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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第五章

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53 猫族の少年リオン



 僕はリオン。


 前世は日本人だったという記憶がある。


 現在はMMORPGと同じと思われる別世界で、前世の記憶がある転生者であることを隠しながら猫族として生きている。


 MMORPGというのはオンライン上で多くの人々が同時に楽しむことができるゲームで、その内容がRPGと呼ばれるジャンルになっている。


 オンライン上で未知の世界を探求したり、モンスターと戦ったり、宝物を探したり、自分を強く成長させる要素が魅力的だ。


 日常とはかけ離れた世界の物語に感情移入するのも、現実世界のどこかに存在する名前も知らない相手と出会い、話をしたり協力し合ったりするのも楽しい。


 前世の記憶のせいで、曖昧な部分もかなりある。


 そもそも、僕が前世の記憶を思い出したのは、姉が新しい村を作ってからのこと。


 貧しい猫族の子どもでしかない僕に何ができるのだろうかと真剣に悩んでしまった。


 ゲームプレイヤーは成人している男性か女性のアバターを作る。種族、容姿など細かく選べる要素はあっても、子ども設定はなかった。


 猫族を選ぶことはできたけれど、僕がアバターとして選んだ種族ではなかった。


 転生したこれまでの人生を考えると、かなりのハードモード。よく生き続けることができたと思えるほど大変だった。


 猫族は狩猟をしていて生活している。基本的に食べ物を求め、獲物を求める人生。


 成長して身体能力が向上しても、貧しい生活は変わらない。むしろ、多くの獲物を狩るほど周辺に獲物が少なくなり、だんだんと食料不足になっていく。


 魔ウサギを飼育して増やすことを提案しても、空腹に耐えかねた者が食べてしまう。


 明日の糧より今日の糧、今すぐの食べ物が優先。


 アーネストがそんな状況を救ってくれた。


 僕にリオンという名前をくれた。


 ヴィラージュは良くなっている。


 アーネストの養い子としての人生はとてもいい。アーネストをずっと支えていけばいいと感じていた。


 だというのに、僕はヴァルールにいる。


 もっと遠いはるかかなたの場所だと思っていた。でも、予想以上に近かったというか、行く機会に恵まれた。


 幸運だっただけで、実力による結果だとは言えない。


 それでも、僕はヴァルールにいたいと思っている。


 仕事は魔物討伐ではなく銀行や両替屋で働くこと。


 実際にやってみて、僕にもできるというのはわかった。


 ヴァルールの公式通貨は王国貨幣。


 王国貨幣はヴァルールが発行しているお金ではなく、複数の人間の国々が同盟を結び、統一通貨として鋳造している。


 通常は国ごとにお金が違うため、同盟国内全てで使用できる統一通貨があるのは非常に便利ということで、ヴァルールの公式通貨に選ばれた。


 人間には凶悪な魔物が棲んでいる魔境に行きたくはないと思う者が多くいる。でも、魔境から得られる特別な恵みはほしい。


 そこで、人間の国の王はお金を出して特別な恵みを買う。


 ヴァルールは人間の国に魔境で得られるさまざまなものを輸出することで、大量の王国貨幣を手に入れている。


 ヴァルールはその王国貨幣を公式通貨として銀行に貸し出し、銀行は両替屋に貸し出し、両替屋はさまざまな種族や国の貨幣を王国貨幣に交換している。


 そうすることでヴァルールに出入りする全ての人々は種族や出身地に関係なく王国貨幣や多種多様な貨幣を手に入れることができるようになっている。


 アーネストとレイディンの父親が治める国もヴァルールと取引をしており、かなりの王国貨幣を取引している。


 アーネスト、レイディンは王族。セレスティーナは元王太子の婚約者で父親は宰相。


 さすがにミントは知らないと思うけれど、他の三人はヴァルールのことを知っていてもおかしくない。


 でも、ヴィラージュにいた時、三人からヴァルールだけでなくMMORPGに関係するような情報を聞かなかった気がした。


