8.2頭目の一角獣グランパレード
俺はサイレンスアローや涼花が見守る中で、ガチャを回すことにした。
さて、どんなものが出てくるだろうか。
最初の11連ガチャで出てきたのは……
コモン スズムシ10匹
アンコモン 猟犬
コモン 犬小屋チケット
コモン エッチな本
コモン 発酵した肥やし
コモン 麦わら帽子
アンコモン 牝サラブレッド
アンコモン クロスボウ&矢12本
コモン 小麦5キログラム
コモン ハンマー
さて、最後の1枚は……
レア イチゴ苗付きビニールハウス(50m×9m)
「い、イチゴ付きのビニールハウス来た!」
そう言いながら画面を指さすと、サイレンスアローや涼花も驚いた様子でスマホの画面を眺めていた。
『マジだよ! チート過ぎるでしょ……怜の能力って!』
「うん! ダンジョンの中にビニールハウスを設置できるんでしょ……凄すぎるよ!!」
まあ、まだゴブリンのような外敵の襲来があるから、こういう貴重なアイテムを使うことは難しいが、これにミツバチコロニーを組み合わせるだけで、一年中イチゴが食べられるという訳だ。
さて、次のガチャでは一体……何が出現するだろうか。
次のガチャを回してみると……
コモン 果物ナイフ
アンコモン 全自動洗濯機 容量5.5キログラム
コモン 犬小屋チケット
コモン 非常食用の乾パン1キログラム
アンコモン 農場・牧場用の柵チケット
レア 一角獣(人間換算12歳)召喚チケット
コモン 家畜用のエサ
コモン スコップ
コモン 枝切り用のこぎり
おお、一角獣チケットがさりげなく混じっているぞ。他にも使い勝手の良さそうなアイテムが多いし、今回は当たりだな。
さて、最後の1枚は何だろう。
レア 小規模湯泉出現チケット
もしかしてこれは。
高鳴る期待を胸に、説明欄を慎重に読み進めていくと、どうやらコイツは使った場所から永続的に温泉を出現させるチケットのようだ。
思わずガッツポーズをすると、サイレンスアローや涼花も喜びを全身で表現していた。
「よかった~ これでもう冷たい湖の水で水浴びしなくて済む!」
『チートだよ! 本当に怜の能力はチートだ!』
何だか照れくさいものだと思いながら笑っていたが、一角獣を召喚できるチケットを引いたことを思い出した。
「なあ、サイレンスアロー?」
『どうしたの?』
「この一角獣のチケットも使った方がいいのか?」
そう質問すると、サイレンスアローは当然のように頷いた。
『うん。この敵だらけのダンジョンに3人だけ……というのはあまりに少なすぎるからね。すぐに戦力化した方がいいと思うよ』
俺はすぐにスマートフォンを操作すると、一角獣のチケットを使った。
すると、先ほど引いたアンコモンの牝サラブレッドのチケットも一緒に光りを放ち、メッセージが表示された。
【チケットの連動召喚を許可しますか?】
一緒に出たいと言っているのなら構わないか。そう思いながらイエスを選択すると、2枚のチケットが光を放って消え、ミッション1つが達成となっていた。
ミッション 連動召喚をしよう 達成!
報酬はガチャコイン1枚なので回収しないで貯めておくことにすると、藪がガサガサと揺れて、牝サラブレッドと仔一角獣の親子が姿を見せた。
『こ、こんなところに人間!?』
仔ユニコーンは驚いた様子で辺りを見回していたが、サイレンスアローが近づくと少しだけ警戒を緩めたようだ。
『……炎のユニコーンか。いろいろと苦労したでしょう』
『うん。俺のせいで母さんまで、森の精霊様に追い出されちゃったよ』
その子供ユニコーンとサイレンスアローは、早くも打ち解け合った様子だ。
お互いに年齢も同じくらいで、更にユニコーン同士だったから親しみを感じたのだろう。一方で母馬はと言えば、俺と涼花の様子を伺っているようだ。
サイレンスアローは、その現れた一角獣に質問した。
『どこか行くアテはあるのかい?』
『それが……ないんだよな』
『なら、このまきばで暮らさないかい? 日本人の彼らなら炎の一角獣を差別したりはしないよ』
俺はその通りと思いながら頷いた。
だいたい、日本には炎の神様を祭っている神社もたくさんあるし、炎属性のユニコーンを差別する理由というのがイマイチよくわからない。
その現れた一角獣も嬉しそうに頷いた。
『い、いいの!? 俺のような一角獣を受け入れてくれる人がいるなんて……驚いたな』
「どんな属性を使おうが一角獣は一角獣だ。行く場所がないのならうちでゆっくりしていくといいだろう」
そう伝えるとスマートフォンが光った。どうやら、彼を登録できるということだろう。
スマートフォンで撮影すると、彼の名前が表示された。
「名前は……グランパレード。直訳すると壮大な行列か」
一角獣にピッタリな名前だと思う。俺は頷くとデフォルトの名前のまま彼の名前として登録した。
一角獣グランパレード
固有特殊能力:
ファイアホーン A ★★★★★★★
炎属性の魔法を行使できるだけでなく、勝利への執念にプラス補正をかける。
また、ユニコーンだけありヒーリング効果も得られるが、状態異常を回復するほどの癒やし技術はなく、どちらかと言えばバトル向きの能力を持っている。
唯一の欠点として、森の精霊にとても嫌われる。
近距離戦 B ★★★★★★
魔法戦 B ★★★★★
飛び道具戦 E
マジックシールド B ★★★★★
防御力 C ★★★★
作戦・技量 B ★★★★★
索敵能力 B ★★★★★★
行動速度 B ★★★★★
勝利への執念 A ★★★★★★★
経験 C ★★
主人公との友好度 D ★
人間換算で12歳。牡/男
体重:370キログラム 肩までの高さ:155センチメートル
身体の特徴:黒みがかったこげ茶色をしている。顔だけでなく体にも白斑がないという、ある意味で珍しいタイプの一角獣。
使用可能スキル:ヒーリング、350度監視、嗅覚1000倍、ナイトビジョン
好きなモノ:晴れ、牧場を走り回ること、母馬
嫌いなモノ:雨、カマキリ
一言:
サイレンスアローの同級生のようなウマ。
アローに比べれば見劣る能力だが、ユニコーンになれるウマは、だいたい100頭のうち3頭いれば御の字という状況なので、かなり貴重な存在だ。
ちなみに、カマキリが苦手な理由は、草むらで寝転んでいる時に、顔に張り付かれてしばらく居座られていたからである。
目元まで来られたので、かなり大きな化け物に見えたとか……