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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第六章

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58 特別な朝食の席



 レイディンとセレスティーナはホテルの支配人と副支配人によって、それぞれ特別な朝食の席があると伝えられ案内された。


「おはよう。一緒に朝食を食べよう」


 豪華な部屋の豪華なダイニングテーブルに座るアーネストの姿を見て、レイディンとセレスティーナは固まった。


「あ、兄上!!!」

「なぜ、こちらに?」


 二人は動揺した。


 思い当たる理由は四つ。


 領都でお茶を作っているミントが話した。


 ミントの手伝いをしているキティが話した。


 短期の仕事をしているリオンが話した。


 二人にヴァルールに連れてきたジスが話した。


「王妃から伝言があった。王都に戻るようにということだ」


 母上かーーー!!!!!


 王妃様!!!!!

 

「なぜ、ここにいるのかと言えば、強盗団を討伐した褒美の旅行だ。そうだろう?」


 そういう設定にするということ。


「そうです!」

「そうですわ!」


 レイディンとセレスティーナは即座に飛びついた。


「大活躍だった。ふさわしい褒美が必要だ。しかし、長過ぎるのはよくないということだろう。愛されている証拠だ。一緒に朝食を食べながら、王妃と宰相にどう対応すべきかを考えよう。私たちが力を合わせれば、必ず良い方法が見つかる。これまでも三人で力を合わせ、何とかしてきた」


 レイディンとセレスティーナの胸に絶対的安心感が広がった。


「わかりました!」

「やっぱりアーネスト様ですわ!」


 三人は朝食を食べた。


 話し合った結果、レイディンとセレスティーナは一旦王都に戻ることになった。


 本来の目的、強盗団の討伐を果たして戻らないのでは、せっかくの功績を讃えられない。


 まずは王都に凱旋。アーネストからの緊急要請によって、ヴィラージュの方面の治安改善にも貢献していたせいで遅くなったと言い訳することになった。


「騎士と護衛をしっかりと庇うように」


 ワインを運ぶ輸送隊を務めさせたのは、輸送隊を狙う犯罪者をおびき寄せて捕縛するため。


 他の種族との関係を改善することで、ヴィラージュを守るためという二つの理由をアーネストが挙げた。


「さすが兄上です!」

「その通りですわ!」

「ところで、ヴァルールはどうだ? 楽しんでいたのか?」

「あ、はい……すごいところです」

「自らの見識がいかに狭いかを感じましたわ」


 レイディンとセレスティーナは非常に気になることがあった。


「兄上は……ここへ来るのは初めてですか?」

「それとも以前からご存知だったのでしょうか?」

「前から知っていた。王太子だっただろう?」

「そうですね」

「次期国王として教えられていたということでしょうか?」

「そうだ」

「いつ頃、教えられたのですか?」

「覚悟がいるということで、それなりに早かった。代々の国王はヴァルールを支援している。王国貨幣の輸出だ」

「そうでしたか」

「まあ、普通はヴァルールの存在を知っても来ることはできない。中に入る資格もない。知る意味もないということになる」

「兄上はどうやって?」

「魔法ですの?」

「移動用の魔物を手に入れた。それに加速魔法と防御魔法をかけ、適度に浮遊魔法も使った」

「移動用の魔物とは?」

「一角獣だ」


 レイディンとセレスティーナは驚いた。


「さすが兄上です! かっこいいです!」

「破格の実力者ですわ!」

「そうでもない。すでに調教されていたのを手に入れただけだ。本当にすごいのは捕獲者や調教者だ。ところでヴァルールの周辺や奥地の情報を知っているか?」

「魔物が強く多くなっているというのは聞きました」

「だからこそ、ヴァルールは物資に溢れているそうですわ」


 ヴァルールにいる人々も増えている。豊かになっている。


 それは魔境の恵みが多くあること、魔物が多いということにもなる。


「ヴィラージュの魔物が強く多くなっているというのは魔境、すなわちヴァルールの情報だったということか」

「ああ、なるほど」

「わかりにくいですけれど、間違いとは言えませんわね」


 自国における情報として、魔境は辺境領ヴィラージュのこと。


 しかし、世界的に見れば、魔境はヴァルールのこと。


 ヴァルールの情報が魔境の情報とされ、魔境の情報だからヴィラージュの情報という取り違えが起きた。


「理論上は、魔物が強く多くなるほどヴァルールの維持は難しくなる。ヴァルールの力を増強させなくてはならない」

「そうなります」

「わかりますわ」


 実際は大盛況だけどね。


 理論は理論。大繁栄中ですわ。


 レイディンとセレスティーナがそう思った時だった。


「となると、優秀な魔物討伐者を派遣すべきかもしれないな?」


 レイヴィンとセレスティーナはキラキラと目を輝かせた。


「僕が務めます! 王太子の責務です!」

「私もお手伝いいたしますわ!」

「遊びではない。非常に重要な任務だ。自身の命だけでなく、世界の命運にかかわるかもしれないことをわかっているのか?」

「わかっています! ですが、無理はしません。王太子なので」

「私も同じく。安全を最優先にしておりますわ。命を無駄にする気は毛頭ありませんの」

「そうか。まあ、王太子であることや、安全を最優先にしているのであれば、ヴァルールには来ないはずだが」


 レイディンとセレスティーナはヒヤリとした。


「ジスのせいか?」

「僕のせいです! というか、セレスティーナのせいです!」

「何ですって! レイディン様のせいに決まっていますわ!」


 暴露合戦が始まった。


 アーネストは黙って二人の言い訳に耳を傾けた。



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