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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第七章

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69 ルイール出張



「聞いたよ」


 リオンはジスに夕食に誘われた。


「ライト・エルフの王族の心を掴んだとか」


 情報が早い。さすがジスだとリオンは思ったが、どこで情報を得ているのか不思議に思った。


「聞いた場所は?」

「ホテルのラウンジで話題になっていた。ライト・エルフの王族が銀行員の猫少年をベタ褒めしていたと」

「そうなのか」


 ヴァルールで上位者が集うのはホテル。


 つまりはホテルが社交場、情報収集や交換の場所になっていることにリオンは気づいた。


「王女の訓練にも同行したそうだね」

「なりゆきでそうなった」

「討伐者でもないのに、魔物や地形に詳しかったとか」

「勉強している」


 記憶にある知識と現実の知識と経験をすり合わせながら、リオンは積極的に情報を更新していた。


「本や雑誌も買っている」


 ヴァルールに出入りする討伐者や商人向けの本や雑誌が出ている。


 リオンはそういったものを購入することでも情報を得ていた。


「読み終わった本をキティにあげて勉強させている」


 キティも将来に備えて勉強中。


 ミントと一緒に美味しいお菓子や新しいお菓子を作りながら、魔物図鑑の作成も頑張っていた。


「キティも猫族だ。いずれは狩りをするかな?」

「護身術程度のことは学んだ方がいい。でも、最初は知識を蓄えるだけでもいい。ヴァルールの魔物は強い。狩りの練習をするなら、ヴィラージュで魔ウサギを捕まえる練習からだ」

