65 イベントをこなして
「魔ウサギの毛皮と肉がほしいのか」
転移魔法で突然やって来たレイディンとリオンから話を聞いたアーネストは驚いた。
「すぐに用意する。猫族に頼めば喜んで手伝ってくれる。臨時収入にもなっていいだろう。話を聞くと、輸送ルートに出る魔物を討伐した方がよさそうだ」
「それはセレスティーナが情報を集めています。僕の方で解決するから平気です!」
兄は無自覚チート、自分が活躍できなくなりそうだと思ったレイディンがそう答えた。
「私も討伐を手伝った方が」
「大丈夫! 僕とセレスティーナでドカンドカン魔法を撃てば、あっという間に倒せるよ!」
「大地をえぐってはいけない。焦土と化してもいけない。低温によるダメージも同じだ。自然破壊は環境破壊につながり、人々を安心させるどころか困らせてしまう」
「わかっているって!」
「リオンも行くつもりなのか?」
「行く。でも、魔物を倒すのはレイディンとセレスティーナでいい。僕はどんな魔物なのかという情報を収集したり、素材を見極めたり、売る時に交渉する方。安全な役割だ。二人が環境破壊をしないかも見ておく」
「だったらいい」
イベントをこなすためにアーネストを説得する、という目的はすぐに達成された。
三人は猫族の村へ向かい、別の場所にある都市で魔ウサギの毛皮や肉が不足していることから支援物資を送りたい、報酬が王国貨幣で支払われることを伝えた。
「毛皮を引き取ってくれるのは嬉しい。ごみ同然だったからねえ」
プリメーラは話を聞いて喜んだ。
「ごみ? 領都のギルドで買い取っているはずだが?」
素材が常に安定的に買い取られることによって領民の収入を安定させるため、アーネストは領都にギルドを作っていた。
「ごみ同然と思えるほど安い価格でしか引き取ってくれない。ギルドで保存している毛皮があまりにあまっていて、本音としては引き取りたくないぐらいだって言われたよ」
「リオン、在庫を全部売ってきてくれないか?」
「袋に入るだけ持っていく」
「僕の魔法収納もあるし、全部運べるよ」
「肉はやらないからね!」
「少しは融通してほしい。王国貨幣は肉と違って長期的な保存ができる。持っていれば、日用品が買えるだろう? 鶏肉やパンも美味しいと言っていたはずだ。交換できる」
「仕方がないねえ」
リオンとレイディンは大量の物資を魔法収納に入れ、ヴィラージュに戻った。
まずは革ギルドに行き、リオン、レイディン、セレスティーナの三人で物資不足の解消に協力していることを伝えた。
「助かるよ! 三人に感謝しないとだね」
「情報をくれたのはミントだ」
「感謝すると伝えておいてくれ!」
次は食材ギルド。
魔ウサギの肉を持って行くと、ギルドの者は大喜びした。
「良かった! このままどんどん値上がりしたら大変だと思っていた」
「ミントが不足しているという情報をくれた」
「ミントさんか!」
ミントは食材チェックをするためにギルドに通っている。茶葉などの素材を購入しているのもあって、食材ギルドでも名前が知られていた。
「助かる。良い茶葉が入ったら教えておくよ」
「ありがとう」
「ミントも得したね!」
「また同じようなことがあれば、ミントさんに伝えておこうかな」
今後はミントに聞けば、イベントが発生するかもしれない。
リオンとレイディンはそう思いながら、食材ギルドをあとにした。
そして、二人はセレスティーナに合流。
セレスティーナは人助けのためということでやる気に満ちており、複数の輸送業者から魔物討伐の依頼をリオン、レイディンとの連名で受けていた。
「情報収集はバッチリですわ! 討伐しようという話までは出ていなくて、私が初めて申し出たようですの。よくわからない魔物を討伐するパーティーは集まりにくいですし、人選にも時間をかけますわ。ランチのあとで行っても平気ですわよ」
