66 猫の銀行員
リオンは正式に銀行へ就職した。
アルバイトをしていたおかげで優秀なことはわかっているため、銀行はリオンを確保するためにさまざまな好条件を提示した。
妹がいることが考慮され、勤務場所はジスが所有する待合施設の中にある支店になったのもその一つだった。
「預かる」
リオンは支店がある待合施設の休憩室に営業に来ていた。
顧客からお金を受け取り、預かり証を渡す。
「よろしくね」
お金をたくさん持ち歩くのは不用心と思う女性が多くいるが、銀行に行くのも順番待ちをするのも面倒。
特にエルフは。
それがわかっているリオンは休憩室に行き、銀行に預金したい女性からお金を預かる仕事を思いついた。
そうすれば窓口業務の負担を減らせる。面倒がって魔法収納に入れっぱなしのお金が回収でき、銀行に多くの預金を集めることができる。
当然、リオンの営業成績も上がるという図式だった。
「土曜日はここに来るの?」
「午前中に来る」
銀行は土日が休み。しかし、リオンは休日出勤をして休憩室に顔を出し、預かり業務を行っていた。
「それまでに稼いでおくわ」
「貨幣交換の予定はある? たくさん預金してくれたから、両替屋のチケットを融通してもいい」
「嬉しいわ。実は期待していたのよ」
リオンは両替屋の手数料が割引になるチケットを渡した。
アルバイトをやめたあとも両替屋とリオンの関係は良好で、現在はリオン自身が両替屋の優良顧客になっている。
両替屋はリオンにさまざまなチケットをくれるが、有効期限があった。
リオンの給与は王国貨幣で、他の貨幣に交換することはほとんどない。
そこで知り合いや銀行の顧客に対し、有効期限が迫っているチケットを無駄にするよりはいいということで融通していた。
このことは銀行も両替屋も把握しており、両者にとって良い結果になるということで推奨され、余計に多くのチケットがもらえるほどだった。
「手数料が割引になるチケットがある時にたくさん換金しないとね」
「リオン、私も預けたいわ!」
「両替屋のチケットがあるなら預けるわ!」
「素材屋のチケットはある?」
次々と女性――お得なチケット狙いの客から声がかかった。
「順番に。チケットは店や種類による。あくまでも有効期限が近いものだけだから、枚数にも制限がある」
優秀な銀行員のリオンは、順番に女性たちからお金を預かり、お得なチケットを渡した。
「本当にリオンは優秀です。引く手あまたのはずですね」
「人気にゃ」
キティも一緒。
猫の形をしたクッキーとケーキの当日分はすでに完売。予約分も手渡し完了。
魔物図鑑用のお絵描きをしていた。
「お菓子、買いに行きたいにゃ」
キティはミントに雇用されており、給与がもらえる。それでお菓子を買うことでもポイントを貯めていた。
「午後に行きましょう。注文カウンターのお手伝いは午前中だけですから」
「わかったにゃ」
しばらくすると、リオンがミントたちのいる注文カウンターの方へ来た。
「いらっしゃいませ!」
「お菓子は完売にゃ」
「得意先の手土産がほしい。明後日、クッキーを用意できる?」
「何箱ですか?」
「最低でも三箱。できれば五箱がいい」
「頑張るにゃ」
味見をし過ぎて商品を減らさないようにするという意味で。
「わかりました。キティの予約枠で」
通常の予約枠はすでにいっぱいだが、身内枠においては受付可能だった。
「お任せにする。ちなみにエルフの顧客だ」
「香草にゃ? 栗にゃ?」
「キティは僕の妹だよね? 二つ入れてくれてもいい気がする」
クッキーの味はバターかチョコレートの二種類。
しかし、バター味とチョコレート味の比率がお任せのものには、時々別の種類のクッキーが入っていることもあった。
エルフには香草や栗味のクッキーが大人気で、お任せでしか手に入らないことから、かなりのプレミアがついていた。
「仕方ないにゃ。先払いにゃ」
「わかっている」
リオンは黒い袋を取り出すと、先払いをした。
「お昼、どうするにゃ?」
キティが尋ねた。
「上司と一緒に食べる。支店長や本店長も一緒だ。重要な顧客と会う場所と食事の内容を事前に確認するらしい」
「そうですか。忙しそうですね。頑張ってください!」
「応援にゃ!」
「頑張る」
リオンはそう言うと、休憩室を出て行った。
「すっかり一人前です!」
「銀行猫にゃ」
リオンが有名なおかげで、ミントやキティの商品もよく売れ、知名度も上がっていた。
何かあると誰かがミントの所へ来る。困ったと話す。リオンやレイディンやセレスティーナが解決する。全員が喜び、評判も良くなる。良いループになっていた。
「私たちも頑張って、リオンにたくさんお金を預けれるようにしないと!」
「使っちゃうにゃ」
「まあ、わかります。使っちゃいますよね」
美味しいものに目がない二人は笑い合った。




