100 猫の小隊長
リオンは第三小隊の点呼を開始。
偶然にも、フリューゲルやその知り合いと一緒であることが判明した。
「リオンが小隊長か。嬉しい」
「心強い」
「そうだな!」
フリューゲルやその知り合いの竜族も、リオンと一緒できることに喜んだ。
「全員いるから出発しよう。誘導員を見失わないようにしないといけない」
「飛竜を呼べ!」
「小隊長が乗った飛竜が先頭だ!」
「猫族の小隊長なら、目印としてわかりやすい」
「そう言う意味でも適任だな」
飛竜での移動が開始された。
「飛竜での移動は速い。点呼が遅いと置いて行かれそうだ」
「西というだけでは曖昧だ。後発隊は先発隊のあとを追うしかない」
飛竜の背の上で、リオンとジスは話し合っていた。
「何気に第三小隊は強いかも?」
リオンとジス以外は竜族ばかり。
リオン以外の全員が飛竜を所持しており、ドラクーンから参加している竜騎士の割合も多かった。
「本当に僕が隊長でいいのかな?」
「その方がいい。竜族だけの考えで進められると、私やリオンの考えが通りにくくなってしまう」
ジスはリオンが小隊長で良かったと思っていた。
「飛竜団は飛竜が必須なのに、竜族の割合は思ったよりも少ないね」
「竜族でなくても飛竜を操縦できる者はいる。竜族でも魔法討伐者に雇われただけの者もいるはずだよ」
「移動要員ってことか」
「パーティーを組んでいる場合は役割分担をする。数日間の野営が必須だから、荷物係や炊事係がいることだってある」
「パーティーの組み方もいろいろだね」
話している間にも飛竜は大空を飛んでいく。
後発隊を意識しているのか、先行している小隊の速度はゆっくり。
時間差で出発しても結局は追いついてしまい、固まって飛行するだけだった。
「ぶつからないようにしないと」
「大丈夫だ。飛竜が勝手に調整する」
「この位置だと、誘導者が全く見えないね?」
リオンたちは第二小隊を追い越さないように飛んでいた。
「飛竜団は全体の中で一番移動が速い。誘導員はヴァルール大公かもしれないよね?」
「毒竜対策を担当している魔人かもしれない」
リオンとジスは見つめ合った。
「気になる。ジスは?」
「もちろん気になる。誘導員を見にいきたい」
「誘導員の見える位置まで行って、本当に誘導員に従っている進路なのかを確認しようか」
「上昇して前を追い越す」
リオンとジスを乗せた飛竜は一旦上昇、飛竜を加速させて第二小隊を追い越した。
「第二小隊と第一小隊との距離が結構ある」
「接触防止だとしても、スペースを空け過ぎだ。小隊長が慎重派か、操縦者ではないのかもしれない」
リオンは振り返った。
「フリューゲルたちもついてきている。加速魔法がない者は距離があいてしまっている」
「小隊長を見失わないようにするのが基本だ。何も言わなくても、全力で追いかけてくれるよ」
リオンとジスを乗せた飛竜は第二小隊の前方にいた第一小隊にも追いついた。
「位置取りがバラバラだ」
「適当に飛んでいる証拠だよ」
完全に統制の取れた飛竜の部隊というわけではなく、イベントの参加者が飛竜に乗って移動しているだけというのがわかる状態だった。
「所詮、魔物討伐者や飛行関連の業者だ。竜騎士団とは違う」
「飛行形態だけで判断すると、僕たちの小隊は竜騎士団みたいだった」
「それは私も思った。竜騎士たちは何も言わなくても隊列を組む。他の者もそれに合わせて位置取りをしていた。飛行移動についてはかなり良いメンバーだよ」
そして。
「あれが誘導員か」
黒い飛竜が一頭だけで先頭を飛んでいた。
調査員らしき赤い服も見える。
「もっと近寄る」
「危なくない?」
「私たちだけなら問題ない。魔法の鳥を飛ばせば、意思疎通も可能だ」
ジスは飛竜に指示を出し、誘導員の飛竜に近づいた。
「三人乗っている」
白銀の鎧姿の者が飛竜の操縦をしており、赤いローブの者と青いローブの者が同乗していた。
ローブ姿の二人はフードを被っているせいで顔は見えない。
魔法をかけているらしく、豪風をものともせず立ち乗りしていた。
「僕の目はいい。飛行中でも」
「私の目もいい。魔法もあるし、飛行中かどうかは関係ない」
「アーネストだよね?」
「アーネストだった」
飛竜を操縦している白銀の鎧姿の人物はアーネストだった。