「じゃあ、ランチのあとにしよう。僕は朝食を食べていないからお腹が空いた。魔法を使うし補給しておかないと」
「わかった。取りあえず、ミントのところへ」
リオンはミントにも魔ウサギの肉を渡し、今回のようなことがあったら自分に連絡するよう伝えた。
「僕やセレスティーナでもいいけれど、常にヴァルールにいるわけでもないからね。リオンとミントで連絡を取り合っていればいいよ。どちらかに会えばわかるから、こっちとしても助かって嬉しい」
「わかりました。私はお茶の調合や買い出しでここにいないこともあるので、その時はキティに頼みます」
「大丈夫にゃ。メモメモしておくにゃ」
イベントの受付はキティになりそうでもあった。
「魔物、わかるにゃ?」
「強い魔獣に襲われたようですわ。でも、見たことがない魔鳥だったという者もいますの。取りあえずは二種類の魔物ですわね」
キティは魔法袋を取り出した。
「あれ、その袋どうしたの?」
レイディンが尋ねた。
「ジスさんにおねだりしたら買ってくださったのです」
ミントが答えた。
「猫の形をしたお菓子が大評判なので、販売継続をしてほしいといって」
「お菓子屋さんのためにゃ!」
「一億の袋ですの?」
「一億にゃ。キティ、この袋を使ってもっと儲けるにゃ」
「キティの大志はすごいですよ。お菓子の種類を少しずつ増やしたいと言っています」
「おねだり上手だなあ」
「貢がれていますわね……」
キティはノートを取り出した。
「魔物図鑑にゃ。見るにゃ?」
「ええっ!」
「そんなものが!」
「ああ、きっと倉庫にあった本に載っていたものです」
ミントが言った。
「ヴィラージュを脱出する人が叩き売りしていた本を手に入れたりおまけでくれたりしたので」
「キティ、綺麗に書いてお絵描きもしたにゃ」
古いものは保存状態が悪く劣化し放題。
キティは暇を見てそれを新しいノートに写し取っていた。
「綺麗な本、売れると思ったにゃ」
「なるほど」
「目の付け所がいいね」
古い時代にヴィラージュに住んでいた魔物の情報がありそうだとレイディンやリオンは思った。
「ちょっと見せてくださいませ」
「それは魔獣にゃ。魔鳥は別にゃ」
キティは別のノートを取り出した。
「こっちにゃ」
「分けているのか。頭が良いなあ」
「キティは賢い」
「絵も上手ですわ!」
パラパラとノートをめくると、セレスティーナが聞いた情報にあう魔物があった。
「これかもしれないので、一応は内容を覚えておくと良さそうですわ」
「そうだね」
「キティ、もっとたくさんの魔物の情報を書き写しておいて」
「資料や本もその袋に入れておけばいいよ。一億の袋なら、たくさん入るよね?」
「わかったにゃ」
キティは魔物図鑑制作においても活躍しそうだった。
リオン、レイディン、セレスティーナの三人は情報を元に輸送業者が使っているルートを確認しに行き、特徴が一致する魔物を倒した。
「楽勝だ!」
「私の魔法があれば簡単ですわ!」
「魔法だと安全に倒せていい」
周辺には同じような魔獣が生息するだけに、変異型の強い魔獣だと思われた。
魔鳥の方は一匹のみ。他の場所から飛んできて、新しく棲みついたようだった。
三人は討伐したことを輸送業者に伝え、お礼を固辞して善意の行動であることを伝えた。
さすが王太子、公爵令嬢、有名人と賞賛され、信用度が上がったのは明らかだった。
「何かあれば僕か上級地区でお茶屋をしているミントに伝えてほしい」
魔物討伐のイベントが再び発生するよう、リオンは布石打ちも忘れなかった。
お茶屋に行くセレスティーナとはそこで別れ、リオンとレイディンは毛皮と肉を売った代金をアーネストに届けることにした。
魔ウサギ関連の物資不足及び輸送ルートに出没した魔物の討伐イベントは無事終了。
ヴァルールだけでなくヴィラージュにも良い結果をもたらすことができた。




