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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第九章

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84 偶然の再会



 支店勤務のリオンは本店に呼び出された。


「お前に会いたいそうだ」

「ライト・エルフ?」

「ヴァルールの統治関係者だ。有能だという噂を聞いて、会いたいと言ってきた」

「えっ!」

「絶対に怒らせるなよ? ヴァルールにいられなくなったら困るだろう?」


 リオンは緊張した。


 確かに困る……でも、引き抜きの話だったら統治関係者になれるかも?


 そんな風に思いながら、リオンは応接室へ向かった。


「失礼します」


 ドアをノックしてから応接室に入ると、そこには猫族の男性がいた。


「あ」

「待て! 何も言うなよ!」


 猫族の男性はすぐに叫ぶと腕輪に触れた。


「防音装置を使った。話していい」

「兄様!」

「弟じゃん!」


 応接室にいたのは、狩りに出かけたまま行方不明になっていたリオンの兄だった。


「何でヴァルールにいるんだよ!」

「兄様こそどうしてここに?」


 突然の再会に二人は驚いた。


「死んだか村を出ていったかだとは思っていたけれど」


 基本的に猫族が行方不明になるのは狩りに行った時。


 強い魔物に遭遇したか、その状況を利用して村を出たかがほとんど。


 数日後に帰り道に迷っただけで戻って来る者もいるが、リオンの兄はずっと戻ってこなかった。


「あー、いや、まあ、ほぼ両方だなあ」

「死んでいない。目の前にいるよ?」

「隣に座れ。防音にしているとはいえ、内密の話だしな」

「わかった」


 リオンは兄が座るソファの隣に座った。


「取りあえず、お前の話を先に聞く」

「断る。兄様が先だ。でないと、兄様に会ったと同僚に言いふらす。姉様にも話すよ?」

「優秀な弟を持つとマジで苦労するわ!」


 あっさりと兄は負けを認めた。


「狩りに行ったのは知っているよな?」

「知っている」

「全然獲物がいなくて、仕方がないから森へ行った」


 強い魔物に遭遇してしまい、死にそうなところを魔物討伐者に助けられた。


 恩返しをしろと言われてヴァルールに連れてこられ、働くことになったことが説明された。


「突然魔境の中にある都市に連れて来られてもさあ……周囲には強い魔物がウヨウヨいるし、村に帰るにもどこにあるのかさっぱりだし。まあ、ここで生きていくしかないって思ったわけだ」

「なるほど」

「で、お前は?」


 今度はリオンの番。


 比較的近くにあった人間の都市に新しい領主アーネストが来て、人間と猫族とで一緒に仲良く暮らせればいいと考えた。

 

 猫族は人間の都市の側に移住。人間が作った魔ウサギの放牧地帯を管理する代わり、報酬として魔ウサギをもらえるようになった。


 食料問題が解決。現在はウサギ族やエルフの一部も合流、お金の報酬や必要なものを手にいれることができるような体制を整えながら、力を合わせて暮らしている。


 リオンとキティは領主の養い子になって領都で暮らしていたものの、知り合った行商人の紹介でヴァルールに来くることになった。


 仕事と勉強をこなしながら、いずれ独り立ちできる道を模索中であることが説明された。


「かなり優秀な猫少年とは聞いていたけれど、まさか弟とはなあ」

「リオンだよ。アーネストが名前をくれた」

「俺はレオンだ。名前をもらった」


 似てる。猫族だから?


 そっくりだなあ。まあ、兄弟だしいっか。


 リオンとレオンはそう思った。


「俺に似てなかなかのイケメンになったじゃん? 銀行で働いて、成人の証である名前も貰って、いつの間にか立派になったなあ」

「兄様も名前をもらえてよかった」


 猫族は立派に成人すると、その証として名前をつけてもらえる。


 レオンは素行面で問題ありとみなされていた。


 狩りができるという意味においては成人、しかし立派ではないということで名前がなかった。


「成人していないのに名前をもらえるなんて幸運だなあ。キティも」

「お菓子屋をしている。頑張っているよ」

「そうか。じゃあ、重要なことを言う。俺と会ったことは秘密だ。兄弟であることも秘密だ。何もなかったと思え。そして、ヴァルールからすぐにでも出ていけ。姉様のところへ帰った方がいい。人間と仲良く暮らしているらしいじゃん? お前とキティもそうすればいい」