「その方が良さそうだね」


 ジスは頷いた。


「でも、リオンがこれほど優秀だとは思わなかった。嬉しいけれど不安もある。門の外に出ているという部分が特にね」

「一人では行かない。一緒に行く相手もパーティーも選んでいる」

「でも、よくないパーティーもあるだろう?」


 誰と組むかはとても重要ということはリオンもよくわかっていた。


「リオンの評判はとてもいい。でも、誰もがよく思っているわけではない。子どもなのに魔物討伐に参加するのはよくないと思う者もいる」


 ヴァルールにいる者は実力者ばかり。


 子どもであっても実力者ならいいという者がいる反面、子どもは実力があってもダメだと思う者もいる。


 子どもでも倒せるほどの魔物だと勘違いされるのは困るという魔物討伐者や、自分の子どもが真似をして外に出たら困ると思う思う身分者や裕福な者がいることをジスは話した。


「いろいろな声があるのはわかっている。でも、どこまで自分の実力なのかはわからない。優秀な魔物討伐者の補助魔法があるおかげかもしれない」

「たしかに補助魔法があるとないとでは全然違うね。能力が高い者のサポートほど、効果も高くなる」

「どこかで自分の実力がどの程度なのかを調べることはできない? できれば安全に」


 ゲームであればステータス画面を見れる。


 そのような魔法があればいいのにとリオンは思っていた。


「幻影闘技場に行けば調べることができるかもしれないね? あくまでも参考程度だけど」

「そうか!」

「知っているんだ?」


 しまった、とリオンは思った。


 前世の知識だとは言えない。


「誰かが話していた気がする。魔物と戦う施設。でも、幻影だから死なない。違う?」

「違わない」


 ジスは答えた。


 その表情も態度も変わらない。


 以前、転生者ではないかと聞いた時のような感じではないとリオンは思った。


「でも、どこにあるか知っているかな?」

「エルフの国だったような気がする。どこか知っている?」

「ルイールだよ」


 偶然。


「王族にコネがあるだろう? うまく使えばいい」

「コネって言われても……どうすればいい? もう帰国してしまった」

「出張すればいいよ、銀行員としてね」


 さすがジスだとリオンは思った。





 リオンは銀行員としてライト・エルフの国ルイールへ出張することになった。


 本来、銀行にとって重要な顧客の担当は本店から選ばれる。しかし、支店に勤務しているリオンを担当していいという要望があった。


 リオンは正式な就職をしてから日が浅いのもあって、担当の補佐としてつくことになった。


 そのことをリオン本人がルイールに行って直接顧客に会って伝え、問題がないか確認するという仕事内容だった。


 ルイールへ行くにはヴァルールとルイールを結ぶ浮遊船を利用する。


 魔力で浮かんで飛行する乗り物で、利用するには特別な資格が必要になる。


 リオンは銀行員のために利用許可が下り、浮遊船でルイールへ向かった。





「なるほど。猫だ」


 謁見相手はルイールの王太子。


 リオンは王太子に挨拶すると、自分はまだ就職して間もないこともあり、担当補佐の一人になることを伝えた。


「支店ではダントツの有能さで、なぜ本店勤務ではないのかと言われているようだが?」


 王太子は情報を集め、リオンが有能だと評価されていることを知っていた。


「小さい妹がいるので」


 リオンはヴァルールに来てからそれほど経っていないこと、小さい妹も一緒に来ており、短期の滞在だけにならないようお茶屋兼菓子屋で働いていることを話した。


「菓子というのは、栗のクッキーか?」


 王太子は妻子から栗のクッキーのことを聞いていた。


「そうです」

「非常に美味だったと聞いた。手土産に購入しようとしたが、あまりの人気ぶりに予約の受付を中止していると聞いた」

「原材料の入手が難しいので」

「そのようだな」


 ヴァルールは魔境の中にある。


 栗は魔境内での調達が難しい。


 輸入に頼り切っているせいで余計に手に入りにくく、材料費がかかりやすかった。


「銀行の件ですが、ご理解いただけるのであれば特別な品を贈ります」

「栗のクッキーで了承させる気ではないだろうな?」

「栗味のアイスクリームです」

「栗味のアイスクリーム? そんなものがヴァルールにあるのか!」

「ぜひ、ご賞味いただければと思って持ってきました。魔法袋から取り出してもよろしいでしょうか?」

「許可する」


 リオンは魔法袋からアイスクリームの入った容器を取り出した。


「こちらです」

「デザートにしよう。一緒に昼食をどうだ?」

「光栄です」


 リオンは王太子一家と昼食を一緒にとった。その際、手土産のアイスクリームも添えられ、美味だと大絶賛された。


「非常に美味だ。ヴァルールで売っているのか?」

「妹が務めている店で氷菓を扱うかどうかを検討中です。今回のために特別に作ってもらいました」

「では、まだ売っていないものなの?」

「非売品です。特別な氷菓になります」

「プレミア品だわ!」

「ルキアはヴァルールへ行かなくていい。今度は俺が行く」


 初めて会う王太子の息子ルークにもアイスクリームは大好評。


 非常に良い雰囲気になったことから、リオンは幻影闘技場の話題をリオンは上げ、特別に使用する許可をもらうことができた。




 午後、案内をするというルークと共にリオンは幻影闘技場に向かった。


「ここが幻影闘技場だ」


 見覚えがある施設。


 だが、記憶よりもずっと豪華で立派な様子にリオンは驚いた。


「すごい……」

「当然だ!」


 早速、リオンは幻影相手に戦闘した。


 判定結果を見たリオンは予想範囲内だと思った。


「やっぱりこの程度か」


 ヴァルールには魔法の使い手が多くいるため、補助魔法をかけるのが当然になっている。


 そのせいで本来の能力以上の力を発揮できるのはいいが、魔法のサポートが切れた時の落差が激しかった。


「まあまあだな。まあ、ヴァルールのすぐ側にいる魔物は倒せそうではある。一人はきついかもしれないが」

「一人なら逃げる」

「今度は二人で組もう。そのために俺は来たようなものだ」


 幻影闘技場では二人あるいは複数人のパーティーを組んだ状態で幻影の魔物と戦うこともできる。


 リオンはルークと組み、幻影の魔物と戦った。


「弓を使うと聞いていたが、リオンの腕はなかなかだ。明日の午前中、弓の腕を競う大会がある。見学に来るといい」


 弓の腕を競う大会? ゲームでもそんなイベントがあったような気がする。


 そう思いながら、リオンは頷いた。





 翌日。


 リオンは見学のはずが特別参加をすることになり、幼い頃から磨きに磨いた弓の腕を披露。見事に優勝してしまった。


「リオンに弓名人の称号を与える!」


 優勝者には称号と賞金、そして今回だけは特殊な弓の貸与権も与えられた。


「見たことがない弓だ。貴重なもの?」

「一つしかないだけに貴重と言えば貴重だ。必ず不具合が生じる弓だが」

「不具合?」

「魔力を込めながら弓を引くと矢ができる。まあ、使ってみろ」


 ルークに言われ、早速リオンは魔法の弓を使った。


 プス。


 的に矢が当たると同時に消えた。


「矢が消えるってこと?」

「いや、それは普通だ。魔力があまりにも少ないせいで不発になったようだ。ちょっと貸せ」


 ルークが弓を使った。


 ドカーンッ!


