菓子に夢中になって周囲への警戒を怠る。レイディンとセレスティーナがついていないと大変だ」

「僕たちの同行に反対しなかったのはそのためか」

「警護役でしたのね」


 レイディンもセレスティーナも飛竜に乗ってドラクーンへ行くことばかり考えており、深くは考えていなかった。


「本人たちが注意してくれるのが一番いい。だけど、竜族には飛竜を使役できる者が多くいる。飛竜に乗って連れ去られてしまうと困るから、絶対に気をつけて」

「よほど遠くでなければ、居場所を調べることはできるけれどね」


 万が一に備え、居場所がわかる魔法具をミント、キティ、セレスティーナの三人は身につけていた。


「じゃあ、城へ行ってくる。とはいっても、竜王に会えるかどうかわからないけれど」


 リオンはアーネスト、フリューゲルと共に竜王場へ続く坂道を歩き出した。





 門番はフリューゲルのことを知っており、問題なく通ることができた。


 途中の検問についても、フリューゲルが一緒ということで身分証の提示さえ求められなかった。


 しかし、竜王城の待合室に通されたあと、困り切った様子の竜族がやって来た。


「帰れ」


 待合室に来たのは竜騎士団長を務めるフリューゲルの父親ヘルムートだった。


「王は会わない。立場を忘れたのか?」

「俺は甥だ。伯父に会いに来ただけだ」

「無理だ。余計に会わない」

「では、陳情に来たと伝えてほしい。ヴァルールへの輸送業に従事する竜族が困っている」

「何を困っている?」

「竜貨幣の価値が低い。そのせいで報酬が少なくなってしまっている」

「儲けが少ないことを竜王になんとかしてほしいというのか? あまりにも勝手で無礼ではないか!」

「そうではない。俺はただ困っている竜族たちのことを考えてほしいだけだ。国民を守るのは竜王の役目だろう?」

「竜王は国民も国も守っている。輸送業者の陳情ならギルドを通せ。お前が直接来ても意味がない。矢面に立つことになるばかりか、かえって王が耳を傾けなくなる可能性もあるのだぞ?」

「それほどまでに王は俺を避けるのか?」

「当然だ! 自分の角をよく見ろ!」

「お話中のところすみません」


 リオンが口を挟んだ。


「初めまして。僕はヴァルールの銀行に勤めているリオンです」


 リオンは名刺を差し出した。


「今日はヴァルールで困っている竜族たちの力になりたくて、竜王への謁見を申し込みに来ました。謁見可能かどうか、確認していただけませんか?」


 名刺を受け取ったヘルムートはリオン見たあと、アーネストへ視線を変えた。


「なぜ、アーネスト様がここに?」


 ヘルムートはアーネストのことを知っていた。


「リオンは私の養い子だ。心配だったため、保護者として同行した」


 ヘルムートは仰天した。


「養い子? 猫族の子どもを引き取ったと?」

「そうだ」

「人間なら人間の子どもを引き取るべきでは?」

「種族は関係ない。リオンも同じだ。困っている竜族の力になりたいと思って来た。竜王に取り次いでくれないか?」


 ヘルムートはため息をついた。


「王次第としか言えない」

「無理なら諦める。ところで、師匠からもらった飛竜でドラクーンまで来た。最近、師匠はドラクーンに来ただろうか?」

「来ていない。たぶんだが」


 ヘルムートは嫌な予感がした。


「師匠は新しい飛竜を調達するはずだ。私からドラクーン以外の場所で調達するよう伝えることもできる。竜王次第だが」

「……王は興味を示すだろう。しばし待ってほしい」


 ヘルムートは待合室を出て行った。


「アーネストを連れてきて大正解だった気がする」

「俺もそう思った」


 フリューゲルも父親の態度を見て、謁見できると感じた。


「父と顔見知りのようだが?」

「魔法の修練をするため、師匠とドラクーンの飛竜生息地に来たことがある」

「飛竜で魔法の修練をするということか? ほとんど効かない気がするが?」


 飛竜は魔法耐性が強く、魔導士にとっては非常に厄介な魔物だった。


「魔力が減ってきたらどうする? 飛竜から逃げるだけでも難しいと思うが?」

「大丈夫だ。師匠も私も飛竜なら一撃で倒せる」


 フリューゲルは絶句した。


「一撃で倒せる魔物を的にして練習するなら、飛竜でなくてもいい気がするけれど?」


 リオンはそう思った。


「私は武器で倒す方だ。魔法では倒せない。だからこそ、魔法の的にするのに丁度いいと判断された」

「ああ、そうことか」


 リオンはアーネストが持つ魔剣のことを思い出した。


「ヘルムートは角のことを言わなかった。だが、私やリオンが人間や猫族であることをわかっている。ヘッドバンドは外しておいた方がいいだろう」

「そうだね」


 アーネストとリオンは角つきヘッドバンドを外した。


「僕には猫耳がある。角があるのは変なのに、違和感を持つ竜族がいないのが不思議だ」

「そう言えばそうだな?」

「言われるまで気づかなかった」


 フリューゲルが答えた。


「たぶん、他の竜族も同じだろう。角があればいいと思うだけだ」

「不思議な国だね。ドラクーンは」

「角は竜族の種族特性だ。それだけ重視されているということだろう」


 やがてヘルムートが戻り、謁見の許可が出たことを告げた。


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