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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第五章

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47 聞きたいことがある



 夕食が終わった。


「レイディン、セレスティーナ、話がある」


 アーネストは決断した。


「応接室に来てほしい」

「はい」

「わかりましたわ」

「僕も話がある」


 リオンが言った。


「一緒したい」

「わかった」


 四人は応接室に移動する。


 アーネストとリオンが同じソファに座り、その向かい側のソファにレイディンとセレスティーナが座った。


「二人は頭も良いし察しもいい。だから率直に聞く。毎日、どこに行っている?」


 やっぱり!

 

 やっぱりですわ!


 レイディンとセレスティーナはそう思った。


「二人は成人している。自分の意志で責任を持って行動できることもわかっている。だが、ここは魔物が多く生息するヴィラージュだ。王都とは全然違う。私は仕事で各村や施設にも頻繁に行っている。だが、誰に聞いても二人の姿を見かけていないという」


 だろうね。


 そうでしょうね。


「偶然、すれ違いになったのかもしれないと思ったが、そうでないこともわかった」

「僕は仕事を探している。より良い条件の仕事にするため、各村や施設を回った。でも、どこにもレイディンとセレスティーナの姿はなかった。ヴィラージュにはいないことをアーネストに伝えた」


 リオンが補足した。


「私には言えないようなことをしているのではないかと気掛かりで仕方がない。二人で森へ行っているのか?」

 

 レイディンとセレスティーナは顔を見合わせ、頷き合った。


「そうです。森の様子、焼けた場所の再生度を調べたり、魔物が来ていないかを見に行っています」

「強い魔物はいませんの。いたとしても、弱い魔物ばかりですわ」

「川も見に行きました。エルフが魚を釣ってると聞いたので」

「人間でも実力者であれば釣りにいけそうですけれど、普通の釣り針では釣れにくいそうですわ」

「勉強になります」

「新しいことを日々勉強中ですわ」

「あまりうるさいことはいいたくない。だが、ミントに確認したところ、弁当を持って行っていない。昼食抜きは体に悪い。弁当が必要ならミントに頼んだ方がいいと思う」


 兄上らしい……。

 

 アーネスト様らしいですわね……。


「食事については現地調達しています」

「わざわざ持って行かなくても、パオンの木がありますの。私とレイディン様の昼食ぐらいであれば、森の恵みを不当に奪うことにはならないはずですわ」

「一旦こっちに戻ってからまた行くのは無駄なので、昼食はそういったもので済ませています」

「泉もありますの。飲み水にできるほど、綺麗ですわ」

「危ないことはしていません。そもそも、僕とセレスティーナは実力者です」

「何かあれば、即座に退却することを決めていますの。浮遊魔法もありますし、氷魔法での足止めもできますわ」

「正直、ヴィラージュがここまで安全な場所だとは思っていませんでした」

「近くには繁殖させているウサギしかいませんわ。魔ウサギといっても、凶悪な魔物ではありません。魔力があるウサギで、俊敏性が高く繁殖数が多いだけのように感じますも」

「通常種よりも少し強いだけです。害獣もいますが、時々です。脅威ではありません」

「森林火災の方がよほど脅威でしたわ」

「だよね」

「魔物さえいなければ安全だと思っていましたので、勉強になりました」

「僕の魔法で森林火災が起きたら困るので気をつけないといけないのはわかっています。でも、セレスティーナが氷魔法を使えるので大丈夫です」

「その通りですわ!」


 沈黙。


「そうか。二人を信じている。だが、安全を心掛けてほしい。それから、ヴィラージュに長居しているのも気になっている。父上と宰相に手紙を送っていないだろう? きっと心配している」

「わかりました。手紙を送ります」

「私も」

「私からは以上だ。リオンは何かあるか?」

「二人は隠し事をしている」


 冷静な口調でリオンは告げた。


「森へ行っているだけなら、隠す必要はない。それ以上の何かがあって、隠している。アーネストは優しい。でも、その優しさに甘えている証拠だ。正直に言った方がいい」


 兄上より鋭い。


 年下なのに優秀ですわ。


「森で稼げるようなことをしているのであれば、教えてほしくもある。いつまでもアーネストに甘えてばかりではいられないのは同じだ。一人前になるには、自立できるだけの稼ぎが必要だと思っている」


 アーネストは驚いた。


 まさかそんな話をリオンがするとは思ってもみなかった。


「リオンは私の子どもだ。いずれは大人になるだろうが、まだ先だ。気にしなくていい!」

「猫族の自立は早い。普通のことだ」

「良い仕事が見つからなかったのか?」

「仕事はある。アーネストが村や施設を作ったから、どこも人手不足だ。でも、貨幣が少ないせいで報酬が食料になる。今の僕はアーネストのおかげで食料には不自由しない。将来のためにも、お金をもらって貯めておきたい」


 賢いなあ。


 しっかりしていますわね。


「そうか……確かにそうだな」


 アーネストは領主だけに食料は手に入る。わざわざリオンが働いて得る必要はない。


 ならば、リオン個人の財産として蓄えられるもの、お金の方がいいというのは至極当然のことだった。


「もっとドワーフに貨幣を依頼しないと」

「ワインを売るしかありません」

「護衛たちをもっともっと往復させないとですわね」


 レイヴィンとセレスティーナをヴィラージュまで守っていた騎士や護衛たちは、ヴィラージュと他の町や村にワインを買いに行く輸送隊と化していた。


 そうすることで、自分たちに護衛たちがずっとついて回るのを防いでいるのもある。


「僕とセレスティーナが王都に戻ったら、ワインを買いに行くことができません。ドワーフとの取引ができません」

「貨幣が十分に供給されるまで、私はここにいますわ」

「僕もそのつもりです。母上の方に問題がなければ、急いで戻る必要はありません」

「二人に甘えていたのは私の方だった。リオンのことも考えなければいけない」


 アーネストは肩を落とした。


「兄弟で支え合っているだけです!」

「私もアーネスト様のお力になりたいですわ!」

「みんな、家族だ。話し合ったり、支え合ったりすればいい」


 リオン、よく言った!


 落としどころがバッチリですわね!


「そうだな」


 話し合いは終了。


 森の奥で魔物を倒していることを知られなくて済んだレイディンとセレスティーナはホッとした。



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