77 みんなでパーティー
休日。
みんなでパーティーをすることになった。
それは屋敷ではしゃぐということではない。
魔物討伐に行くということ。
メンバーはアーネスト、リオン、キティ、ミント、エアリス、レイディン、セレスティーナ、ジス。
ポロンはお留守番。
「八人か。結構多いね」
レイディンが言った。
「魔物討伐組と見学組に分かれるのがいいとは思う。僕と兄上とセレスティーナは魔物討伐組以外ありえない。ジスもいてほしいけれど、ミントとキティをいざって時は転移魔法で連れて退避できるよう見学組がいいかな。リオンとエアリスは戦闘に参加したい?」
「盾役は? 近接攻撃は僕だけのような気がする。近づく前に魔法で片付ける感じ? だったら弓を使うけれど」
「兄上次第かな?」
「あ、魔剣か」
アーネストは魔法ばかりを使っている印象があったが、実は剣も使うということをリオンは思い出した。
「私が盾役をする気だった」
アーネストが答えた。
「重装備?」」
「そうだ。本当は極めて重要な時しか装備しないのだが、レイディンのためなら仕方がない」
「さすが僕だ! 愛されている!」
「皆には言っておく。私の重装備はレイディンの魔法で死なないようにするための装備だ。他の者は近接攻撃をしないように。巻き添えになったら大変だ」
リオンは想像した。
後方からレイディンの放った魔法が発動、アーネストがモンスターと一緒に炎に包まれる光景を。
どう考えても魔物よりレイディンの方が危険だ……。
リオンはそう感じた。
「大丈夫! 昔とは違う。しっかり威力を抑えるし、範囲指定も注意する!」
「ぜひ、そうしてほしい。無法地帯であれば何をしてもいいというわけではない。自然破壊も環境破壊も許されない」
「わかっているって」
「近接攻撃をするリオンが一番危ない。私にも魔物にも近づかないように」
「わかった。僕も弓を使う時は気を付ける」
爆弾弓の威力でアーネストを吹き飛ばさないようにするという意味で。
「装備があるからといって、私が巻き添えになるような魔法は使わないように。複数の魔物が来た場合は臨機応変だ。セレスティーナも注意してほしい。ミントやキティもいる。防御優先だ」
「わかりましたわ。レイディン様のようにいきなり魔法をぶっ放すようなことはしませんことよ!」
「へえ。僕はセレスティーナが巨大な氷をぶっ放したのを見た記憶があるけれどね?」
「私の記憶にはありませんわ」
「ずるい!」
「ずるいのはレイディン様ですわ!」
「各自装備を確認するように」
「お弁当あり、飲み物あり、薬あり、大丈夫です!」
「お菓子もあるにゃ!」
ピクニック感もある予定が始まった。
ヴァルール近辺の魔物は魔物討伐組にとって強いとは言えなかった。
鎧装備に身を固めたアーネストの判断も行動も非常に素早い。
魔物が近づいてくるとみなすと容赦なく突撃。魔法で威力を上げた剣で秒殺。
レイディンとセレスティーナは状況を見ながら、別の魔物に魔法を撃って仕留める。
リオンは爆弾弓、エアリスは風魔法。
動く的を狙っての射撃と同じだった。
「なんか……みんな、強いですね」
ヴァルールの周囲にはヴィラージュよりも強い魔物がウヨウヨしており、多くの魔物討伐者が戦っているとミントは聞いていた。
だが、魔物がよく見えるほど近づく前に、アーネストたちが簡単に倒してしまう。
「強いにゃ」
キティも驚いていた。
「この辺なら魔物が来てもすぐにわかる。早めの昼食にしよう」
アーネストは地形を見て休憩場所に丁度良いと判断した。
「安全に思えるかもしれないが、それは違う。魔物と戦い、周囲を警戒している者がいるからだ。何もしなくても安全というのとは違うということを忘れないように」
「食べ物の匂いにつられて魔物が来るかもしれない。警戒は続ける」
リオンが答えた。
「キティも少しはそういったことを気にして。猫族としての勉強だ」
「わかったにゃ。でも、アーネストがいれば安心にゃ!」
「兄上がいれば安心だよ! 王国もね!」
「そうですわね!」
レイディンとセレスティーナが即座に呼応した。
「王国が安泰なのは、多くの人々が力を合わせて国を守っているからだ」
「わかっているよ」
「ヴァルールがあるからでもありますわ。魔境の中で魔物が減れば、外側の方に溢れにくくなりますものね」
魔物はエサとなるものを求めて徘徊する。
魔境の中で魔物を倒せば、魔物が少ない地域が生まれる。
