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婚約破棄のあとで辺境(魔境)行きになった王子  作者: 美雪
第四章

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35 待ち望んでいたもの



 レイディンは一人でジスを探したが、どこにもいなかった。


 エアリスの言う通り、ふらっとまたどこかに行ってしまったのではないかという気もしなくもない。


 魔境の奥地に行ったのかもしれない?


 レイディンはそう思った。


 とはいえ、さすがに一人で奥地へ行くのは危険。無謀なのもわかっていた。


 日帰りでなければ、兄に心配をかける。


 美味しい食事、家族の団らんのような時間を大切にしたい気持ちもあった。


「今日もダメか」


 焼けた森の跡でレイディンは呟いた。


 そろそろ帰ろうと思ったその時、


「何を探しているのかな?」


 最大級の警戒をして振り向くと、そこにはエルフがいた。


 銀髪に紫の瞳。セレスティーナに聞いた通りの特徴。


 ようやく会えたことへの嬉しさが込み上げるが、レイディンは冷静さと警戒心の維持に努めた。


「ジスを探していた」

「初めまして、レイディン」

「どうして僕の名前を?」

「少し調べればわかることだよ。領主の弟で王太子。有名人だ」


 領都内でレイディンのことを知らない者はいない。


 誰かに聞けば簡単にわかることであるのは事実。


 だが、レイディンは違和感を覚えた。


「誰に僕のことを聞いたのかな?」

「警戒するのはわかる。でも、お互い様だよね? 私を探していたようだけれど、なぜかな?」

「聞きたかった。森を焼いたのがジスかどうかをね」

「犯人探しか」


 ジスは笑みを浮かべた。


「実を言うと、私のせいだ」


 ジスはあっさり認めた。


「でも、理由がある。フォレスト・エルフはそう言っても聞く耳を持たない。レイディンは聞く気があるかな?」

「一応は」

「奥地から魔物が来てしまった。野放しにしておくと、犠牲者が出るかもしれない。こっそり倒してあげようと思ってね。強い魔物だけに強い魔法を使った。そのせいで飛び火してしまった」


 そして、あっという間に燃え広がった。


「不味いと思ったけれど、消せないから仕方がない。強い魔物が森を徘徊するよりもましだよ。森林火災は安全な方へ逃げるだけでいい。魔物のように執拗に追って来ることはない」

「不慮の事故だと?」

「そうだよ。でも、さすがにこれだけ燃え広がるとは思ってもみなかった。ずっと雨が降っていなかったからだろうね。普通はもっと早く鎮火する」


 レイディンはじっとジスを見つめた。


「信じるのも疑うのも自由だ。魔人の血を引く者同士、信じてくれると嬉しい」


 衝撃の一言。


 レイディンは目を見張った。


「なぜ、わかったかって? 簡単だ。レイディンが転移魔法を使ったからだよ。使えるのは魔人だけだ。あるいは、魔人の血を引く者か」


 レイディンがヴィラージュに来て転移魔法を使ったのは一度だけ。


 その一度を、ジスに見られていたことがわかった。


「レイディンを見てゾクゾクしたよ。魔人がいるってね。だから、調べた。簡単にわかって良かったよ。人間の王太子としてだけどね?」


 ジスは優雅に微笑んだ。


「誰が知っているのかな? レイディンの本当の姿を」

「僕は人間だ。魔人じゃない」


 レイディンは答えた。


「嘘だ。転移魔法を使った」

「人間だって使える。それだけのことだよね?」


 ジスは不思議そうに首を傾げた。


「人間が? 無理だよ」

「僕が使える。転移魔法を使える初めての人間だ。たぶんだけどね」


 ジスはじっとレイディンを見つめた。


「……なるほど。特別な人間だと言いたいわけか」

「王国一の大魔導士になれると言われている。それほどの才能がある」

「そこまで自信があるなら……大丈夫かもしれない」

「何が?」

「魔境の奥地に興味は?」


 ドクン。


 心臓の音が強く鳴るのをレイディンは感じた。


「私と一緒に奥地へ行かないか? 強い魔物を倒すために。難しいようであれば、転移魔法で逃げればいい」


 そうだね!


 レイディンの頭の中に響いたのは自身の声。


「無理にとは言わない。危険な場所だけに、実力者でなければ無理だ」

「ジスは奥地に行っているわけか」

「攻略中だ」


 攻略中!!!!!!!


