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109 お疲れ様夕食会



 一週間に渡るイベントが終了した。


 ヴァルールの外で行われる調査イベントに多くの人々が参加した結果、魔物討伐イベントをはるかに上回る参加者が集まった。


 そのせいで魔物討伐よりも戦力と物資が豊富で、参加する人々による交流と結束もあり、充実したイベントだったと評価する者がほとんどだった。


 また、最も奥地の場所へ行った飛竜団に所属していた参加者は、飛竜が嫌がらない飛行ルートによって奥の方まで行けることを知った。


「空気中の毒素には注意が必要だが、防御魔法があればそれほど危険ではない」

「防御魔法なしに奥地へ行くこと自体ありえないしな」

「条件と準備をしっかりすれば、魔物討伐のパーティーで来れそうだ」

「今回のイベントは貴重な経験になった」


 さまざまな感想や調査結果が集まる中、飛竜団は危なげなくイベントを終了して解散したた。


 リオンとジスはフリューゲルたちに別れを告げ、アーネストの家に帰った。


「リオン!」

「ジス!」

「おかえりにゃ!」


 歩行ルートで参加したレイディン、セレスティーナ、キティ、ミント、エアリスと再会した。


「一週間ぶりですね!」

「無事でよかった」

「アーネストも調査官が乗る飛竜の操縦者として参加していた。ヴァルール宮でイベント関係者の話し合いがあるから、帰るのはかなり遅くなるって」


 アーネストは一緒に帰れないことをリオンに伝えていた。


「そうでしたか。今夜はみんなでお疲れ様夕食会をする予定だったのですが」

「たぶんだが、ニンウィーが店から戻るにはもう少しかかるだろう」

「ニンウィー以外にも同居人が増えた?」


 リオンの視線はダークエルフに向けられていた。


「アーネスト様の知り合いのクロムさんです!」


 クロムはアーネストが魔法の修練をしている時に知り合った者で、ミントとキティの護衛を担当するダークエルフパーティーのリーダーだった。


 他のダークエルフは今回の調査で得たものを運ぶためにすぐに帰るが、クロムはしばらくヴァルールに滞在する。


 宿代を節約するため、客間を使う約束をアーネスト様としていることが説明された。


「ジスだ。行商人をしている。どの国の者かな?」

「詳しいことは話せない。アーネストと約束している」

「出身地は教えてくれない。でも、職業柄あちこち行くらしいよ」


 レイディンが会話に加わった。


「だから、住所不定みたいなものらしい」

「ヴァルールにもよく来るのかな?」

「仕事次第だ」

「久しぶりに来たので、新しい商品を見て買いだめするそうです。他にも三人いたのですが、持ち物がいっぱいになったので先に帰ってしまいました」

「積もる話は夕食の時にすればいいですわ」

「そうしよう」


 ニンウィーが戻るまでリオンとジスは部屋に戻り、荷物整理や久しぶりの入浴を楽しむことにした。





「では、無事イベントが終了したことに乾杯!」

「乾杯!」

「お疲れ様!」


 食堂のテーブルの上にはミントが作ったものとヴァルールの店で購入したさまざまな食事が並んでいた。


「歩行ルートの方は帰り道にトラブルが起きやすいということで早めに引き返した」


 大勢の人々が参加したせいで遭遇した魔物はすぐに蹴散らされ、大きな問題が発生することもなく六日間の日程でヴァルールに戻っていたことがわかった。


「じゃあ、昨日で解散?」

「そうです。なんか、魔物討伐のイベントをよりあっさりこなした感じだという意見が多かったです」

「めちゃくちゃ人がいてさ。その分、魔物にも会いやすいけれど魔物討伐者も多くて」

「早い者勝ちということで、魔物を取り合い状態でしたわ」

「全然怖くありませんでした。食材の知識も増えましたし、調理技能も磨けました!」

「いろいろなお勉強とお手伝いをしたにゃ」

「珍しい植物をたくさん見つけた。魔境は宝の山だった」


 歩行ルートの方が魔物退治においても植物採集についても能力向上についても、充実した内容だったようだとリオンとジスは感じた。


