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106 捜索のあと



 リオンの指揮する中隊は木々をなぎ倒し、草を踏みつけながら前進した。


 魔物に襲われた場合は協力し合って対応、何かあれば報告することになっていたが、暴れ回る飛竜に立ち向かうような魔獣はいない。


 かなりの虫がいたが、防御魔法で被害を防ぎ、風魔法や弱めの火魔法、魔法具で対応した。


「虫は邪魔だが、周辺の空気に含まれる毒素が深刻ではない証でもある」


 ジスは魔境の奥地を目指していた。


 だからこそ、魔境の生態系についてもなんとなくわかっていた。


「体が小さい生き物の方が弱く、環境の影響を受けやすい。毒素が強いと耐えきれずに死んでしまうか移動してしまうかだ」

「虫がいるのは比較的安全な場所ってことか」

「私は学者ではないが、恐らくはそうだと思う」

「だったら」


 リオンは思いついた。


「ここを拠点にできるよう整備したらどうかな? 野営地よりも先に拠点があった方が、再訪する際にいいよね?」

「再訪するのであればそうかもしれないね」

「危険な魔物が奥にいるのは間違いない。その偵察をするためにも、魔境の中に拠点があるのは悪くない。魔境の外から見てヴァルールは魔境の中を探る拠点だ。それと同じだ」

「わかる。ただ、ここに誰かが残り続けるのは難しいとは思う」


 現在は日中だけに虫は活動しておらず、できるだけ暗い場所でじっとしている。


 しかし、夜になれば大量の虫が活動を始める。


 魔法で虫を処分しないといけないことをジスは話した。


「日中なら平気だよね?」

「まあ、絶対ではないが。飛竜で来ることはできそうかな」

「このイベントに参加した飛竜団の者が、パーティーを組んでまた来ようと思うかもしれない。その時に利用できるようにしておけば、だんだんと開けてくる可能性もある。ヴァルールだって最初は小さな場所だったはずだ。ここにも小さな場所を作ってみればいい」

「中隊長はリオンだ。指示を出すなら任せるよ」

「わかった。すでに歩き回った場所には何もない。捜索済みの目印として大地をえぐるから、全員空中へ避難して! 高度を保つように!」


 リオンが通達すると、中隊にいる者は顔を見合わせた。


「えぐる?」

「エルフが魔法を使うのか?」

「まあ、通達だから指示通りにしよう。下にいたら危険なのは間違いない」

「一緒にえぐられるぞ!」


 リオンの指示は次々と伝達され、中隊の全員が飛竜に飛ぶよう指示をした。


「ジス、あとで魔力補充をよろしく」

「どの程度の威力になるのか楽しみだ」


 リオンは爆弾弓を取り出すと構えた。


 できるだけ多くの魔力を込めて矢を作り、地上へ向けて放つ。


 ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


 大爆風。


 その結果、飛竜によって木や草が踏み倒された場所は、魔法爆弾によってえぐられたような場所に変化した。


「意外と浅いね?」


 ジスはもっと威力を出せそうだと思っていた。


「深くえぐる必要はないから角度をつけた」

「それもそうか」


 やがて、集合の合図である信号弾が上がった。


 捜索は終了。


 第一部隊は捜索を終え、野営する拠点に戻ることになった。





「飛竜団の全員は集まるように」


 拠点に集まった飛竜団は点呼を行い、湖周辺を捜索した部隊と、拠点の周囲の捜索及び魔物討伐をした部隊で報告をし合った。


 拠点の周囲には多くの魔物がいたために、とにかく倒しまくった。


 そうすることで拠点の安全確保を行い、手に入れた素材については参加者で持ち帰ることになった。


 また、湖周辺の捜索では、調査官の小隊が小さな家の残骸を見つけ、そこで貴重な遺物を発見したことが伝えられた。


「詳しく調査をしなければならないが、ヴァルール王あるいはスカイ・エルフの有名な学者の遺物かもしれないものが発見された」


 もしそうであれば、ヴァルールにとっては国宝の発見。天空の島々にとっては極めて貴重な学術資料になり、金銭では換算できないほどの価値がある。


「遺物は原則的に調査対象物だ。自己判断で参加報酬にすることはできない。必ず調査官の判断を仰ぎ、個人の参加報酬にしてもいいという許可を得るように」

「遺物か」

「かなりのお宝になりそうだね」


 初日で極めて価値の高い遺物が発見されたこと、拠点周辺の魔物を大量に倒したこともあって、飛竜団の士気が上がった。


「明日は第二部隊が湖の周辺の捜索を行う。第一部隊は拠点周辺の捜索と魔物討伐だ。第二部隊は再編成をするため、実力テストを受けるように」


 あとから到着した第二部隊は再編成のための実力テストを受けることになり、第一部部隊はその間に夕食をすることになった。


「アーネスト、夕食はどうするの?」


 リオンは実力テストを行っているアーネストのところへ行った。


「実力テストが終わったら食べる」

「あとで一緒にどうかな? 時間がかかりそう?」

「私は指揮官や調査官たちと一緒に食べる。気にしなくていい」

「わかった」


 リオンは中隊に割り当てられた場所に向かった。


 そこでは各自が野営の準備をしており、テントを張る者が多くいた。


「なんだかテントの見本会みたいだ」


 テントは多種多様。サイズ、形、色など多くの違いがあった。


「取りあえず、ジスとフリューゲルを探さないと……」


 リオンは二人の姿を探したが、どこにもいなかった。


「ジスかフリューゲルを知らない? テントをどこに設置したのかわからなくて探しているんだけど、見つからなくて」


 リオンは近くにいた竜族に声をかけた。


「上の方を見たか?」

「上?」

「上だ」


 竜族が空を見上げたため、リオンも同じようにした。


「……なるほど」


 テントは空中にもあった。


 浮いた状態で設置されている。


「下にないなら上だと思うぞ?」


 この世界にはまだまだ知らないことがある。


 それをリオンは実感した。


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