51 リオンの行動
魔道具屋では、リオンが魔力持ちかどうかを測定器で調べた。
その結果、リオンには魔力があるが、非常に少ないことがわかった。
魔導士にはなれない。だが、成長期だけに魔力が増えていく可能性はある。
魔道具の中には魔力がある者でなくては使えない者もあるが、消費が多いものでなければリオンも使えることがわかった。
「魔法袋が使えてよかった」
ジスはリオンのために最高最新の魔法袋を買った。
「他のものも買いたい。付き合ってくれるね?」
「わかった」
次に向かったのは服屋。
リオンの服装はヴィラージュにおいては標準かもしれないが、大都市ヴァルールでは貧乏に見えてしまう。
見た目をよくしないと信用度が上がりにくいということで、着替えを購入。
ベルト、靴、日用品も購入した。
「これはエアリスからの贈り物だ」
ジスが魔法収納から取り出した箱には、魔法金属の短剣と胸当てが入っていた。
「リオンは銀行や両替屋で仕事をする。魔物と戦うわけではないけれど、荒事に巻き込まれる可能性がある。護身用だよ」
「エアリスが……」
「最近は錬金術に忙しくてフォレスト・エルフの町の方にいるだろう? リオンとカップ作りができなかったのもあって、役立つものを贈ろうと思ったらしい」
エアリスは面倒だが口癖だが、面倒見がいいことをリオンは知っている。
それをより強く感じさせる贈り物だった。
「錬金術で作った薬もくれた。怪我や病気をしないようにすることが大事だけどね。リオンの一人暮らしを応援している証拠だよ」
「嬉しい」
購入したものやエアリスからもらったものを入れると、リオンの魔法袋の中身はどんどん増えた。
「このままだとあっという間に上限数になってしまう。だから、袋や箱で仕分けする。そうするとまとめて一個ということになるからね」
「わかる」
「でも、適当な袋や箱に入れると、その中身が何かわからなくなる。私のようにね」
「それもわかる」
「貴重品は自分で持つように。鍵がついている部屋や家具でも、魔法を使うと簡単に鍵をあけられてしまうからね。ヴァルールでは、収納の魔法や魔法具を使って持ち歩くのが常識だ。緊急時にも対応できるし、全部持って移動することもできるからね」
「わかる」
「実は言うと、私もリオンが一人暮らしをすることを心配している。危ないことはしないように」
「わかっている」
「本当にそうだといいけれどね」
説明が終わり、ジスは用事を済ませに行った。
一人になったリオンは早速ヴァルールの中を散策しに向かった。
「広い」
リオンはぽつりとつぶやいた。
だが、覚悟を決めたような表情になると走り出す。
地区同士をつなぐ門へリオンは到着した。
「ここは何番地区? 門をくぐると何番?」
自分の位置情報を確認するため、リオンは警備に尋ねた。
「迷子か?」
「位置情報を確認するだけだ」
「怪しい。身分証を見せろ」
ヴァルールに子どもはほとんどいない。
警備はリオンの身分証提示を求めた。
「……庭にも出入りできるのか」
リオンの身分証を確認した警備は驚いた。
「ここは上級門だ。くぐってしまうと通常地区になる。上級地区に比べると治安が悪い。行かない方がいい」
「庭に行けるわけだから、ほとんどの場所に行けるよね?」
「聞くということは、よくわかっていない証拠だ。身分証をなくすと大変だぞ? 保護者が来るまで牢獄に入ることになるかもしれない」
「保護者はいない。保証人は行商人だから、ヴァルールにいないこともある」
「それは不味いな」
「家の管理人ならいる」
「本人確認ができればいいが、保証人が来るまで牢獄に入る可能性もなくはない」
「上級門は何時に閉まる?」
「二十時だ」
よほどの事情がないと締め出される。浮遊魔法などを使って通過するのは違反行為。
素直に身分証を見せた方がいい。子どもだけに仕方がないと思われて通してもらえることを警備は説明した。
「夜遊びをしていると思われるような時間はダメだ。わかるな?」
