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112 今すべきこと



「毒竜を倒すのが最もいい。だが、多くの犠牲が出るだけで討伐できていない。ならば、ヴァルール王が考えたように、毒竜がまき散らす猛毒の脅威から世界を守った方がいい」


 王の作戦は一見すると完璧に実行されているようだったが、今回の調査で発見された地図により、重大な見落としがあることが判明した。


 それは浄化草の花畑を作っていないこと。


 王が指揮をしていた時は、大地の猛毒を浄化する効果がある毒消し草の花畑、大気中の毒素を浄化する浄化草の花畑の両方が作られていた。


 しかし、王の死後は毒竜の行動範囲を制限する毒消し草の花畑を増やすことが急務だとなり、浄化草の花畑が作られなくなった。


 そのせいで大気中の毒素がどんどん濃くなってしまい、毒竜がいる周辺では完全に魔人しか作業ができないほどの状態になってしまった。


「現状において、最も優先すべきは魔境の大気汚染を緩和させることだ」


 魔境の大気汚染を放置すれば、世界中の強い毒素を含んだ空気が広まってしまう。


 それを防ぐためには魔境内に生息する浄化草の数を増やし、魔境内で大気汚染を食い止めるようにしなければならない。


「今回のイベントの調査結果を元にした大会議が開かれる。ヴァルールと国交のある国は大気汚染を食い止める取り組みへの協力を要請されるだろう」

「なるほど」


 レイディンは理解した。


「毒竜を倒すのも魔人を探すのも難しいけれど、浄化草の花畑を作るのは簡単だ。魔物討伐や調査に行くパーティーに頼んで、あちこちで種を撒いてもらえばいいだけだしね?」

「その通りだ」


 この取り組みは単に魔境の空気を綺麗にしていく効果だけではなく、魔人以外の種族が奥地へ行きやすくなるという意味でも効果がある。


「飛竜団は湖がある場所に行った。水を浄化することができれば、飲料水を確保できる。魔境の奥地における新しい拠点にできる」

「第二のヴァルール?」

「それは今後次第だ。だが、あの湖の周囲に生えている木は高く売れる。最初の方は伐採して持ち帰るだけで儲かるだろう」

「えっ!」

 

 思わずリオンは叫んだ。


「あの辺の木、高いんだ?」

「奥地に行かないと生えていないものが多い。魔境の外に住んでいる者にとっては最高級の魔木地帯だ」


 最高級の魔木地帯を飛竜と爆弾弓で破壊してしまった……。


 リオンの耳がペタンと下がった。


「リオンのおかげで湖の側に浄化草の花畑を作る場所ができた。次に行った時は、もう数カ所追加してくれると助かる。魔法で焼くと延焼してしまい、最高級の魔木地帯が無駄に減ってしまう」

「役に立つことができて良かった」


 リオンの耳が元に戻った。


「耳のおかげで、リオンが何を考えているかがわかりやすい」


 レイディンが笑った。


 アーネストも同じ。


「そうだな。まあ、毒竜のことが気になるのはわかるが、その前にすべきことがある。浄化草の花畑作りやより奥へ行くための拠点作りに協力してくれると助かる」

「わかった! 手伝う!」


 レイディンは即答した。


「森林火災の時のように風魔法で魔木を伐って回収すればいいよね?」

「そのあとで残った部分を爆弾弓で吹き飛ばす」

「そうだな。ジスとエアリスにも声をかけよう」

「セレスティーナにも声をかけないと怒りそうだよ?」

「考えておく。今夜の話はここまでにしよう。さすがに疲れた。休みたい」

「兄上もいろいろ大変だったと思う。お疲れ様」

「そうだね。アーネスト、お疲れ様」

「ありがとう。ゆっくり休め」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 挨拶をすると、レイディンはリオンを連れて転移した。


 二人の部屋は近い。ドアを出て少し歩くだけだというのに、レイディンは迷うことなく転移魔法を使った。


「転移魔法の能力向上のためとはいえ、心配だ……」


 魔人の血を引くことは秘密だというのに、うっかり転移魔法を使ってしまうのではないか。


 フィアーのように歩く必要はないと言い出すのではないか。


 そんな気がして、アーネストはため息をついた。


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