「飛竜ルートはどうだった?」

「一気に奥の方まで飛んでいって、飛竜で歩き回った感じかな?」

「魔物との戦闘は思ったよりも少なかった」

「飛竜が地上で暴れている光景を堪能できた」

「珍しい光景ではあったかな」

「魔人の村はあった?」


 レイディンはそれが最も気になっていた。


「崩れた家が一つ見つかった」


 魔人は移動用の魔法を使うのが当たり前だけに、行動範囲が尋常ではないほどに広い。


 ヴァルール側の情報を頼りに捜索を開始したところ、初日にアーネストと調査官のグループが古い石小屋の残骸を発見した。


 貴重そうな遺物も発見され、崩れた家に魔人かエルフが住んでいたのではないかと推測されたことにより、飛竜団の士気が上がった。


 湖付近の捜索と魔物討伐が行われたが、最初に見つかった家の残骸以外には何も発見できなかった。


「収穫はほとんどなしって感じ?」

「大収穫だよ」


 発見された遺物がヴァルール王やスカイ・エルフの有名な学者のものであれば、ヴァルールや天空の島々にいるスカイ・エルフにとっては国宝級レベルのお宝。


 魔境の奥ほど危険な魔物が多く行くのが難しいというのが常識だが、飛竜を使った特別なルートであれば、魔物討伐者のパーティーでも奥地へ行けることもわかった。


「じゃあ、飛竜があれば今よりも簡単に奥へ行けるってこと?」

「条件が整えばそうだね」


 ジスが答えた。


「捜索して何もなかった場所は再生しにくいよう地表を軽くえぐった。そこに浄化草の種が撒かれた」


 魔境の奥へ行くほど空気中の毒素が多くなるため、呼吸を守るための防御魔法が必須になる。


 奥地ほど魔法植物の成長が早いため、調査官によって魔法で品種改良された浄化草の種が撒かれた。


 環境に適応できれば数日中に芽吹き、花畑ができる。


 従来種よりも大気中の毒素を浄化する力があるため、周辺の空気状況がよくなる。


 再訪もしやすくなるのではないかということだった。


「歩行ルートでも調査用の花の種を撒いていたよ。同じかな?」

「調査用の花なので、採集しないよう通達されていましたわ」

「黄色い花なら同じかもしれない」

「黄色い花の浄化草……」


 突然、レイディンの頭の中に前世の記憶が流れ始めた。


「あ……あああああ!!!!」

「レイディン様、どうしましたの?」


 突然叫んだレイディンにセレスティーナは怪訝な表情になった。


「え、あ、いや……きっとそれかなって思っただけだよ! 調査用の花というだけで、黄色い浄化草だってことは知らなかったからさ!」

「そうですわね。調査用の花としか通達されていませんでしたわ」


 セレスティーナも思い出しながら答えた。


「奥地の空気が浄化されれば、今よりも奥地に行きやすくなるはずですわ」

「魔境の恵みがより多く得られるようになりそうだ」


 エアリスは今回のイベントで多種多様な植物を採取することができた。


 奥地の環境が改善されて行き来しやすくなれば、珍しい貴重だった植物が市場に多く出回るようになるかもしれないと話した。


「ヴァルールにいる者が今よりも奥の方で活動できるようにするための調査イベントだったらしいよ」


 リオンはアーネストから聞いたことを伝えた。


「そっか。また同じイベントがあるなら、今度は飛竜で奥の方に行きたい」


 レイディンは魔境のより奥地の方へ行ってみたいと思った。


「私も飛竜で参加したいですわ!」

「また採集に行きたい」

「楽しかったにゃ」


 セレスティーナ、エアリス、キティも今回のイベントをかなり気に入っていた。


「俺もできれば一緒に行ってみたいなあ」


 店番のために行けなかったニンウィーも次は参加してみたいと思った。


「そうですね。またみんなで一緒に行けたらいいですね」


 土産話と美味しい食事。


 お疲れ様夕食会は大いに盛り上がった。


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