 アーネストとセレスティーナは仲がいいけれど、婚約を破棄した。別の女性が絡んだ事件があったということで、王都のことは聞いてはいけないという空気があった。


 心機一転頑張りたいアーネストのためにも、聞かない方がいいのもわかっていた。


 でも、気になる。いろいろと。


 レイディンとセレスティーナは魔物討伐に興味がある。


 MMORPGをしていた転生者の可能性があるけれど、魔法の実力を示したり、悪しき存在としての魔物を倒したいだけかもれない。


 ミントも日本人のような部分がある。前々から言動が怪しいと思っていたけれど、カレーやカレーうどんのようなものを作ったのを見て、余計に怪しいと思った。


 僕と同じく、前世の記憶があることを隠している転生者かもしれない。


 でも、その知識は旅の途中で会った旅人から聞いたという。その旅人が転生者だった可能性も捨てきれない。


 僕にはわからないことばかりだ。


 前世でこの世界と同じゲームをやっていたとしても、謎が多くある。


 僕は知りたい。その謎を。


 でも、ゲームのようなシナリオ進行があるとは限らない。


 そもそも、僕は魔物討伐者でさえない。


 僕ができるのは銀行や両替屋で働き、金をため、装備や必要なものを揃え、未来に備えることだけだ。


 レベル一からの能力育成をする必要はない。猫族として生きていくために必要だったせいで、身体能力も戦闘能力も磨いていた。


 ヴァルールのすぐ側にいる魔獣を倒せたことを思えば、レベルはまあまあ高い。


 でも、僕がMMORPGと同じこの世界を知っている優位性で倒せたのは確か。油断はできない。


 モンスターの習性や弱点情報はそのまま役に立ちそうではある。


 素材関連の知識は素材屋よりも僕の方が知っていることもあり、商人としてもやっていけそうな気がしている。


 午前中は銀行、午後は両替屋。三時間ずつ働き、そのあとにヴァルールを見て回る。


 休日はない。毎日仕事。でも、休みは取れる。


 だから、僕はお願いすることにした。


 猫族の少年として。


「レイディン、ヴァルールの外がどうなっているのか知りたい」

「危ないよ」

「レイディンと一緒なら平気だ。レイディンは強い。魔法を使える」

「そうだけど」

「セレスティーナもいれば、安全度が増える。セレスティーナも魔法を使える」

「そうだけど、魔物が弱くなるわけじゃないよ?」

「貨幣を交換する。手数料がかからない」


 銀行と両替屋に勤めているからこその特権を僕は提示した。


 ジスが僕に仕事を紹介したのもそのためかもしれないと思いながら。


「僕にできることがあれば協力する。少しだけでいい。外のことも知りたい」

「わかるけれど……」

「アーネストにヴァルールにいることがわかってしまった時、レイディンの味方をする」

「わかった。約束だよ!」


 レイディンを確保。


 そして、この方法はセレスティーナにも有効だった。


「私がいれば安全ですわ! 移動についてはレイディン様が担当ですけれど。あの魔法は上達しましたの?」

「三人は無理」

「完全に負けていますわね。ジスは四人でもできますわよ?」

「僕は人間だよ? 二人だけでも相当すごいと思うけれどね?」

「所詮は人間ですものね」

「セレスティーナもね!」


 僕は愕然とするしかない。


 転移魔法は魔人特有の魔法。魔人あるいは魔人の血を引く者しか使えない。


 MMORPGの設定では。


 この世界が同じ設定であれば、レイディンは魔人あるいは魔人の血を引いているということになる。


 もしかして、人間の国の王が魔人? 王家は魔人一家? アーネストも? 魔人が人間を支配している? 


 だとすれば、あのよくわからない魔剣を持っていてもおかしくない。


 でも、魔人と人間のハーフ、子孫設定かもしれない。レイディンは先祖返り?


 僕の中に疑問符が次々と浮かび上がっていく。


 どこかに僕と同じような転生者がいないだろうか。


 もしいるのであれば、僕と一緒に謎を解いてほしい。


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