すると、魔物が多い地域から住処を求める魔物が流れていくため、魔境の外側の方へ向かいにくくなる。
「ヴァルールは魔物を倒せる実力者が多く集う特殊な場所だ。でも、世界中を同じようにすることはできない。戦えない者を多く抱えているのであれば、無理して戦うよりも逃げた方がいい。犠牲が出にくいよ」
アーネストはジスを見つめた。
「ジスは争いを好まない性格のようだ」
「私はただの行商人だからね。魔物討伐者とは違う」
「強いけれどね」
レイディンが言った。
「ジスはすごいよ。飛竜だって倒せるし、捕まえて調教だってできる。魔境に来てから、もっともっと魔法の勉強が必要だと感じるばかりだよ」
魔境には魔法耐性が非常に強い魔物がいる。
飛竜と戦ったことでレイディンはそれを実感し、もっと魔法の修練をしなければと考えるようになった。
「でも、普通の場所では魔法を使えない。魔境なら使える。練習するのに丁度いい」
「注意が必要だ」
アーネストが答えた。
「自然破壊も環境破壊もいけない」
「わかっているよ。でも、魔物を生み出しやすい自然環境がどんどん広がるのも困るよね? 理想論かもしれないけれど、魔境を魔物と一緒に全部焼き払って通常植物を植えたらダメなのかな?」
「レイディンの言う通りにすれば、魔境の中に住んでいた人々は住む場所も生活手段もなくなる。魔境から得ていた恵みも全てなくなる。何よりも空気や水を作る自然がなくなる。レイディンも空気や水を必要とするだろう? 簡単ではない」
世界はつながっている。
自分の周囲や国が豊かでも、別の国で何かあったり魔境がなくなったりするようなことがあれば、世界中に影響が出る。
住む場所や生活手段、生きていくために必要な食料などの恵み、空気や水が減る。
そうなれば、今よりももっと激しい、そして避けようのない生存競争が起きるのは必至。
関係ないと思ってはいけないことをアーネストは伝えた。
「そっか。注意が必要だね」
「まあ、注意すればいい。私もあまり人のことは言えない。魔境で修練をした」
「やっぱり!」
「だが、レイディンとは修練内容が違う」
「わかっているって」
「ところで、アーネストはその装備をどこで手に入れたのかな?」
ジスはアーネストの装備に強い興味を持っていた。
「人間なのに魔法装備が充実している」
「人間にも優れた錬金術師が多くいる」
「誰に作ってもらったのかな?」
「この装備は王家のものだ。古い品だけに、人間の職人だと生きてはいない可能性もある」
「短命種は残念だね。せっかく優れた才能があっても、長くは生きられない」
「長く生きることよりも、幸せな一生かどうかの方が重要かもしれない」
「無意味に長く生きるだけの人生はつまらないだけだよ」
ジスは皮肉気な笑みを浮かべた。
「でも、意味のある人生や幸せな一生を送ることができる者がどれほどいるのかな?」
重い空気が漂いかけたその時、
「お口が空いてますよ? もっともっと食べてください! いっぱい作ってきましたから!」
ミントが大きな声を上げた。
「キティを見習ってください。無言で食べています!」
キティはサンドイッチを食べ、唐揚げを食べ、おにぎりを食べていた。
「栗のペーストを挟んだサンドイッチを食べましたか? エルフの二人はぜひ試食してください。ノルマですよ!」
「嬉しいノルマだ」
エアリスはサンドイッチの入った弁当箱を見た。
「だが、どこにある?」
「それらしいのはない気がする」
ジスが言った。
「えっ、ちょっと待ってください」
ミントは魔法の袋の中を見た。
「ないですね。キティ、黄色のお弁当箱を持っていませんか?」
「ないにゃ。お菓子の箱だけにゃ」
「まさか……キッチンに忘れてしまったのかもしれません!」
「見てくる」
ジスが転移した。
「助かりますー!ってもういないし。転移魔法って本当に便利ですね!」
「弁当箱一つのために転移魔法を使うなんて……ジスはやっぱりすごいなあ」
レイディンは感心した。
「優しいです!」
「そうですわね」
「栗のサンドイッチに価値があるからだ。でなければ、ジスは魔法を使わない」
エアリスが断言した。
「ジスも栗が好きなようだ」
アーネストが微笑んだ。
「そうですわね」
「間違いないね!」
「迷わず転移魔法をするほどだ。かなり好きなのかもしれない」
「エルフなら栗が好きに決まっている」
「美味しいもの、みんな大好きにゃ!」
明るい笑い声が響いた。