「理由が知りたい」

「目をつけられているからだよ」


 レオンは即答した。


「有能な者にはずっとヴァルールにいてほしい。だから、俺が声をかけにきた。わかるよな?」

「わかる」

「ヴァルールの統治関係者は強い守秘義務を課せられる。魔法契約だ。破るとどうなるか知っているか?」

「呪われて死ぬと聞いた」

「正解。俺も魔法契約をしている。だから、守秘義務に縛られる。お前やキティもそうなったら嫌だろう?」

「なるほど」


 リオンは頷いた。


「でも、それを話して大丈夫? 呪われない?」

「俺は普通の魔法契約じゃない。ヴァルールとの魔法契約じゃなくて、恩人との魔法契約だからな」

「もしかして……隷属している?」

「普通に働いているだけだっつーの。給与だってもらっている」


 レオンは答えた。


「恩人は雇い主として守ってくれる。ヴァルールの統治関係者でも、俺にはうるさく言わない。恩人を怒らせたくないからな。身の安全を守るためには、その方がいいんだよ」

「強制的に働かされているわけじゃないってこと?」

「仕事を辞めたいって言うことはできる。でも、好きにしろと言われるかどうかはわからない。まあ、ここの暮らしはいい。衣食住には不自由していないからな」

「高給取り?」

「金の使い道がよくわからん」

「アクセサリーをかなりつけているけれど?」

「これは護身用にもらった。ヴァルールのことを知りたがる者は大勢いるからな。その対策だ」


 魔法契約の守秘義務を破れば呪われて死ぬため、統治関係者は秘密を死守する。


 そのような者から情報を入手することはできないため、魔法契約をしていない者で情報を知っていそうな者が狙われる。


 レオンは恩人によって連れて来られただけの者で、魔法契約をしていなかった。


 そのことを知られて誘拐されたことがあり、二度と誘拐されないように恩人と魔法契約をしたことが説明された。


「弟にヴァルールと魔法契約しないかなんて言えねーよ。それにお前やキティを誘拐されて、人質に取られたら俺が困る。だから、ヴァルールにはいない方がいいんだよ!」

「兄様……」


 自分たちの安全のことを考えてくれているのだとリオンは理解した。


「猫族は素早い。逃げる能力は高いが、魔法や魔法具を使われると逃げきれない。それは一度誘拐された俺がよーくわかっている」

「なるほど」


 確かに魔法を使われると対処できないかもしれないと僕は思った。


「でも、他人のふりをすればいい気もする。それなら人質にしようなんて思わないはずだ」

「そうしよう!」


 レオンは名案だと思った。


「まあ、銀行に就職したばかりで使いものにならないって言っておくわ」

「それは無理だ。どう考えても僕は有能だし、周囲にも認められている。兄様が嘘をついていると思われるけれど、大丈夫?」

「昔から腹立つほど頭良いからなあ」


 レオンはため息をついた。


「言っておくが、銀行員も結構狙われるんだぞ? 王族担当なら余計だ」

「まだ補佐だ。挨拶程度のことしかしていない」

「そもそも銀行に就職できることがエリートなんだよ!」


 ヴァルールに銀行は一つしかない。

 

 ヴァルールが直接運営しているわけではないが、ヴァルールに不可欠という意味では公営同然だった。


「銀行も出世すると魔法契約になるとは聞いた。僕はまだ就職したばかりで、重要な仕事をしていないから魔法契約じゃないけれど」

「そうなのか。まあ、銀行のことはよく知らない。俺には関係ないしな」

「そうなんだ?」

「俺だって大したことを知らない。誘拐されなければ、魔法契約なんかしなかったよ。雑用をこなすだけだしな?」

「兄様の仕事って勧誘?」

「転職する気があるなら、どんな仕事をしたいのか聞いてくるよう言われただけだ」

「なるほど。ところで、兄様の恩人はヴァルール統治関係者だよね?」

「俺も魔法契約をしているのを忘れたのか? 余計なことは聞くな。深入りもするな。とにかく、俺のことは知らないと言え。転職話は断った。それでいいはずだ」


 リオンはレオンを植えから下までじっくりと見た。


「もし転職を勧めるノルマがあるなら、その格好はやめた方がいい。信用されにくい気がする」

「関係ない。断りたければ断ればいいし、ノルマもない」

「僕はそれなりに営業ノルマがあるよ?」

「銀行員は大変だなあ。じゃ、忠告したからな? 他人のふり、早くヴァルールを出て行け。この二つを忘れるなよ!」


 レオンはそう言うと部屋を出ていった。


 ……兄様と会えるなんて。無事で良かった。


 偶然の再会にリオンは喜び、安堵した。


 そして、


 これはチャンスだ。


 リオンは次にどうするかを考えた。


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