表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/114

05 食料担当者ミント



 私はミント。


 告白します。実は、転生者。


 ある日突然、日本という国に住んでいたこと、ここは多くの異性の中から理想の結婚相手を決めて攻略する乙女ゲームと同じ世界であることを思い出した。


 前世……ですよね?


 でも、主人公でもなければ悪役令嬢でもなく、その周囲にいるモブでもない。


 それでも乙女ゲームと同じ世界だとわかったのは国の名前や王族の名前が一緒だったから。


 ぶっちゃけ、完全に蚊帳の外にいるってやつですか?


 普通の平民に転生した私にできることなんかないし、普通に暮らすと決めたのは三歳の時。でも、すでに頭脳は大人。前世的かつ別世界的な意味で。


 この世界において文字を習うのは小学校に入る六歳になってからなので、三歳にして絵本ではなく文字の本を読みだした私は天才だと思われてしまった。


 私としてはさっさと文字を覚えて学習して勉強して良い学校に入ってそこそこ良い就職先を探して将来性のある素敵な男性と恋に落ちて結婚して子どもを産んで末永く幸せに暮らせばいいかって感じだったけれど、それは無理っぽいと小学校に入学した時に悟った。


 なぜなら、この世界には魔法がある!!!


 魔法が使える人はとても偉い。魔法がまあまあ使える人はちょっと良い。うまく使えない人は普通。魔法が全然使えない人はお話になりませんっていう魔法世界あるある壁をはっきりと感じてしまったわけ。


 私は魔力があるけれど、魔法をうまく使えないというか……ほぼ使えない。


 心がボキボキ折れたけれど、前世では魔法が全く使えない人間だったことを思い出す。


 たぶん、何かできる! 前世の記憶を駆使すれば!


 知識と勉強だけでなんとかなりそうことを探し、医者は無理だけど薬師ならなれそうだと思って目指すことにした。


 でも、薬も千差万別。


 日本の素晴らしい医薬品を知っていると、薬草をすり潰して丸薬にしただけのこの世界の薬学は極めて貧弱としか言いようがない。


 魔法で直せば薬はいらないってわけですよね。そりゃ、発達しませんて。


 でも、魔法で治してもらえるのは身分の高い人やお金持ちがほとんど。


 庶民は命がかかっているような大病でもないのに高額な魔法治療は無理だし無駄だしってことで、安価に出回っている薬を飲んでいる。


 薄利多売は庶民の味方。でも、薬師は雀の涙。儲かりません!


 でも、特殊な薬であれば高額で売れる。


 でもでも、それにはやっぱりその辺に生えている植物じゃダメ。限界突破できない!


 特別な植物が必要でしょってことで、私は勉強と修行の旅に出た。


 特別な植物が豊富で薬師は重宝されそうだと聞いたヴィラージュ領へ来てみたら、魔物がウヨウヨいる魔境でしたとさ。


 ちょっとちょっとちょっとーーーーーーそりゃないでしょおおおおお!!!


 帰りたくても帰る予定の人がいない。護衛を雇えるほどのお金もない。


 こうなったらここで一旗揚げてやる! むしろ、魔物と戦う人たちに薬を売って売って売りまくる!


 と息巻いていたのは過去のこと。


 魔物と戦う冒険者みたいな人たちはあまりいない。


 それほどヴィラージュは危険だって思われているらしい。


 領都にいる人のほとんどはヴィラージュ中から避難してきた人、家族や知り合いを助けるために他の場所から来た人ばかり。


 故郷に未練がない人でお金がある人はすでにもっと遠くの安全な場所を目指して旅だったらしい。


 うーん、どうしよう……。


 とりあえずは薬なんかを作って生活費を稼ぎ、珍しい素材を調べ、美味しいご飯作りに励んでいます。


 だって、命の危険最大級の場所だし、美味しいご飯ぐらい食べないとやっていけない。精神的にも肉体的にもね。


 そしたら、完全に縁がないと思って忘れていた元王太子のアーネスト様に出会ってしまった。


 本物? マジで? なんで魔境に?


 見た目的には作者も絵師も全力投球しているって感じの人物。

 

 情報収集をしたところ、国王の決めた婚約者が元平民の女性をいじめていたことを断罪して、しかもいじめにあっていた女性と婚約すると宣言したせいで一騒ぎ。


 その責任を取って王太子の身分を返上。


 辺境伯(魔境伯が適切)になってその女性と婚約するつもりが、その女性は魔境に行くことを拒否。


 フラれてしまったため、一人寂しく(実際はごつい騎士たちが同行)魔境に来たとのことだった。


 わかる、ここは乙女ゲームの世界と同じだから。


 でも、ヒロインにフラれちゃうなんて知らなかった! 


 そこは二人でしぶしぶ魔境行きになってざまあで終わりになるんじゃないの? それが王道ってやつでは?


 別のフラグが立っていたのかもしれないし、巻き込まれるのが怖くて王都に行ったことがない私には関係ない。


 でも、新領主って部分は関係ある。


 なんか……大丈夫かな? いわゆるダメ王族、よね?


 しばらくは様子見しようと思っていたら、食材に詳しい調理人を募集しているというので、取りあえず応募してみたら即採用された。


 他に誰も応募しなかったらしい。


 誰もが様子見ってわけですね。わーかーるーわー!


 でも、そのおかげでアーネスト様が高度な魔法を使えることを知った。


 強そう。もしかしたらチート? 実は無双? 王道の結婚相手のはずだし!


 森で集めたものを追加の案内料だと言ってたくさん分けてくれるのも嬉しいし、とにかく優しい感じなので安心。


 ヴィラージュに住む以上、領主と仲良くなっておくことは重要ってことで、今日もアーネスト様と一緒に森へ行ってきます!


 ミントはどこかで見守ってくれている――はずの神様にお祈りした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