 矢が当たった瞬間、的が吹き飛んだ。


「矢というよりも爆弾みたいだけど?」

「爆弾弓だ」


 やっぱり爆弾だったとリオンは思った。


「本当は光魔法が発動するのだが、なぜか爆発してしまう」

「それが不具合ってことか」

「ライト・エルフは魔力が多い。これを使うと間違いなく爆発が起きる」


 魔力を少なくするようにしても爆発が小さくなるだけ。


 魔物討伐に使えそうではあるが、環境破壊になるばかりか魔物の素材も取れなくなってしまう。


「使いどころが難しいということで、技能者に貸して使用データを取ることにした。どんな風に使えば有用かを考えながら使ってみてほしい」

「わかった」

「リオンは近接攻撃よりも弓で遠隔攻撃した方がいい。その方が安全だ。魔力の指輪も貸してやる。午後は一緒に魔物狩りだ!」


 午後もルークに誘われ、リオンは弓使いとして魔物狩りに参加することになった。


 通常は獲物である魔物を探すのに時間がかかるが、補助魔法をもらったリオンは次々と周辺の魔物をうまく誘導して、途切れない戦闘が続く。


 ルークも魔物狩りに同行した者もそのような戦闘に驚き、連続で何匹倒せるかに挑戦して盛り上がった。


 そして、変異型の強い魔物を発見。


 何度も目撃されていたが、ある程度経つと逃げてしまう習性があり、討伐できていなかった。


 今回の魔物狩りはその魔物を見つけて倒すためだったことが判明した。


「全力で倒せ! 今度こそ逃がすな!」


 ルークが号令を出すが、甲殻類の魔物は驚くほど堅かった。


 リオンは前世の知識で、魔物の殻が良い素材になるのを知っていた。


「堅いだけに、良い素材になると思う」

「だが、無理な戦闘によって死傷者を出したくない。時間をかけて倒したくても、逃げられてしまう」

「しっかりと注意を引きつけておいて。僕が弓で攻撃する」

「ああ、こういう時こそ爆弾弓が活かせるかもしれないな!」


 ルークたちに魔物の注意を引き付けるのを任せ、リオンは射程距離を取るために離れた。


 そして、もらったばかりの爆弾弓に魔力を込める。


 連続で放った矢は次々と魔物の後ろ足に命中、爆発して足を吹き飛ばした。


 すると、機動力を失った魔物が特殊な音波攻撃を行い、至近距離にいた者が動けなくなってしまう。


 通常はその隙に逃げられてしまうが、後ろ足を二本失ったことで魔物は逃げれない。


 リオンは特殊な音波攻撃を行っている背中部分、殻と殻の間にできた狭い溝を狙った。


 ドカーン!


 殻の内側で大爆発、魔物にかなりのダメージを与えることができた。


「おおっ!」

「あれほど堅かったというのに!」

「特殊攻撃の時に攻撃すればよかったのか!」

「殻と殻の隙間が広がった時が狙い目か!」


 リオンの攻撃によって瀕死になった魔物はライト・エルフによってあっさり倒された。


「リオンのおかげでようやく倒せた!」

「爆弾弓を効果的に使った」

「機動力を奪う戦略もよかった」

「弱点を瞬時に見抜いた!」

「その前の連続戦闘もすごかった!」


 ライト・エルフたちはリオンを褒めちぎった。


 エリート銀行員、弓名人というだけではない。すでに立派な魔物討伐者だとリオンは絶賛された。


「リオンを俺の友人にする。その証として魔力の指輪は贈ろう。爆弾弓と併用すれば役立つ。日常的にも魔力を使いやすくなるはずだ」

「ありがとう。大事にする」


 リオンは出張によってライト・エルフの友人と素晴らしい装備品をゲットした。



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