24 突然の大火災
数日後の夜中だった。
アーネストはパチリと目を開けた。
用心しながらドアを開けると、リオンも部屋から顔をのぞかせた。
「嫌な感じがした。リオンは?」
「何か聞こえたような気がした」
キティの部屋を確認すると、寝相が悪いものの、ぐっすり寝ている。
コンコン。
窓の外にいたのは浮遊しているエアリス。
「どうした?」
「森が燃えている」
声には動揺が含まれていた。
「先に様子を見てくる」
「一緒に行こう。夜は危ない」
「待てない」
「すぐに着替える。ミントに留守番を頼む」
「歩道橋の端まで行っている」
「わかった」
アーネストとリオンが素早く着替えて部屋の外に出ると、三階からレイディンが来た。
その服装は魔導士のローブ。準備万端のようだった。
「魔力を感じました」
「森が燃えているらしい。ミントに留守番を頼む。セレスティーナの力が必要だ」
「そうですね」
セレスティーナも起きていたが、寝間儀にガウンを着ただけ。
「森林火災だ」
「魔導士のローブを被りますわ! 絶対に連れて行ってくださいませ!」
「ミントは?」
「寝てます!」
アーネストはミントを起こすと、森で火災が発生したために出かけることを伝えた。
「キティは寝ている。留守番を頼む」
「あ、はい……」
眠そうな表情でミントは頷いた。
アーネスト、リオン、レイディン、セレスティーナは浮遊魔法と加速魔法を駆使して歩道橋まで行き、森へ向かって走り始めた。
最も森に近い歩道橋の所まで行くと、エアリスがいた。
「遅い!」
「すまない。場所はどこだ?」
「エルフの町の方ではなかった。遠い」
エアリスはエルフの町の方で火災が起きていないかが心配だった。
「逆の方か?」
「そうだ。ウサギ族の村の方ではある」
「行こう」
「待て。行ってどうする?」
エアリスは確認しておかなければならないと思った。
「あれほど空が赤々としているということは、大火災だ。現地に向かうだけでは何もできない」
「正直、ここではどの程度なのかわかりにくい。まずは燃え広がるのを防ぐために木を切り倒そうとは思っている」
「木を切る? 風が通って余計に燃えやすくならないか?」
「防火帯といって、飛び火による延焼を防ぎやすくなる。セレスティーナは防火帯付近の木を凍らせてくれ。飛び火を抑えれば、鎮火が早くなる」
すでに燃えてしまっている部分は仕方がない。新しく燃え広がる部分を極力抑えるようにすることをアーネストは伝えた。
「わかった。火災になっている場所の木を切ればいいんだな?」
「そうだ。背丈が低い方がいい。遠くへ飛び火しない」
「僕も木や草を刈ります」
エアリスとレイディンが答えた。
「手分けして防火帯を作ろう」
アーネストはリオンを見つめた。
「ウサギ族の村へ行き、風向きを考えて逃げるよう伝令を頼む。防御魔法をかけるため、リオンだけは炎の中でも駆け抜けることができる。だが、他の者は無理だ。腕の中に抱えていても、魔法効果は一切ない。同行者は高温に耐えきれず、呼吸もできないということだ。絶対に注意してほしい」
「わかった」
「行こう!」
アーネストたちは火災現場へ向かった。
大火災が発生しているのはウサギ族の村の近く。
だが、ウサギ族の人々は浮遊魔法を使えない。
炎がかなり迫っていることを把握しにくいせいですぐに逃げず、持って行く荷物をまとめていた。
「リオン、ドワーフの洞窟の方にウサギ族を避難させてほしい。荷物より命を優先だ!」
「わかった」
加速魔法をかけられたリオンが走り去っていく。
「木を伐る! セレスティーナは氷魔法だ! ウサギ族の村を優先して守る!」
「時間稼ぎの壁を作りますわ!」
浮遊魔法がかかった四人は手分けして作業を開始した。
すでに大火災はかなりの面積に広がっているが、優秀な魔導士が揃っていた。
まずは次々と木を切り倒す。
さらに、延焼を防ぐために工夫する。
「風だ!」
アーネストが叫んだ。
「すでに燃えてしまった方へ炎を押し返せ!」
すでに燃えるものがない方へ炎を戻すことでも、延焼を防げる。
「わかった!」
「わかりました!」
アーネスト、エアリス、レイディンは炎を押し返すように魔法の風を作り出した。
防御魔法をかけていても熱いと思えてしまうほどの熱風を受けながら、三人は必死に炎とそれを煽る風を押し返す。
「ようやく私の出番ですわーーー!!!」
セレスティーナも飛び火した場所に次々と氷の塊を落とし、新たな火種が増えないようにした。
「アーネスト!」
リオンの声が聞こえた。
アーネストはすぐに浮遊魔法をかけて拾い上げた。
「伝えた。ウサギ族は全員ドワーフの洞窟の方へ逃げた」
「エアリス! レイディン! ドワーフの洞窟へ行く! 洞窟の方にも防火帯を作る!」
ウサギ族の村を守るための防火帯は完成している。
セレスティーナが周辺の木々を凍らせているため、飛び火も防ぎやすいはずだった。
「怪我人がいたら手当が必要だ。夜は魔物がいる。朝になってから、ヴィラージュに避難させる」
「わかった!」
「わかりました!」
「最後に氷を振らせますわーーーーーーーーー!!!!」
セレスティーナは数えきれないほどの氷を作って村やその周辺にばら撒いた。
無人状態でも勝手に氷が消火してくれる。
「さすがセレスティーナだ」
「ほんと、氷魔法だけはすごいよね」
「優秀な氷魔法の使い手だ」
褒められまくりのセレスティーナは得意顔。
「ヴィラージュに来てよかったですわ!」
アーネストたちは避難したウサギ族と合流するため、ドワーフの洞窟へ向かった。