「わかる」
「二十時だ。忘れるな」
警備が強調したのは、リオンが引き返す気がないと思ったからこそ。
さすが警備、見る目があるとリオンは思った。
「通常地区の様子をみたい。店の方も少しだけ確認する」
「そうか」
上級門をくぐり、リオンは通常地区へ来た。
ヴァルールの中央部分は上級地区と呼ばれ、四角形で構成されている。
その中にあるのは中央地区、東西南北地区の合計五カ所。。
上級地区を取り囲むのは変形した八角形の通常地区。
ここはヴァルールの人口が多くなったせいで、増設されてできた部分になる。
常にどこかが拡張するような工事が行われており、できるだけ正八角形に保とうとしている。
「……工事中は二カ所か」
拡張工事中の地区がどこかをリオンは店の人に聞いて確認した。
「初日でいきなり野宿はしたくない」
リオンは走り出した。
そして、ためらうことなくヴァルールの外に出た。
午後の時間。
明るさも問題ない。
ヴァルールの付近の魔物は朝から出かける討伐者が倒しているため、安全度が高い。
とはいえ、ヴィラージュとは違う場所にある。
しばらく歩いていると、魔獣がいた。
リオンはすでにエアリスが用意してくれた防具をつけており、武器も構えていた。
「いつも通りだ」
自分に言い聞かせながら、リオンは魔獣に向かっていった。
先手必勝。俊敏さを活かすためにも、それが良策。
不意を突くことで魔物の反応を遅らせる。魔物の知能は人種のように高くないため、攻撃が単調になりやすい。
全く攻撃を受けることなくリオンは魔獣を倒した。
ヴィラージュにいる魔物よりもはるかに強いことを考えると、それだけリオンが優れており、戦闘能力が高い証拠でもあった。
リオンは倒した魔物を袋にしまおうとして、ハッとした。
「汚れてしまう、のか?」
買ってもらったばかりの魔法袋を汚したくなかった。
「一億の袋だ」
絶対に自分では買えない。
どうしようと思いながら立ち尽くしていると、別の魔獣が来た。
仕方がないのと思いながらリオンは魔獣を倒した。
また、悩む。また、魔獣が来る。倒す。
「延々と続きそうだ」
倒した魔物の数が増えていく。
そして、ようやく魔物以外の存在が来た。
「リオン、何やっているんだよ!」
怒った顔をしたレイディンが空中に浮かんでいた。
「外に出たらダメじゃないか!」
「……ごめん」
リオンは素直に謝った。
「しかも、魔獣を倒しているじゃないか!」
肩だけでなく、耳も尻尾も下がった。
「やっぱり猫族は強いね!」
ピコンと耳が上がった。
「襲われた。だから、倒した。でも、これをどうしようと思っていたら、また魔物が来た」
「魔物あるあるだ。討伐者あるあるかな? まあ、これは素材屋に持って行くと買い取ってくれる。安いけれど」
「魔法の収納に入る?」
「入る。一匹につき一個だよ。枠ある? ないなら僕が持ってあげるよ」
「袋に入れたら汚れる?」
「えっ!」
レイディンは驚いた。
「考えたことない」
「……」
「でも、食べ物を入れても普通に出てくるし、平気だよ」
「袋、臭くなる?」
「ええーー!」
レイディンはまたしても驚いた。
「僕は収納魔法だから袋じゃないし……じゃあ、取りあえず、僕の方に入れるよ。ジスの方が知っていると思う。魔道具屋とか」
「わかった」
「大体、銀行と両替屋で働くはずだよね? 魔物討伐者の仕事をしたらダメだよ」
「正当防衛だ」
「それならいい。でも、ライセンスはないよね?」
「身分証はある」
「魔物討伐のライセンスだよ。ポイント稼ぎになるから作ろう。それで、これを素材屋に売る。何事も経験だ」
リオンが倒した魔物をしまうと、レイディンは浮遊魔法をリオンにかけた。
「空を走る練習もしよう」
「わかった」
「ああ、でも、安定するための魔法靴がないとダメだ」
レイディンは思い出した。
「魔法をかけて引っ張る。手をつなごう」
「わかった」
レイディンはリオンの手を引きながら宙を走った。