 またもやレイディンの頭の中に声が響いた。


「私は相当な実力があると自負していた。けれど、魔物の数が予想以上に多くてね。範囲魔法で一掃しようとしてもキリがない。魔法を使える者がほしい」


 パーティー結成だ! 魔人ハーフ無双! 大チャンスだ!


 レイディンの頭の中に声が響いて止まらない。


「どこかに魔境の奥地に行けそうな実力者がいないかと思っていた。転移魔法を使えるレイディンは実力者だ。人間で最強の大魔導士かもしれない。私と組んで、魔境攻略をする気は?」


 パーティーの誘いキターーーーーーーー!!!


 レイディンの中でレイディンが絶叫した。


「普通の者は日帰りで行けない。何日でどの程度進めるかも状況次第だ。でも、転移魔法の使い手であれば日帰りができる。レイディンは他の者を連れて転移できるのかな?」


 レイディンは答えるかどうかを迷った。


「教えたくなければそれでもいい。自分だけでも十分すごいことだからね」


 ジスは優しく微笑んだ。


「いきなり奥地に行くのは不安かもしれない。試しに、日帰りで行ってみるのはどうかな?」

「ここからの距離はどのぐらい?」


 転移魔法は移動距離や転移するものによって魔力の消費度が違ってくる。


 遠い場所に行くほど、多くの人や物を運ぶほど、魔力を消耗してしまう魔法だった。


「はかったことがないからわからない。でも、奥地と呼ばれる場所にはかなりの幅がある。手前の方なら遠くはない。この森の奥に行くという感覚だね」

「なるほど」

「その気があるなら、明日の午前中に一人でここへ来てほしい。昼食も装備もいらない」

「装備も?」


 レイディンは驚いた。


「いかにも奥地に行くような装備で出かけると、一人で来ることができない。止められるだろう?」


 確かにとレイディンは思った。


「もちろん、装備なしで行くのは危険だ。私の装備を貸す。今着ているのも特別な魔法服だ」


 レイディンはジスの衣装をじっと見つめた。


 繊細な刺繍が入った上品な衣装。いかにも防具といったものはない。


 他につけているのはアクセサリーだけ。


「ずいぶんと軽装だね?」

「重い装備は嫌いだ。全て錬金術で作ってもらっている。強い魔物を倒すと素材が手に入る。それを売ったり交換したり錬金術者に提供して、優れた装備品を揃えている」


 わかる! わかるよ!


 前世の知識において、そういうゲームがあったとレイディンは思った。


「強い魔物を倒すのも楽しいけれど、より性能の高い貴重な装備品を集めるのも楽しい」


 そうだね! 楽しい!


「手に入れた装備品を全て身につけるわけにもいかない。どれとどれを組み合わせるかを考えるのも楽しい」


 そうそう! 大事だよ!


「レイディンもきっと楽しめる。でも、約束してほしい。私に会ったことや奥地に行くことは秘密にすること。あれこれ詮索されるし、何かあったら全部私のせいだと言われたくない。私が探しているのは観光者ではない。一緒に奥へ進みたい者、強い魔物を倒せる実力者だけだ」

「それはわかっているよ」

「まあ、明日については観光気分で問題ない。ヴィラージュにいる魔物はほぼ魔ウサギだ。実力者には退屈過ぎるだろう? 別の場所に行けば、間違いなく楽しめるよ」


 楽しみたい! 


 レイディンの心の声は強まるばかり。


 もっとジスと話したいレイディンだったが、


「そろそろ失礼するよ」


 ジスの横に大きな魔法陣が浮かび上がった。

 

 その中に現れたのは飛竜。


「召喚魔法を使えるのか」


 飛竜を見た興奮をレイディンは抑えきれずにいた。


「これは移動用のペットだ」


 ジスは跳躍すると飛竜の背に乗った。


 飛竜は巨大な翼をはためかせ、宙へ浮かび上がる。


「明日の午前中までによく考えるといい。来なければ、二度と誘わない」


 ジスが飛竜に乗って去っていくのを、レイディンはじっと見つめていた。


「信じられない……ほど、かっこいいーーー!!!」


 本物の飛竜だけでなく、その飛竜を乗りこなす者を見たことについても、レイディンは興奮するしかなかった。


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